マリナの訓練の様子

 ライラン王国の学園都市オルファンドにある王立エルゼコビナ魔法学園では専属の衛兵たちが学園の警備にあたっていた。その名もオルファンド守備師団。エルゼコビナ魔法学園に侵入者を1匹たりとも入れないために戦う精鋭たちである。


 そんな守備師団の隊員たちは、巡回任務のほかに警備にほころびが出ないよう訓練も行い、警備力をあげている。


 7月の頭、魔術師でもあるマリナはヨゼフ中隊の魔術師たちと合同で魔法の訓練に当たっていた。


「サンダー!ファイアー!ブリザード!」


 マリナがそう唱えると、電撃と炎と氷が一斉に現れてまとへと突っ込む。的は見事に消滅した。


「魔法の実力一級品なのよねえ」


 ヨゼフ中隊の魔術師部隊を率いるエレン・ミニート大尉がため息混じりに呟いた。


 それを褒め言葉と受け取ったマリナは胸を張ってニコニコと笑う。


「これで協調性と臨機応変な対応力の両方が備わってれば文句なしなんだけど…。両方ないのよね…」

「あれ?私褒められてない?」


 マリナはとても潜在能力の高い魔術師である。しかしこの者、他の者と歩調を合わせて魔法を使うのが苦手なのである!とりあえず放てばいいやのノリで魔法をぶっ放し、敵味方問わず巻き込んでしまう、オルファンド守備師団きっての問題児なのである!さらに実戦経験の少なさゆえ、想定外なことが起こるとまともに動けなくなるのである!それで幾度あられのない姿になってしまったことか!?


 ここが戦場ならすでに死んでいることだろう。

 

 そんな彼女であるから、基本的にルドルフとツーマンセルで後方警備にあたることが多かった。


「あなたにはさっさと協調性と柔軟性を身につけてもらって主力に転じて欲しいんだけど…。まあ、まだ15だし、仕方ないかぁ…」

「うぅ…。褒められてなかった…」


 遠回しにディスられていることにマリナはショックを受けてしゃがみ込んだ。地面にのの字を書き始める。


「あなたはまだ若いんだから頑張りなさい」

「はーい」


 マリナは立ち上がり、再び魔法を放つ。魔法は使えば使うほど精度が上がる。マリナは魔力鍛錬に勤しんだ。


 そんな彼女の様子を、実はアリシアが校舎の屋上から見ていた。いろんな魔法を放ってみせるマリナの様子を見て「すごい」と感動していた。


 アリシアは訓練が終わったところを見計らって守衛所へと訪れた。


「マリナさんの訓練見ました!凄かったです!」


 アリシアに褒められたマリナは顔をニマーと崩して「ホントぉ?」と聞き返す。とても嬉しそうである。


「はい!魔法の実践の授業でマリナさんほど魔法をうまく操ってる方はいらっしゃいませんでした。歳の近い人たちの中でも私が見た中ではマリナさんが一番です」


 マリナが一番。その言葉に気をよくしないわけがなかった。マリナの鼻がどんどん伸びる。


「マリナさんってどうやって魔法を身につけたんですか?」

「私には師匠がいて、その人から魔法を色々教えてもらいました。まあ、私は天才なので、先生から教わったこと、すべて吸収してみせたんですけどね!」


 さりげなく自慢を混ぜるマリナ。若干調子に乗っていた。しかしそんなことなど気にしないアリシアは「さすがです!」と拍手をする。マリナは余計に気を良くした。


「そうだ!もしよければ次の休養日、一緒にお出かけしませんか?」

「お出かけ?いいですよ!」


 アリシアの提案に間髪入れずに了承するマリナ。2人は友達らしく遊びに出かける予定を入れるのだった。

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