第52話 修羅場その1

リディアは数日ぶりにクレストの街へ戻ってきた。セバスのことも気になったが、変わらない街の賑やかさと懐かしい雰囲気に心が弾んだ。今日は、変身したルークと一緒に街を散策し、新しい街で提供できる食事のヒントを探る計画だった。ルークのスキルを活用し、特殊な空間から街にいるスライムへ転送し、ロゼッタに新しいメニューの作成を依頼する予定だ。




 ルークは人間の女性の姿に変身しており、大会で変身した白と黒の袴姿である剣道着でリディアと手を繋いで歩く姿はまるで親しい友人同士のようだった。




「主、今日はどこに行くの?」リディアを少し見上げて尋ねた。




「まずは市場に行ってみよう。様々な食事のできるお店があるからさ」




「主。わかった~」




 二人は市場の通りを歩き、屋台や露店を見て回った。香ばしい食べ物の匂いや色とりどりの商品に囲まれ、ルークは興味津々だった。




「これ、美味しそう」ルークが指さしたのは、焼きたてのパンだった。リディアはそれを買ってルークに手渡した。




「試してみて。きっと気に入るよ」とリディアが言うと、ルークは一口かじって満足そうに微笑んだ。




「主、本当に美味しい」ルークは素直な感想を述べた。




 リディアは笑顔を浮かべ、「良かった、ルーク。さっそく、街にいるスライムからロゼッタへそのパンを渡すように依頼してくれ」




「了解した~」




 市場の活気ある雰囲気を楽しみながら、次々と出される食べ物を味わい、半分は街にいるスライムからロゼッタへ渡すように指示した。




 次に二人は公園に向かい、そこでしばらく休憩することにした。公園のベンチに座りながら、持ってきた食べ物を広げてリディアはルークと一緒に楽しんだ。




「主、次はどこに行く?」




「次は商店街を歩いてみよう。そこにも面白いお店がたくさんあるはずだよ」




 リディアとルークは手を繋いで商店街を歩き、道端の屋台で様々な料理を試した。リディアはその一つ一つの味を吟味し、自らの街で提供できるかどうかを考えた。




「この串焼きも美味しいね。ロゼッタにこの味も再現してもらいたいな」




「主、確かに美味しい。さっそくスライムたちからロゼッタへ渡すように依頼する」




 そんなやり取りをしながら、二人はクレストの街を楽しみ尽くした。その間も、リディアは常に新しいメニューのアイデアを考え続けていた。




 ふと、リディアとルークがある屋台に立ち寄ったとき、店主が微笑みながら言った。「おや、恋人かい?うらやましいねぇ~」




 リディアは照れ笑いを浮かべ、「いや、友人なんです。ただ一緒に食事を楽しんでいるだけで。」




 ルークも微笑んで、「主、面白いこと言われたね」




 リディアは頷き、「うん、でもいい雰囲気だよね。さて、この店の名物も試してみようか。」




 店主は焼きたての焼き鳥を差し出し、「特製のタレで仕上げた自慢の一品だよ。ぜひお試しあれ。」




 リディアとルークはその焼き鳥を受け取り、再び食事を楽しんだ。リディアは半分を食べ、残りをルークに渡した。「これもスライムたちに送って、ロゼッタに伝えてくれ」




 ルークは頷き、「わかった~」






 ▼エレンとフェン視点




 フェンは街を歩いていると、偶然リディアと謎の女性の姿を見つけた。リディアがフェンの知らない女性と親しく手を繋いで歩く姿に、フェンは一瞬驚き、慌てて宿屋にいるエレンのもとに駆け出した。




「エレン様~~~~っ!大変にゃ~~~っ!! リディアが知らない女性と一緒にいるにゃ!」フェンは興奮気味に報告した。




 エレンは冷静な表情を保ちながらも、内心では驚きと興味が混じった感情が渦巻いていた。「そう。どこで見たの?」




「市場の通りにゃ。一緒に食べ歩きしてたにゃ。でも、リディアが知らない女性と親しくしてるとこを初めて見たにゃ」




「ソフィアさんじゃないの?」エレンは気を落ち着かせるように聞いた。




「違うにゃ。胸がすごかったにゃ!!」




 エレンは小悪魔的な笑みを浮かべた。「面白いわね。証拠を集めてから話を聞きましょう。」




 二人はこっそりと市場に向かい、リディアを見つけた。確かに、見たこともない変わった服装をした女性と一緒に歩いている。市場は人で賑わっており、香ばしい食べ物の匂いや色とりどりの商品が並んでいた。はぐれないようにか、リディアはその女性と親しげに手を繋ぎながら、屋台や露店を見て回っていた。




「これ、美味しそう」とその女性が指をさし、焼きたてのパンを購入した。リディアはそれを買ってその女性に手渡していた。




 リディアがその女性に何か話しかけると、女性が購入したパンを一口かじって満足そうに微笑んでいる様子を伺うことができた。




 続いて、リディアとその謎の女性は公園のベンチに座りながら、購入した食べ物を楽しそうに食べ始めた。




 エレンとフェンはその様子を影から見守っていた。エレンは内心で呟いた。「リディアさんがあんなに親しげに…」




 続いて、リディアたちは商店街へ向かい、またも食べ物を買いながら歩いていた。




「串焼き?また買っているにゃ!!」




「確かに、ずっと食べてばかりですね…」




 エレンとフェンはその後もリディアたちを追いかけ、親しげな様子を観察し続けた。エレンの嫉妬心はますます募っていった。




 最終的にエレンは冷静な表情を保ちながらも、次の行動を計画していた。




「フェン、今日はここまでにしましょう。証拠は十分集まったわ。明日、リディアに話を聞くわよ。」




「わかったにゃ、エレン様。リディアに何があったのか、きちんと聞くにゃ」




 エレンはフェンの言葉に頷き、リディアとの対話に向けて次の一手を計画していた。「リディアさん、あなたは一体何を考えているの…」エレンは心の中で呟きながら、リディアとの対話に向けて決意を新たにした。

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