マリナの逆襲2

 アリシアの捜索を始めたマリナとルドルフだが、しかしそれは難航していた。夜になり、辺りは暗くなってしまったし、進んでも進んでもアリシアに遭遇することはなく、むしろ近衛騎士や他の守備師団の隊員たちとすれ違うばかりだった。そして2人は城壁にたどり着いてしまった。


「ゴブリンども、街から抜け出したってことか?どうやって…?」


 学園都市オルファンドは高い壁に囲まれた城塞都市である。侵入することも抜け出すこともそう簡単ではないはずだった。しかしコンパスの示す方角は壁の向こう。オルファンドから脱出したと考えるのが妥当だった。


「考えても仕方ありません!さっさと行きますよ」

「いや、どうやって?今は街の出入りは厳しいはずだぞ?」


 不審者の街への侵入を許してしまったのだ。侵入者を脱出させないようにどこの出入口も封鎖されているはずだった。


「壁をすり抜ければいいんですよ!」


 マリナはルドルフの腕を掴んでそのまま壁へと向かった。混乱するルドルフは彼女に引かれるまま、壁へと激突…、したかと思えばそのまますり抜けてしまった。


 ルドルフは「ええ…?」と困惑の声をあげる。


「おまえ、こんな高度な魔法使えたのかよ…」

「私、天才ですから。先生にはあまり使うなと言われましたが…。今は緊急事態です!アリシアさん救出のためにもさっさと行きますよ!」


 マリナはロッドで明かりを灯しながらコンパスの指し示す方角へと向かう。東の草原をずんずんと歩くこと3時間ほど。何やらキーキーと騒ぐ声が聞こえた。


 ルドルフはその声に聞き覚えがあった。


「ゴブリンの鳴き声だな…」


 明かりを灯しても近くは見えても遠くまでは見えないため、ゴブリンの姿まで確かめることはできなかった。あまり近づきすぎるとこちらに気づくかもしれない。さてどうしようかと悩んだところでマリナがロッドを前に突き出した。


「ファイアー!!!」


 マリナは開き直って草原を焼いた。


 焼いたのだ!


 松明たいまついらず!


 周辺はとっても明るくなった!


「キーッ!キーッ!」

「うるさいですね。たかだか火事くらいで」


 燃やした張本人は素知らぬ顔でゴブリンの群れを見る。そしてなんの脈絡もなく燃やし始めた張本人をルドルフは口を開けて見た。


「おまえ…。潜入するなら気づかれないようにしなきゃダメなんだぞ…?」

「私がそんな細々としたことに向いてると思いますか!」

「もしアリシアを巻き込んだらどうすんだよ」

「あ…」


 そこまで考えてなかったマリナである!


 慌てて周囲を見るとアリシアの姿はなく、ホッとした。代わりに目に映るのは30匹くらいいるゴブリンだった。何やら酒を飲んでる様子だ。


 酔っ払いのゴブリンの群れを見て、これはいいカモだと考えたマリナはニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。


「アリシアさんを返してもらいますよお?」


 そしてゴブリンたちに詰め寄った……。

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