第6話 熊肉
第6話 熊肉
ノエルが解体したアイテムボックスの中身は、熊肉50kg、熊の毛皮、魔石大1個、爪10本であった。
豊富な収穫に満足しながらも、まず熊肉1kgを取り出すことにした。
まあ、AIのノエルがどうやって解体したかは、ムシムシ!!
ブルーベアを倒した後のご褒美を使って、リディアは早速、野性味溢れるサバイバル料理に挑むことにした。
さてさて、
お肉!お肉!
しかし、ブルーベアの熊肉を前にして一瞬ためらった。
生肉をそのまま食べるわけにはいかない。
食中毒や寄生虫のリスクは避けなければならないからだ。
そこで、彼は思いつく。調理器具はないが、自然が提供するもので何とかするしかない。
「フライパンがなければ、自然のもので代用しよう。」
と心に決め、彼は周囲を見渡した。
木の棒を見つけ、それを使って古き良きアニメのような串刺し肉を作ることに。
塩やバターなどの調味料は手に入らないが、それでも諦めない。
自然が提供するハーブや野草を探し、その風味で肉を引き立てることにした。
次に、火を起こすための準備に取り掛かる。
乾燥した木材を集め、火魔法で火種を作り出す。
リディアは転生前に趣味であったキャンプで身につけた知識をフル活用。
乾燥した草を使って、初心者でも扱えるような火起こしの基本を披露し、やがて小さな火種が立派な焚火へと成長した。
リディアは、火にかざすように肉を丁寧に串に刺し、焼き始める。
火のそばでじっくりと時間をかけ、肉を回しながら均等に焼いていく。
外はカリッとして、中はジューシーに仕上がるように心掛けた。
火の距離と熱の加減を見ながら、彼は真剣そのもの。このサバイバル料理に全てをかける。
焼き上がった肉の香りは、彼の鼻をくすぐり、食欲をそそる。
素朴ながらも、野性味溢れるこの料理に、彼は心から満足した。
サバイバル料理は単なる食事以上のもの。
それはこの新しい世界での生存と適応、そして自然との一体感を彼に教えてくれた。
「これぞ、真のサバイバル料理だ。」
リディアは、自分の作った料理を前にして、そうつぶやいた。
彼の顔には、達成感と満足感が溢れていた。
焼きたての肉を手に持ちながら、ふと思う。
「ああ、この肉に白米があれば・・・」と。
彼の心は、白米のふっくらとした姿を思い描き、その欠如に一抹の寂しさを覚えた。
そして、もう一つ。
肉に塩味が足りない。
ハーブ混ぜても足りない・・・。
現代日本で味わっていた、舌を駆け巡る濃厚な味わいとはかけ離れていた。
しかし、魔法や戦闘で消耗したスタミナを回復させるため、リディアは肉をひたすら食べ続けた。
肉片が次々と彼の口の中に消えていく様子は、まるでマジックショー。
ひょっとして、スキルを手に入れた??
「マスター。そのようなスキルは手に入れていません」
ノエルからツッコミが入る。
食べる量が増えるにつれ、リディアは自分でも驚くほどの食欲に戸惑い始める。
これだけ食べても、お腹が膨れないなんて、どういうことだ?
フードファイターもびっくりだ!
1kgの肉普通に食べちゃうんですけど…。
転生前には、200gが精一杯だったんですけど…。
「イケメンな俺が、こんなにも・・・」と思いながらも、彼はまだこの異世界での自分の顔を見たことがない。
肉を食べる手を止め、ふと川を探してみるかと考える。
しかし、目の前に、まだ食べる肉が残っている。
まあ、体作りが大切ね!!
