第12話
体を清め、早めに彰吾は家を出た。
訪問先で装束に着替えさせていただく為だ。
約束通り、すぐに支度部屋に通された。
そして着替えを済ませた彰吾は応接室に向かう。
昨日の二人と男性の姿があった。
「今日はよろしくお願いします。」
「薬利彰吾と申します。見届け人です。ご主人様もいらして良かったです。」
「休みをとりました。何をすればよろしいのでしょうか。」
「猫神様からのお導きがありますので、特にする事はありません。ただひとつ。この事は他言無用です。」
辺りが暗くなったが、猫神様の気配はなく、
彰吾は、焦り気味に応接室と庭に視線を巡らしていた。
どのくらい時間が経っただろう。
今日は来ないのかと思った矢先、猫神様を感じた。
庭の鉢植えの横だ。
ゆっくりと近付いて来る。
庭先から板の間へと音もなく飛び乗る。そして腰を落とし、しっぽを前脚に絡めた。
猫神様の隣には、小さなモヤが立ちあがる。
そして女の子の姿が浮かび上がった。
「彩海っ」「彩海!!」「彩海っ!」
悲鳴にも似た声。
「だめです。声を落としてください。」
「これ以上近付かないでください。」
落ち着かせようと、彰吾は、冷静に注意した。
彩海ちゃんは、笑顔の可愛らしい子だった。
手を振っている。
ー〈海に呼ばれただけ〉ー
彰吾の頭に、直接言葉が入ってきた。
そして猫神様と一緒に消えていった。
三人とも、涙を流していた。
会えて良かった。
天命のように思えた。
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