第26話 口封じの紋
「お世話になりました」
「レイユさん、もう行ってしまうのですか?」
「はい。故郷に戻ろうかと思います」
「そうですか――あの、もしよければ行く前にお食事でもどうですか?」
帝都ギルドの受付で受付嬢とそんな話をしていると、ミムとテレーザが物凄い形相で僕と受付嬢を睨んできた。
(おいおい。何もそんな顔しなくても)
「あっ、レイユさん、やっぱり大丈夫です――そうだ、ギルドカードの更新をしますか?」
「はい、お願いします」
僕はギルドカードを受付嬢に渡す。少し待つとギルドカードが更新され、受付嬢はギルドカードと共に紙を渡してきた。
(この紙何だろ?)
『これ、私の連絡先です。今度、一緒に遊びましょう。いろいろな魔法が使えるレイユさんとイチャイチャしてみたいです』
僕は何食わぬ顔で、手紙を
「ねえ、レイユ君。何貰ったの?」
「いつも丁寧な言葉遣いありがとうございます、って感謝の気持ちが書いてある手紙だよ」
「ふーーん。そう」
「レイユ様、その手紙預かりましょうか?」
「うーん、どうしよう。亜空間魔法もあるし、大丈夫かな」
「そうですか」
「気になるなら中身見てみる?」
「いえ、レイユ様がそう言うのであれば大丈夫です」
ちなみにロサルはいろいろやらかして、受付でブリザードのような対応をされている。この間の助けた女の子にも、勘違いをしてビンタされたと聞いている。
ギルドの奥の方では何やらロサルのことで盛り上がっているみたいだ。
「『エロエロおっぱい』を超える一番強いパワーワードを思いついたヤツが優勝な!」
「この前のヤツじゃダメなん?」
「超えてないだろ」
「じゃあ――」
(何か楽しそうだな)
「じゃあ、近くに来たら顔を出します。お世話になりました」
◇
帝都を出発し、僕達はセラフィーロ王国へと向かう。途中、魔獣が出てもダークエルフのミムが無双してくれるので、旅は順調そのものだ。そんな中、とある町にて、
「着きやしたぜ。偽旦那の町」
「懐かしいな。あの時は本当にロサルが二人いてビックリしたよ」
「まっ、旦那はすぐ見破ってくれましたから、流石ですよね」
(うん。ロサルのおかげ)
僕達は宿屋を決めて、その後ギルドへ向かった。ギルドの前では女の子が何やら通行人に訴えかけているようだった。
「冒険者さん。パパが――死んじゃう呪いにかけられて、誰か助けて!」
彼女の前を通り過ぎる冒険者は、声が聞こえているのに無視してギルドの中へ入っていく。
(きっとギルドにクエスト依頼をしていんだな)
「レイユ様」
「うん。声をかけるよ」
僕は女の子に近づき声をかける。
「こんにちは。何かあったの?」
「あのね。パパの首に模様があって、聞いたら死んじゃう呪いだって……」
女の子の目には涙が浮かぶ。
「わかった。お兄ちゃん、呪いについて勉強しているから、何かできるかもしれない」
「ホント!」
「うん、ホント。お父さんがいる場所を教えてくれないかな?」
「うん! こっち!」
女の子の名前はネネという。彼女に手を引かれ、しばらく歩くと橋の下にある小屋に辿り着いた。
「ここ?」
「うん! パパー!」
ネネのパパらしき人が小屋から出てきた。僕は彼の首に口封じの紋が刻まれていることに気がついた。十中八九、親方様が黒幕だろう。
「誰ですか?」
「パパこの人、助けてくれるって!」
「この子が助けを求めていたので、ここに来ました。ここからは喋らないでください。僕の質問にはジェスチャーで答えてください」
僕がそう言うと、言葉の意味を理解しただろうネネパパは首を縦に振った。
「あなたは誰かに女性を攫うように頼まれていますか?」
彼は首を縦に振る。
「その首筋の紋を付けた人の居場所はわかりますか?」
彼は首を縦に振った。
「他に同じ紋を付けた人はいますか?」
彼は指で四人と伝えてくれた。
「わかりました。呪いは解きますが、その呪いをかけた人の所まで僕達を連れていってください」
彼は首を縦に振った。僕は彼の首筋に手を当て、呪いを解く作業をし始める。慣れていない作業。思ったよりも時間がかかり、額には汗が出る。
「ふう」
首筋を確認。ちゃんと口封じの紋が消えていて、ほっとした。僕はネネに言う。
「無事に終わったよ。パパは死なないよ」
「ホント!」
「本当」
「ありがとうございます。本当に助かりました」
「いえいえ。それよりも――」
「はい。館へ案内します」
僕達はネネパパの案内に従い、親方様の居場所へと向かった。
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