第5話 アレルギー反応?

「すまないけど、痛みの正確な部位をもう一度教えてくれ」


「OK、この辺だね……ここに今から超音波端子をあてる。表面にゼリーを塗って当てるからちょっと冷たいよ」


「ほら、見えるかい? この画面は超音波があたっている断面だと思ってくれ。上が外表、下は体の深部だ」


「このあたりまで皮下脂肪で、ここからが筋肉だ。この筋肉の表面に一層膜が見えるだろ? これが筋膜だ」


「そして、この筋膜の中で……そうだな……この辺り。他のところより白みが強くてわずかに分厚いだろ? ここが今回の原因だ」


「ああ……よくわからないか……まあ、ごく微妙な変化だからね」


「この辺りに痛みの中心点があるとあたりをつけた上で超音波をあてないと、探りあてることもできないだろう。ある程度の場所がわかっていても、見分けられるようになるのに私もかなりトレーニングが必要だったんだ」


「ここに今から注射をして、筋膜をほぐすんだ」


「そんなに怯えないでよ。何度も言ってるけど、痛いのは最初だけだから」


「じゃあ、いくよ……」


「はい、痛いところ、通り過ぎたよ」


「画面、見える? ほら、右上から画面の真ん中に白い線が見えるだろ? これがいま刺さっている注射針だよ。あとほんの少し、先端の位置を調整して、痛みの中心点の筋膜にあわせる」


「よし。いい位置だ。それじゃ、注射液を入れるよ」


「ほら、針の先端を中心に、一層だった筋膜が何層にも分かれていくだろ? 筋膜がほぐれていってるんだよ」


「よし、もう十分だ。針を抜くよ」


「はい、おしまい!!」


「え? もう、これで終わりかって?」


「そうだよ。ターゲットの痛みの中心点を正しく探り当てるまで難しいけど、場所さえわかれば、注射の処置自体はすごく簡単なんだ」


「痛みはどうだい?」


「うん? よくわからないって?」


「よし、じゃあ、体を起こして座ってみてくれ。今までだったら、体を動かす度に痛みが出ていたはずだ」


「ふふふ……信じられないって顔だね。私の言ったとおり、痛みがすっかり消えているだろ?」


「うまく効いてよかったよ……」


「もちろん自信はあったけど、人間のやることに完全はないからね」


「自分のやった治療がうまくいって、患者さんが笑顔になってくれたときはいつもほっとするよ」


「そうだよ。私は今、キミが笑顔になって嬉しいんだ」


「ん? なんか急に顔が赤くなってきたな。もしかして注射のアレルギー反応かな?」


「おかしいな……注射したのは生理食塩水だから、アレルギーなんてまず起こらないはずなんだが……」


「ちょっと、よく見せてくれ……え、なんでもないから大丈夫だって? いや、明らかに真っ赤になってるじゃないか」


「こら、逃げるな!! ちゃんと診察させろーっ!!」



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