第8話 肝機能障害

「ん? い、いや、違うよ!! 特別な人って言っても、親しい友人ていう意味だからな!!」


「た、たしかに、この前はになってしまったけど、私たちはまだ異性として付き合っているわけじゃないし……」


「あ、いや、『まだ』っていうのは別にこれからそうなろうっていう意味じゃなくて、なんとくなく無意識に言っただけで、そんなつもりは全然ないからな!!」


「あ、いや、『全然』っていうのも語弊があるな……その、そういうふうになる可能性もゼロじゃないというか……なんというか……」


「あー、もう、そんなことより早く検査に言ってきてくれ!! 今は体優先だ!!」




「お待たせ。結果が出たよ」


「落ち着いて聞いてくれ。予想外に数値が悪い」


「見てくれ、このAST、ALT、ALP、γ-GTPといったあたりだ。軒並み異常な高値になっている。これらは肝臓系の酵素で、肝臓に障害があるときに上昇するんだ」


「そう、つまり、君の体は今強い肝機能障害を起こしている。ちなみに今まで肝機能障害を指摘されことはあるかい?」


「そうか。直近の健康診断でも特にひっかかっていなかったかい?」


「そうか。となると、急性の肝障害だな……」


「薬剤性肝障害か、ウイルス性肝炎か、胆嚢炎か、胆管炎か……」


「腹痛はないかい?」


「そうか。ちょっと腹部の診察をさせてくれ。そこの診察台に横になって、お腹を出してくれ」


「このあたり、胆嚢のある位置なんだけど少し押すよ」


「押しても痛くないかい?」


「そうか。全く痛みがないとなると胆嚢炎の可能性は下がるな」


「次に、肝臓の打診をするよ」


トントン、トントン、トントン……


「肝下縁が肋骨弓よりせり出してる……」


「あー、ごめん。つまり肝臓が腫大しているということなんだ」


「ちょっと、超音波でも見てみよう」


「ゼリーを塗るからちょっと冷たいよ」


「やはり、胆嚢には腫大はないし、炎症もなさそうだな。胆管は拡張していないし、結石もない。胆嚢炎や胆管炎は否定的だな」


「そして、肝臓はやはり腫大している。血液検査結果と合わせて考えると、急性肝炎か……」


「ん……脾臓も腫大している……肝脾腫……」


「発熱……咽頭痛……リンパ節腫脹……肝障害……肝脾腫……」


「あ……あぁぁぁーっ!!」


「まさか……そんな……」


「やっぱり、見落としてた……血液検査でリンパ球分画が増えてて、異形リンパ球まで出てる……」


「病名の見当がついたよ……だが、一つ確認しなければならないことがある……」


「非常に聞きづらいことなんだが……」


「この前、一緒に食事に行ったとき……二人ともかなり酔っていて……帰り道のイルミネーションが綺麗で……その……すごくいい雰囲気なって……その……しちゃったじゃない……」


「その……キスを……」


「あのときのキス……キミ……ファーストキスだった?」



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