第6話
「どうぞ」と、そのお姉さんー紗季さんーは、お茶を出してくれた。
「ありがとうございます。」
彼女が椅子に座るのを待って、僕は紗季さんに質問した。
「僕の事、信じてくださったのでしょうか。普通に考えると変な奴ですよね。」
「いえ信じます。…信じざるを得ないです。」
紗季さんは、そう前置きして話し出した。
「数日前から、時々、モヤモヤした霧のようなものが家の中で見えていました。そして昨日、それが猫の形になって。
なったと思ったら″明日、訪れし者に心を打ち明けよ″と頭に直接、言葉が伝わってきたのです。
夢でも見たのかなと思っていたら、あなたが訪ねてきたので驚きました。
実は、父が8年前に亡くなりました。
ーあの日、忘れ物を取りに帰った父が、運の悪い事に空き巣と鉢合わせし、殺されてしまいました。
近所の方が通報、救急車を呼んでくださったのだけれど…
あなたもニュースなどで目にしたかしら。」
ーあの時の事件が、この家だったのか…
「はい。近所で事件があったとニュースで観ました。」
「あの日、父は、私の代わりに家に戻りました。勘違いに気付いて父を追いかけました。
でも、私が家に着いた時には既に父は…。
見たこともない光景に、私は泣く事しか出来ませんでした。母はショックで体調を崩し、今も安定していません。」
「それはお辛かったですね。お母様早くよくなりますように。
猫神様ですが、明日の夕方にまたお出ましになられるはずです。明日また参ります。」
僕はいたたまれない気持ちになり、立ち上がった。
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