第13話

今日は十六夜だ。

月について少し勉強したので、今では父親に言われなくてもうまくアルバイトを休む事が出来るようになっていた。


やがて篝火に火が灯された。

草木の香りが強くなり、夜が深まっていくのを感じた。

そろそろかと彰吾は裏庭に向かう。

裏庭には既に父親の姿があった。


「うん、そろそろだね。良いタイミングだ。」

父親はそう満足そうに言い、手を合わせ庭を見渡した。


しばらくすると篝火が大きく揺れた。

灯りの脚元にモヤが立ち込め、猫神様が現れるのが見えて来た。

白い封筒をくわえ、ゆっくりと優雅にこちらに近付いて来る。

そして、彰吾の近くに腰を落とし、前脚にしっぽを絡めた。


彰吾は慣れた手つきで封筒を受け取った。




封筒の中にあった住所は、電車で20分ほど先にある場所だった。


だいぶ慣れたな、良い感じだ。

見届け人は、楽しみだ。

彰吾は、ベッドに横になり、目を閉じた。

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