第7話 魔法弾

第7話 魔法弾




 魔力を操り、指先で様々なキャラクターを形作りながら遊ぶ中、土と水の魔法を組み合わせて、新たな武器である魔法の弾丸を創造していた。




 これはまさに泥団子の進化形。


 目指せ、近代兵器による戦力増強!




 この斬新な発想に心奪われ、試行錯誤の日々を経て、遂に目論見が実現した瞬間、心の中で歓喜の声が響いた。




「よし、できた!」と独り言を漏らしながら、目の前に現れた成果を見つめる。「これは、単なる魔法の一形態ではない。私の魂と知識、無数の失敗と成功から紡ぎ出された、唯一無二の創造物だ。この魔法弾は、自分自身の存在と同じく、この世界にただ一つのもの。私の全てをこの小さな一発に込めた。これは、自分自身を超えるための、私の挑戦の証なのだ! ふははは!闇の深淵に輝く最強の力、俺の手中にあり!いや、俺自身が最強の存在へと進化しつつあるのだ!」




 一人で小さくガッツポーズをして、心の中で歓喜を噛みしめた。




 その時、ノエルの冷静な声が頭の中に響いた。『リディア、自己満足もいいですが、次のステップを考えるのも忘れないでくださいね』




「ノエル、わかってるよ。でも、ちょっとくらいこの達成感を味わわせてくれよ」とリディアは笑いながら答えた。




『そうですね、それも一理あります』とノエルが軽くつっこみを入れる。




 リディアは深く息を吸い込み、再び前向きな気持ちを取り戻した。「よし、次はこの魔法弾をどうやってさらに強化するか考えよう」と新たな挑戦への意欲を燃やし、次のステップへと進んでいった。




 森の深く進んでいると、ひときわ開けた空地で、突如、巨大な鹿の形をした魔物、ビックディアを発見した。


 先に遭遇したブルーベアといい、今回のビックディアといい、この森の住人たちは一体どれほどの強さなのだろうか?と思わず疑問に思う。




 しかし、ビックディアはまだ私の存在に気付いていない。


 これは先手を打つ絶好のチャンスだ。




 そっと、新たに開発した魔法の弾丸を取り出し、深呼吸を一つ。


 ビックディアに気付かれないよう静かに、しかし確実に狙いを定め、「魔法弾!!」一斉射撃を開始する。




 風魔法を帯びた魔法弾がビックディアに向かって飛び、その厚い皮膚を突き刺し傷を負わせる。


 しかし、巨大な魔物は、まるでそれを感じていないかのように、怒りをあらわにして振り返る。




 その瞬間、ビックディアは角から魔法の風を放ち、反撃してきた。




「やばい!」と心の中で叫びながら、攻撃範囲が想像以上に広いことを実感。


 素早く足元を土魔法で固めて左へ跳び、攻撃を受けそうな右腕は身体強化魔法でさらに強化する。


 慌てて手を振り、簡易な土の盾を急ピッチで形成する。


 だが、「パリーン!」という鋭い破裂音と共に、盾は敵の攻撃に耐え切れずに粉々に砕け散った。


 この急造の盾では、敵の力には到底及ばなかった。




「ぐざっ!」と痛みが走る。


 痛みに堪えながらも、回復する前に目の前の敵を倒さなければ・・・。


 魔法が途切れれば命も尽きる。




 命をかけた戦いはいつも心臓に悪い。


 だが、RPGで培った経験が生きる時。


 血沸く!血沸く!




 ビックディアが再び風魔法を放つが、リディアはそれを巧みに回避し、反撃の魔法弾を放つ。


 アイテムボックスから温存していた魔法弾を取り出し、


「魔法弾、連射!」と力強く呼びかける。




 8発の弾丸を放ち、5発がビックディアに直撃。


 ビックディアの目が一瞬驚愕に見開かれ、すぐにその光を失い、力なく地面に崩れ落ちた。




「ふぅ、やった・・・」


 と息をつきながら、地面に座り込む。




『▼経験値が一定量に達しました。レベルアップします。』


『▼各種基本能力が向上しました。』




 きたきた。


 どのくらいUPしただろう。


「ステータス」


 主人公のステータス

 レベル: 19(UP)

 名前:リディア

 種族: エルフ(48歳)

 性別: 男

 魔法:

 火魔法 レベル1

 水魔法 レベル5 

 風魔法 レベル9 

 土魔法 レベル6 

 光魔法 レベル9

 スキル:

 ユニークスキル「AI」 

 ユニークスキル「アイテムボックス」 

 錬金 初級

 魔力操作 初級

 身体強化 初級

 麻痺無効

 称号:

 世界を超えたもの(言語理解、隠蔽、鑑定)




