蝋燭
世界は私たちのためにあると
信じて疑わなかった子がいる
私のために泣いて笑って怒ってくれる子だった
私は彼女ほど世界を信じられなかったけど
彼女のために死んでも構わないと思っていた
私たちに用意された世界には
私たちの居場所はないけれど
二人でいれば
お互いさえいれば
世界は全て私たちのものだった
彼女を思い出す度に
命の蝋燭に灯がともる
その間だけ世界が明るく見えるから
何度も何度も蝋燭に灯をともしてしまう
死神が私の蝋燭を指差して嗤っている
長い蝋燭に灯を移せたら見逃してやるといわれた
いらないのに
これ以上何もいらないのに
ほらほら上手く出来るだろう?と唆す
彼女の顔で
彼女の声で
私たちきっと上手くやれるわ、と言う
とけて崩れてかろうじて
蝋燭の体を保ったものを
私たちだと呼んではいけないの?
彼女がわらう
薄桃の端切れから白い骨がのぞく
軋む音が私の手首を捕らえる
私たちきっと上手くやれるわ、と催促される
嫌々をする私の手首をぎちぎちと握りしめ
長い蝋燭に灯を移される
あ
煙
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