夕食後、リディアは残った肉をアイテムボックスへとしまった後、熊の毛皮で作った仮設の寝床を広げ、一日の疲れを和らげる時間を取ることにした。
眠りにつく前に、彼は明日の計画を練り始める。
その計画には、この毛皮を用いてさらに快適な装備を作り上げること、そして手に入れた魔石と爪をどう活用するかが含まれていた。
魔石は冒険者ギルドで売却し、爪は武器や装備の強化に使うのがテンプレだ。
無くさずにアイテムボックスへしまっておこう。
「今日はなかなかの成果だった。だが、生き抜くためには常に進化し続けなければならない。」
リディアが自身に言い聞かせると、ふと外の空を見上げた。そこには、二つの月が静かに輝いているのが見えた。一つは純白で小さく、もう一つはオレンジがかった大きな月だった。この光景を目の当たりにして、リディアは改めて異世界に来たことを実感した。「二つの月か…。これがこの世界の夜空なんだな。星も多いし異世界に来たんだなって、改めて実感するよ。」と、彼はつぶやきながら、未知の世界での生活に胸を躍らせた。その後、リディアは心地よい疲労感を感じながら、二つの月を見上げるのを最後に、ゆっくりと眠りについた。
朝、リディアは新たな日の始まりと共に活動を開始した。「さぁ、今日はどんな発見があるだろうか」と彼は心の中でつぶやき、ノエルとの一日の計画を共有する。夜が明け、森は「チリン、チリン」と鳥のさえずりで生き生きとしていた。リディアは魔力を指先に集中させ、小さな光の玉を形作り、それを回転させてみる。かつてハンター×〇ンターのジンが披露した技を模倣してみることに。
「これでいいのかな?」と自分に問いかけながら、リディアは魔力を操り続けた。「まあ、少しでも上達しているなら、それでいいか」と、少し安心したように独り言をもらした。
彼は魔力を操りながら森を歩き、「カサカサ」と落ち葉を踏みしめる音を立てながら、周囲の植物や鉱石を鑑定していった。すると突然、「おおっと!これは…」と目を輝かせ、ヒーリングハーブとアルケミストハーブを発見する。
「やった!これで少しは役に立てるかな」とリディアは嬉しそうに独り言を言った。しかし、すぐに真剣な表情に変わり、ふと考え込んだ。
「このハーブ、肉料理に応用できるだろうか?」リディアは手にしたヒーリングハーブとアルケミストハーブを見つめながら、自問自答を始める。「ただの癒しだけじゃなくて、もっと実用的な使い方があるはずだ。例えば、肉料理に使ったらどうなるんだろう?」
彼は続けて考える。「もしこのハーブが肉料理に合うなら、食事からも回復効果が得られるかもしれない。そうなれば、戦闘後の疲労回復に役立つし、何より美味しく食べられるはずだ」
「うーん、でもどんな組み合わせがいいんだろう?強い風味があるハーブなら、肉の臭みを消すのにも役立つかもしれない。調理法も試してみなきゃな…」リディアは真剣な眼差しでハーブを見つめ続ける。
「もっと多くのことを学ばなければ、この世界で生き抜くのは難しいだろうな…」ふと不安が頭をよぎるが、彼は決意を新たにする。「でも、このハーブの応用を見つければ、きっと役に立てるはずだ。まずは実験だな」
リディアは心の中でそう決め、ハーブの新たな使い道を探るために動き出した。
「ノエル、これはどうやって採取するのがベストだろう?」リディアが尋ねると、ノエルからの応答が彼の心に届いた。
「マスター、ハーブは根元から優しく…」ノエルが丁寧に採取方法を説明する。リディアはその指示に従い、「シュッシュッ」と土魔法を使って周囲の土を柔らかくし、ハーブを慎重に掘り起こす。「これでいいかな?」と、彼は確認しながら、採取したハーブをアイテムボックスにしまった。
日が暮れてきたサインに従い、リディアはその日の拠点へと戻ることを決めた。彼の足取りは軽やかで、心は次なる冒険に向けてわくわくしていた。そして、夜の静けさの中で、彼はふと空を見上げた。星空が広がり、その中には二つの月が浮かんでいる。
夜空の美しさに心を奪われたリディアは、深夜まで星を眺めながら、異世界での生活に思いを馳せた。二つの月の下、彼は自身の運命と、この新たな世界での役割について深く考え込む。その美しい光景は彼にとって、新たな希望と未知への好奇心をかき立てるものだった。「こんなにも美しい世界で、自分にできることは何だろう?」とリディアは自問自答する。彼の内には、この世界で何か意味のあることを成し遂げたいという強い願望が湧いていた。
「ノエル、君はこの世界のことをどう思う?」リディアが静かに尋ねると、ノエルからの答えが彼の心に響く。「マスター、この世界は無限の可能性を秘めています。」
そんなノエルの言葉を胸に、リディアは新たな決意を固めた。「ならば、この世界で自分の力を試してみよう。どんな困難も乗り越えて、この美しい星空の下で生き抜いてみせる。RPG好きをなめるなよ!!」と、彼は静かに誓う。
朝が来て、リディアは活動を再開するために仮設の寝床から起き上がった。星空を見上げた夜のことを思い出しながら、彼は今日も新たな発見と冒険に向けて一歩踏み出した。「さぁ、今日も一日、頑張ってみよう。」と、リディアは前向きな気持ちで森の中を歩き始める。彼の周りでは、「チリン、チリン」と再び鳥たちが朝の歌を奏で始めていた。
主人公のステータス
レベル: 10
名前:リディア
種族: エルフ(48歳)
性別: 男
魔法:
火魔法 レベル1
水魔法 レベル5
風魔法 レベル9
土魔法 レベル6
光魔法 レベル9
スキル:
ユニークスキル「AI」
ユニークスキル「アイテムボックス」
錬金 初級
魔力操作 初級
身体強化 初級
麻痺無効
称号:
世界を超えたもの(言語理解、隠蔽、鑑定)
アイテムボックス
熊肉49kg、熊の毛皮、魔石大1個、爪10本
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