 ねぇ。レベルアップがおかしいって…。


 レベルに見合った魔物じゃないって…。


 ゴブリンやらスライムってこの世界にいないのかい…。




 アイテムボックス


 魔石大2個

 熊肉49kg、熊の毛皮、爪10本

 鹿肉65Kg、鹿の毛皮、鹿の角2本




 ▼一方、皇女側


 森の更なる深みに踏み込んだ時、三人の前に予期せぬ脅威が現れた。巨大なブラックスパイダーが、まるで夜の闇を体現するかのように、突如として彼らの行く手を阻んだ。周囲は密生した木々によって薄暗く、不気味な沈黙が支配する。時折、葉を揺らす風の音だけが、緊張を一層高める。この森の奥深くは、日の光さえも届かず、どこからともなく漂う湿った土の匂いと、未知の生物から発せられる微かな音が、不安を煽る。




 突然の出現にも動じないセバスは、騎士としての責務を果たすため、一歩前に踏み出した。周囲の木々はまるで見守るように三人を囲み、彼らの運命を静かに見つめる。




「エレン様、フェン、私がこの怪物の注意を引きつけます。『挑発』!」セバスの深く響く声が、静寂を破って森全体に響き渡る。彼の盾が神秘的に輝き、その光は一瞬、周囲の闇を切り裂いた。その瞬間、ブラックスパイダーの獰猛な視線が、セバスに釘付けになった。




 フェンがその様子を確認し、エレンに向かって言った。「エレン様、セバスがスパイダーを引きつけてくれている。今がチャンスにゃ!」その声は、かすかに震える葉のささやきに紛れながらも、エレンに届く。




 エレンは集中し、火魔法の呪文を唱え始める。


「炎よ・・・・私の敵を焼き尽くせ!」


 彼女の手から放たれた火球がブラックスパイダーに直撃する。


 スパイダーは苦痛の声を上げながらも、セバスにのみ攻撃を集中させようとする。




 戦闘はさらに緊迫の度を増していった。ブラックスパイダーの次なる攻撃が、"シューッ!"という猛烈な勢いでセバスに襲い掛かる。彼は"ドンッ!"と重い音を立てながら盾を構え、蜘蛛の脚の一撃を受け止めた。その衝撃は想像を絶するもので、セバスは"グッ…"と唸りながら足を地面に深く突き、身体を支える。盾は彼の強靭な意志に支えられながらも、その圧力にひびを見せ始める。




 この瞬間、フェンがチャンスと見定めた。"ニャッ!"と短く叫びながら、彼女は軽やかに飛び出し、"シャーッ!"と鋭い爪をブラックスパイダーに向けて繰り出す。その攻撃は、スパイダーの側面に深く刻まれ、"ザクッ!"という音と共に、暗黒の血が飛び散る。




 セバスは、フェンの攻撃が決まると同時に、"ハッ…"と一息つきながら、もう一度盾を固く構え直す。彼の堅実な守りが、フェンに攻撃の機会を提供していた。その間も、スパイダーの攻撃は止まず、"シュッ、シュッ!"と彼に向けて続くが、セバスは毎回、足を地に堅くとどめながら、それを盾でこらえ続ける。




 "セバス、もう少しにゃ!" フェンが戦闘の合間に叫ぶ。セバスは"うむ、任せろ!" と応じ、盾での防御を続けながらフェンの攻撃を支援する。




 戦闘の熱が冷めやらぬ中、エレンは仲間たちの姿に目を留める。彼らの身体に刻まれた傷に、彼女の心は痛みで引き絞られた。


「待って、今、二人ともヒールするから!」と叫び、彼女は急いでヒーリングの呪文を詠唱する。


「癒しの光よ、・・・・我が仲間に安らぎを・・・」という彼女の声が森に響き渡る中、癒しの光がフェンとセバスの傷に降り注ぐ。


 "シュゥゥゥ…"という音と共に、光がフェンとセバスの傷に優しく降り注ぎ、その光は傷を癒し、二人の痛みを和らげる。




 この回復により、三人の士気は再び高まり、ブラックスパイダーへの反撃がより一層強くなる。


 セバスは再度「挑発」スキルを使ってスパイダーの注意を引き、フェンは新たな勢いで攻撃を


 仕掛ける。


 エレンも、魔法で支援を続け、彼らの連携はブラックスパイダーを圧倒する。




 エレンが再度、魔法で攻撃を仕掛け、「これで終わりよ!」と力強く言い放つ。その言葉と共に、炎の嵐がスパイダーを包み込み、ついに倒すことに成功する。




 戦闘が終わり、セバスが「大丈夫でしょうか? エレン様。」と確認する。




 エレンが感謝の言葉を返す。「セバス、あなたのおかげよ。あなたがいなければ、私たちはここには立っていなかったわ。」




 フェンも頷きながら付け加える。


「セバスの『挑発』スキルがなければ、もっと苦戦していたにゃ。ありがとうにゃ、セバス。」

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