第18話

彰吾は、手にしている白い封筒を見つめていた。

昨日、猫神様から託されたものだ。


遊びに出掛けた記憶のある駅が最寄りのようだった。

まず行ってみよう、と家を出た。


ーここだ。

表札で名前を確認し、躊躇なくインターフォンを押す。


「…はい。」


「薬利彰吾と申します。猫神様の件で伺いました。」


「何の事でしょうか。お間違いではないでしょうか。」


棚橋健一たなはしけんいちさんの御宅ではないでしょうか。19時頃にまた伺います。」


「…失礼します」



間違いはないはずだ。

本人が帰ってくるまで、待つしかない。

駅前に戻り、喫茶店で本を取り出した。



19時前になり、彰吾は棚橋家に向かう事にした。

先程から前を歩いている男性が、同じルートを辿っている。

もしかしたらと思っていると、その男性が棚橋家に入ろうとしていた。

彰吾は、慌てて声を掛けた。


「あぁ、確かに猫が見えました。″明日、訪れし者に心を打ち明けよ″と頭に直接、言葉が伝わってきました。

何だったのかと思っていましたが、何の根拠もない話で訪ねて来られても迷惑です。」


「いえ、でも明日、猫神様のお導きがあるはずです。」


「お断りします。お帰りください。」


彰吾は帰るしかなかった。



帰宅し父親に相談してみた。

すると父親は、ひどく慌てた。


「その方は、猫神様の事を一切、ない事にしているのだね。

もしかしたらまずい事になるかもしれない。

話してくれてありがとう。

明日、一緒に行ってみよう。」


父親は、強張った顔つきで部屋を後にした。

あんな顔つきの父親は、珍しいと思った。

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