第11話
この駅に降りたのは、いつぶりだろう。
彰吾は記憶を辿る。
母親にねだられて、梅の花を見に来た時だったはずだ。
完全に僕はそのあとのランチ目当てだったが、息子とのお出掛けに母親はとても喜んでいたので、孝行出来たのだと思う。
彰吾は地図を手に、その住所を探し始めた。
その家は、駅から少し離れた閑静な住宅街にあった。
インターフォンを鳴らす。
「はい。」
「あの、薬利彰吾と申しますが、猫神様の件で参りました。」
一瞬の間があり、「…どうぞ」と女性の声がし、玄関から女性が現れた。
女性に応接室に案内されると、もう1人、年配女性の姿があった。
お茶を運んで来た女性が、年配女性の隣に座る。
そして口々に話し出す。
「昨夜、私達の目の前に猫…猫神様が現れました。」
「私達、何かの気配がする事には数日前から気付いていたのよね。それで、やっと昨夜に猫神様とわかったの。」
「次に頭に言葉が入ってきたの。
″明日、訪れし者に心を打ち明けよ″って。
何だったのかと2人で話していたら、あなたが現れたの。」
「はい。どうぞ続けてください。」
「実は、孫の
私と息子夫婦と彩海の4人で別荘へ避暑に行って、私達が目を話した隙に1人で海に入ったのね…。
近隣の監視カメラに偶然に映っていて、事件性のない事は確認されました。
大きな波に足をさらわれたのでしょう。」
「遊ぶ時は、しっかり足で歩ける高さまでと教えていたのですが…今でも
「お辛かったですね。猫神様は、明日の夕方にお出ましになるはずです。その時は、どうぞご主人様もご一緒に。」
ちゃんと会わせてあげたい。
彰吾はそう思った。
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