第32話 指令等

 六魔将が消え、陛下とアベル王子が話し終わったあと、アベル王子はこちらを振り向いて、僕達の存在に気がついた。


「確か君は――」

「アベル王子、レイユ・バルサードと申します」

「愚弟がいろいろ迷惑をかけてすまない」

「いえ。それよりもあの魔族――」

「ああ、非常に厄介だ。下手すると国が滅びる。レイユ、頼みたいことがあるんだが」

「はい」

「空いている部屋に移動していいか? そこで説明する」


 ◇


「ミム・リヴェール? このダークエルフがか?」

「そうです」


「お初にお目にかかります。殿下」

「ああ、家の取り壊し大変だったな」

「大変でした。でもそのお陰でレイユ様と仲良くなれたんで、結果オーライです」


「お久しぶりです。殿下」

「トワール嬢。婚約について愚弟が迷惑をかけてすまない」

「いえ。お陰で今はレイユ君と愛を育んでいます」


(テレトワ、話を盛るな)


 空いている部屋にアベル王子と入る。席に座るとアベル王子は僕達に頼みたいことを説明した。


「間違いなく。カインの仕業だ」

「どうしてそう思うんですか?」

「顔の目の上の部分にかけて大きなアザがある。魔族を人間にすることができるのはヤツしかいないだろう」

「大きなアザ?」

「ああ。急にできたアザの様だ。家臣の話だと魔法が使えなくなったらしい」


 繋がった。僕に呪いをかけたのはカイン王子だ。大きなアザと共に魔法が使えなくなるということは、魔女が解呪したときの呪い返し。退学の件。婚約破棄の件。その全ては僕への悪意だったのだ。


「わかりました。どのように協力すればいいですか?」

「二手に分かれて探そう。私は知り合いの冒険者に相談する」

「それなら、もっと協力を仰ぐべきです。いち早く見つける必要がありますよね?」

「そうだな。だが、魔族を人間にする力――たぶん呪いの力だろう。呪いを使うカインと戦って、ヤツを捕まえることができるのは、限られた人間しかいない」

「王国騎士団と魔法部隊は?」

「防衛線の警備もある。どのくらい人数がさけるのか、調整にも時間がかかる」

「わかりました。僕達は先にカイン王子を探しますね。見つけたらアベル王子へ伝えます」

「わかった。王城内に本部を設置するので、そこに連絡を頼む」


 ◇


「そうでっか。これからその大馬鹿野郎を探すと」

「うん。ロサルいいかな?」

「当たり前ですよ、旦那。旦那について行きますって言ったじゃないですか」


 僕はロサルが確保してくれた宿屋で、今回の件をロサルに伝える。


「ちなみにどこから探します? 王国内にいるんですよね?」

「うん。たぶん六魔将の話から、国外にはいないと思う」

「それなら、今から探す方面を決めて、本部に連絡ですかね」

「そうだね、そうしよう」

「時間に追われているかもしれませんが、今日はゆっくり休みましょうぜ。旅の疲れもありますから、回復してから全力で探しましょ」

「うん、わかった」


 ◇◇◇◇


(ああ、この感覚久しぶりだな)


「おっ、だいぶ時間を空けたな」

「お久しぶりです」


 広大な書物庫の中にいるご老人。導き人。僕はこの人に訊けば何とかなるかもと思った。


「それで、お尋ね者の件だな」

「はい。どこを探せばいいのかと」

咎人とがびとはな――」

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