第5話
昨日は色々な事があって自分で思うよりも疲れていたんだな。
朝食を食べた後、僕は書かれていた住所に向かいがてら図書館に寄ってみようと思っていた。
住所は隣町だったが、小学校への通学路だったので、図書館の場所やその住所あたりは大体わかっていたのだ。
久し振りに足を踏み入れた町は、新しくおしゃれな家が建ち並んでいた。まるで違う町の様に感じたが、道幅や家の向きなどが、変わらずに同じ様に存在していて、過去に自分が目にした風景と重なり、不思議な感覚を覚えた。
角を曲がると図書館は同じ場所にあった。
あまり時間も取れないかと、カウンターの中にいた女性に尋ねてみる事にした。
「月の本はありますか?」
「たくさんあります。天体写真ですか?」
「いえ、名前を調べたくて。イザヨイとかイマチヅキ…」
「月の満ち欠けの名前ですね。こちらの館内地図の4の書架にあります。」と指し示してくれた。
「他にも月の名前には、季節や天候、見え方や時間経過を表す名前などもあります。ひと月の中で二度満月が現れる″ブルームーン″など、色々あるので面白いと思いますよ。」
何か…勢いがある人だけど、親切な人だな。
「ありがとうございます。探してみます。」
カレンダーにある旧暦の月の名前ぐらいしか知らなかった僕には、月の満ち欠けの名前は、とても興味深かった。
日本らしくて風流で素敵だ。
図書館を出てしばらく歩くと、昔と同じままの家々が並ぶ区域になった。
それらは、今の僕にはブロック塀の高さは低く、まるでミニチュアの様に感じた。
その中に目的の家があるはずだった。
仲野さん…ここだ!
ちゃんと辿りついた事にまずほっとした。
覚悟を決めて呼び鈴を押すと、きれいなお姉さんが出てきた。
「あの、僕…薬利彰吾と言います。猫神様から封筒を預かりました。その中にここの住所がありました。」
お姉さんの目が、猫神様のワードで驚きを隠せない目に変わる。
「…どうぞお入りください」とやっと声を出し、僕を家に招じ入れた。
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