第40話
第40話 攫われたセバス
エレンとフェンとセバスは、リディアがソフィアを森へ返しに行くために別れた後、クレストで何もしないわけにはいかず、ゴブリン退治や薬草探しなどの依頼をこなしていた。
いくつかの依頼を達成した後、三人は新たにゴブリン退治の依頼を受け、森の奥へと向かった。森は薄暗く、静寂が不気味な雰囲気を漂わせていた。セバスは警戒心を強め、周囲の気配を探りながら進んでいた。
「このあたりにゴブリンの巣があるはずです。気をつけて進みましょう。」セバスは声を潜めて言った。エレンとフェンもそれに頷き、緊張感を共有した。
森の奥へ進むにつれて、彼らはゴブリンの気配を感じ始めた。小さな足音と低い声が聞こえてくる。セバスは手を上げて、二人に立ち止まるよう合図を送った。
「静かに…ここからが本番です。」セバスは慎重に前進し、木々の間からゴブリンの姿を確認した。ゴブリンたちは集団で集まり、何やら話し合っている様子だった。
「フェン、あの高台から弓で援護を頼みます。エレン様、私と一緒に突入しましょう。」セバスは素早く指示を出し、三人はそれぞれの役割を果たすために動き出した。
フェンが弓を構え、高台からゴブリンたちを狙った。エレンとセバスは静かに接近し、奇襲をかける準備を整えた。しかし、突然、背後から何者かの気配を感じた。
「セバス、後ろです!」エレンが叫んだ瞬間、セバスは振り向いたが、時すでに遅く、謎の影が彼を襲った。鋭い痛みが背中に走り、意識が遠のいていく。
「セバスーーーーーーーーっ!」エレンの叫びが森にこだまする。
セバスは背後からの奇襲に成す術もなく倒れ込んだ。その瞬間、暗い影が彼を捕らえ、疾風のごとく姿を消した。
エレンとフェンは驚愕し、一瞬立ちすくむが、すぐに追いかけようとした。しかし、ゴブリンたちがその隙を狙って襲いかかってきた。
「フェン!まずはゴブリンを片付けるわよ!」エレンは冷静さを取り戻し、素早く指示を出した。
フェンは頷き、弓を引き絞って矢を放つ。「行くにゃ!早く殲滅させて追いかけるにゃ!」
二人は息を合わせ、ゴブリンたちを撃退していった。フェンの矢が次々とゴブリンを貫き、エレンの魔法が敵を倒していった。しかし、戦闘が終わる頃には、セバスの姿はすでに見えなくなっていた。
「セバスが…連れ去られたにゃ…」フェンは息を切らしながら呟いた。
エレンは歯を食いしばり、拳を握りしめた。「絶対に見つけます…待っててください、セバス!」
リディアはクレストに戻り、門番と話をしていた。街の入り口には、普段と変わらぬ日常が広がっていたが、リディアの心にはまだ先の戦いの記憶が残っていた。
その時、門の向こうから急いで駆けてくる二つの影が見えた。エレンとフェンだった。彼らの顔には緊張と焦りが浮かんでいた。リディアは一瞬何が起こったのか理解できなかったが、すぐにその異常な様子に気づいた。
「リディア様!」エレンが息を切らしながら叫んだ。「大変です!セバスが…セバスがさらわれました!」
その言葉にリディアの表情が険しくなった。「何があったんだ、詳しく話してくれ。」
フェンはすぐに説明を始めた。「ゴブリン退治の依頼を受けて森に行ったにゃ。ゴブリンたちと戦っている最中に、突然謎の影が現れてセバスを襲い、さらっていったにゃ…。」
リディアは冷静さを保ちながらも、内心の焦りを隠せなかった。「その影は何か手がかりを残していなかったか?」
エレンは首を振り、「何も…ただの影のようでした。でも、セバスを放っておくわけにはいきません。すぐに追いかけたいのですが…。」
リディアは決断を下した。「わかった。まずは落ち着いて、具体的な対策を練ろう。クレストの中で情報を集め、セバスを取り戻す手段を考えよう。」
三人は急いで門を通り抜け、街の中心へ向かった。彼らの心には、不安と決意が交錯していた。リディアは仲間を救うため、全力を尽くす覚悟を決めた。
街の中心部に到着すると、リディアたちは信頼のおける情報屋であるフィアナの元を訪れた。フィアナは街で有名な情報屋であり、秘密を知り尽くしているという噂があった。彼女は中年の女性で、神秘的な雰囲気を漂わせ、長い銀髪と鋭い目が特徴的だった。彼女の情報網は広く、あらゆる場所から情報を集めていた。
フィアナはリディアたちを迎え入れ、話を聞いた。「一体何を知りたい?」
エレンは事情を説明し、「うちのパーティーメンバーであるセバスがさらわれました。何か手がかりになるものはありませんか?」と尋ねた。
フィアナは頷き、「そうかね…セバスがさらわれたかね…。ひょっとしたら迷宮の祠かもしれないね。セバスの力が目的かもしれない。その祠には、何かを復活させることができると噂がある。」と説明した。
リディアは深く考え込み、「なるほど、セバスが持つ力が利用される可能性があるということか…」と呟いた。
フィアナは続けて、「祠の深部には強力な封印があり、それを解除するためには特定の力を持つ者が必要とされているんだ。セバスがその鍵として選ばれたのかもしれないね。古い伝説では、この祠には強力な悪魔や魔物が封印されていると伝えられているんだ。」と言った。
リディアは決意を新たにし、「それが本当ならセバスを救い出し、その計画を阻止しなければならない。」と力強く宣言した。
「この祠には数多くの罠と幻覚が仕掛けられている。これがその構造を示したとされる古い地図だよ。参考にまでにな」とフィアナは説明した。
「ありがとう。これが情報料です。」リディアがフィアナへ金貨を渡す。
「あぁ。最後にクレスタの西側に住んでいる老人であるエイルさんへ一度話を聞いた方が良い」
フィアナの情報を元にしたリディアたちは、さらに確かな情報を求めてエイルさんを訪ねた。
教えられた青い屋根の家にたどり着き、ドアをノックした。
「何かようかね?」エイルが尋ねると、リディアは事情を説明し、「迷宮の祠について教えて欲しい」と尋ねた。
老人は知恵と経験を持つ者であり、今回の件で重要な存在だった。彼は落ち着いた表情でリディアたちを迎えた。
エイルは深く頷き、「迷宮の祠については聞いたことがある。この場所は非常に危険だが、古代からの試練の場とされている。ここにある魔法のアミュレットを持って行きなさい。これが道を示してくれるだろう」と語り、古びたアミュレットをリディアに手渡した。
リディアはそのアミュレットを握りしめ、「ありがとうございます、エイルさん。このアミュレットで必ずセバスを救い出し、巨大な力の復活は阻止します」と決意を新たにした。
エイルはさらに続けた。「この迷宮には数多くの試練が待ち受けているが、勇気と知恵を持って挑めば必ず乗り越えられる。皆さんの無事を祈っている。」
リディア、エレン、フェンの三人は、エイルからの助言と魔法のアミュレットを手に、セバスを救うための冒険へと出発した。彼らはセバスが誘拐されてから一刻も早く救出しなければならないと、急いで準備を整えた。
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