マリナの逆襲3

 一通りゴブリンをフルボッコにすると、辺りはとても静かになった。そしてマリナとルドルフは目の前にある遺跡を見る。


「こんなところに遺跡があったんですね」

「ああ。普段寄らないからすっかり忘れてた」

「アリシアさんはこの中でしょうか?」


 手元のコンパスを見れば針は遺跡を指し示していた。


「とりあえず入っちゃいましょうか?」

「大丈夫か?遺跡の中がどうなってるか分からねえぞ?トラップだってあるかもしれない」

「大丈夫ですよ!私は3つのダンジョンを伊達にソロで攻略してませんから!」


 いったいその自信はどこからくるのだろうか?ルドルフは呆れ半分で彼女を見るが、マリナは気にせず遺跡の中へと入っていった。


 遺跡の中を進む途中、ゴブリンたちと遭遇するもマリナの魔法で一撃で沈めた。中には天井に突き刺さったまま動けなくなったものもいる。


 淡々とゴブリンを倒していくマリナにルドルフは「さすがだな」と呟いた。


「俺がいなくてもなんとかなったんじゃないか?」

「そんなの分からないじゃないですか。私が負傷した時のことも考えないとですし、私1人でアリシアさんを連れて出るのも限界があるんですよ?」


 強いと言っても1人の少女。不覚をとるかもしれない。安全策をとってルドルフを連れていくことを選んだのだ。ルドルフは「そうか」と呟いて周囲を警戒する。


 しばらく奥へと進むと「何事だ!?」と声をあげて現れる人影が出た。その人物は酒瓶を持っていた。


「な!?キサマ!?なぜここに!?」


 少し体の大きいゴブリンが驚愕の表情を浮かべてマリナを見る。聞き覚えのある声にマリナはアリシアを連れ去ったフードの人物の正体だと看破した。


「我が名はマリナ!おまえが連れ去ったアリシアさんを連れ帰りにこの遺跡にやってきた!アリシアさんは今どこだ!」


 突然口上を述べ出し、ルドルフはポカンとするが、どうやら目の前にいるゴブリンは酔っていたらしい。ノリよく返した。


「俺の名はスローズ!偉大なるゴブリンマジシャンであるクールフ様の一の子分!あの娘の居場所はどこだと聞かれて素直に答えるものか!いざ尋常に勝負勝負!」


 酔ってるスローズは手元の酒瓶を突き出した。しかしそれは酒瓶であってロッドではない。魔法が全然発動しないのを見てスローズは「あれ?」と手元を見る。


「酒瓶じゃないか」


 スローズは慌ててロッドを引っ張り出そうと部屋に戻ろうとする。しかしそんなスローズの肩をがっしりとマリナは掴んだ。


「ヒィッ!?動けんッ!?」

「スローズさぁん?あなたが連れ去った女の子はどこにいますかぁ?」


 マリナはスローズの顔を鷲掴みにして尋ねる。スローズはジタバタとするが逃れることができず、むしろ圧迫感が強まったように感じた。命の危機を感じたスローズは咄嗟に「一番奥の部屋です!」と白状する。


「ありがとうございます」


 そう言ってからマリナは一気に手に力を入れた。


 メリッ。


 そんな嫌な音が鳴ると、スローズはぶらんと腕を下げたまま動かなくなってしまった。


「これで無力化しました!」


 ルドルフは魔法を使わずにスローズを無力化して、床に投げ捨てたマリナを見て、今目の前で起きたことが理解できず呆然とする。


「え?おまえ、何したの?」

「え?無力化しただけですが?」


 何を聞いてるのか分からないとでも言うようなマリナにルドルフは引き続き呆然とするもこれ以上考えていても埒があかないと思い、このまま先に進むことを選んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る