第9話

とある日の放課後、彰吾は図書館に向かった。

今日は、意外と空いているみたいだ。

カウンターの女性に話し掛ける。


「儀式の本。装束の着かたの本はありますか。」


「だれかを呪うとかそういう本ですかっ!」


「いやっ、違いますっ!!」


「…大変失礼致しました。何か…言いしれぬ迫力を感じるので、何かがあるのかと。」


「何もありませんから!

1つの事じゃないですが、別の事でもないような…あっ、そうだ、お参りの作法も知りたいです。」


「申し訳ありませんでした。それでしたら、このあたりですね。

装束の着かたは、こちらにもあります。」と館内地図の書架番号を指し示す。

「装束といえば、私は平安時代が好きなのですが、かさねの色目もみやびで素敵です。伝統色には美しく癒やしの力があると思っています。」


「あ、いやっ…わからない。ちょ、ちょっと探しに行ってみます。」


数冊の本を借り、図書館を出た。

久し振りにカフェに寄るか。

慌ただしくなった自分を甘やかす時間も必要だなと、必要のない言い訳をしてみる。


本を取り出しながら、この前と同じ司書さんだよな、あの人。

しかも、公共の場で″呪う″って…

彰吾は、おかしさを堪えきれず、口元を隠した。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る