第20話 額の刻印
(また、ご老人と会ったな)
僕が目を覚ますと、ロサルはもう起きていた。
「おはようございます。旦那」
僕は起き上がり、ベッドの上で大きく伸びをする。
「ロサル、おはよう」
「ぐっすり眠れたみたいですね」
「うん、そうみたい」
「みんな心配していたんですよ。魔法が使えなくなって、旦那が落ち込んでいましたから」
「ん? そう? 落ち込んでいたかな」
「そうですよ。旦那は自覚が無いかもしれませんが、あっしらには一目瞭然でしたぜ」
ロサルに言われて、僕は相当落ち込んでいたのかと思った。魔法が使えなくなったことが思ったよりも精神的に来ているのだろう。「ウォーターボール」が出るか確認をするが、まだダメみたいだ。
「まっ、眠れたみたいなんで、あとはメシですね。元気出すためにバカ食いしましょうよ」
◇
食堂に入るとテレーザと目が合い、彼女が反応を示した。するとミムが振り返り、僕を見る。
「おはよう。二人とも」
「レイユ君、大丈夫?」
「うん、問題ないよ。魔法が使えないままだけど」
「レイユ様。朝食を取ってきますね」
「ミム、ありがとう」
ロサルと共にテーブルに着き、四人で朝食を摂る。
「ねぇ、レイユ君。額にアザができているよ」
「ん? そうなの」
「はい、レイユ様の額にくっきりと模様が」
(ああ、そういえば額を見ろって言っていたな)
「ありがとう。後で鏡を見てみる」
「旦那、これからどうしますかね?」
「そうだね。旅に必要になるからアイテムバックを買おう」
「あれ、めちゃくちゃ高いですよ」
「うん、知っているよ」
「金、どうするんですか?」
「昨日、クエスト達成の報告をしたでしょ? そのあと職員の方に呼び止められてね。『マチルダからお金を預かっています』って言われたんだ。エフゲーアの解毒の追加報酬があったみたい」
「ほう、あのババアが。しかしまあ凄いっすね、王都ギルドは帝都ギルドとちゃんと繋がりがあるんですね」
「みたいだね」
僕は朝食を食べ終わったあと、買い物はミム達に任せ図書館へ向かう。
◇
「すみません。閉架書庫に入りたいのですが」
図書館で職員の方にお願いして、閉架書庫に入れてもらう。本を借り出し、二階の読書スペースへ。呪いに関する文献を読み進め「こんな残虐な呪いもあるのか」と、人間の恐ろしさを感じた。
「ん(これは)」
何冊目の本だかわからなかったが、文献の中で一つ興味深い記述があった。
(魔女の
呪いを研究している魔女がいると、文献には書いてあった。もしかしたら、この魔女に会えば――、
(あっ)
僕は額のアザのことを思い出し、鏡のある場所へと行く。その場所に着き、鏡を見ると見覚えのある模様があった。
「そうか……(呪いをかけられていたんだ)」
その額の模様を見る限り、呪いの紋の類だということ。これが原因で魔法が使えなくなったのだろう。
(何で呪いをかけられたのだろう)
僕は文献を読むのを止め、閉架書庫に返し、図書館を出る。ミム達と合流し魔女のことを伝え、相談しようと考えたのだ。
◇
「旦那!」
図書館を出てすぐに、ミム達に会った。
「買い物終わったんで来ましたぜ」
「レイユ君、これ」
テレーザは赤いバンダナを僕に渡してきた。
「これで、アザを隠してね」
「ありがとう」
「姐御も姐さんもアザのことが気になっていたみたいですよ。でも額のアザを隠すなら、姐御か姐さんのパンツを使った方が旦那が喜ぶって、言ったんですがね。却下されました」
(喜ぶのはお前だけだ、ロサル)
ロサルの変態な言葉は置いといて、みんなが心配してくれていることが嬉しかった。
「レイユ様、アイテムバックとポーション類を買いました。これ、カードです」
「ミム、ありがとうね」
◇
「魔女でっか? ――あっしには分かりません。さっぱりです」
ミム達に魔女の棲む森について話す。僕のアザの呪いのことも伝え、そこに行って魔女に会えば、呪いが解けるかもしれないと説明した。
「うん。その森へ行きたいから、ギルドで情報を集めようと思う」
ミムと目が合う。僕に何かを訊きたい感じだった。
「わかりました、旦那。今ギルドに行ってもいいんですが、夜の方がみんな酒で
ロサルの提案を受け、一旦宿屋に戻り、僕らは夜にギルドへ行くことにした。
◇
「レイユ様。ちょっとお話が……」
宿屋に着くと、ミムが話しかけてきた。
「うん、大丈夫だよ。話って?」
「ここではなんですから、部屋に戻ってからでもいいですか?」
「わかった。僕の部屋でいい?」
「はい」
僕はミムと一緒に部屋に入る。するとミムがベッドの脇へ行き、服を脱ぎだした。
(えっ)
僕がミムの立ち姿を見ていると、ミムが胸にあるアザを指し、僕に言う。
「レイユ様。これって呪いですか?」
「……そう。呪いの紋の一つ」
「やっぱりそうでしたか」
「ごめん。隠していて」
「いえ、それは大丈夫です。それよりも、あの時一緒に旅に出ようって、あたしを連れ出したのは、この呪いの紋が原因だったんですね」
「そう。それも一つの理由――ミムの呪いが解きたくて」
「それにしても、この呪いは何でしょうね。レイユ様と同じで魔法が使えなく呪いなんですかね?」
「アザの模様が違うから、魔法が使えなくなる呪いではないと思う」
コンコンコン
「レイユ君、入るよ~」
部屋に入ってきたテレーザはミムの上半身下着姿を見て、大きな声をあげる。
「ちょっと、ミムミム! 抜け駆けは許さないわよ!」
そう言って、テレーザも服を脱ぎ始めた。
「ちょっと待って! テレトワ。説明するから、服を脱がないで」
◇
「あー、ミムミムのあのアザって呪いの紋だったんだ」
「そう」
テレーザにミムの呪いの紋について言う。
「でも、ミムミム普通だよ。本当に呪いがかけられているの?」
「たぶんかけられている。だから魔女に会ったとき、ミムの呪いの紋についても訊こうと思っていたんだ」
「ふーん。おっぱいが大きくなる呪いだったら、うちもかけてもらおうかな」
(それは違うと思うよ)
「それならあたしこの呪い解けなくていいです」
この後二人は僕の部屋でゆっくり過ごし、あっという間に夜が訪れる。それからロサルに声をかけ、僕らはギルドへと向かった。
◇
「ああ? 魔女の棲む森? 知らんな――そうだ! おーい! 誰か魔女の森知らないか!」
ギルドにいる冒険者に魔女の棲む森について聞いてみる。みんな酔っぱらっていて、中にはミムとテレーザにちょっかいを出してくる冒険者もいた。
「さあ、さっぱり」
「若いの。ここにいる連中は知らんと思うぞ」
結局、有力な情報は得られなかった。
「あの、ロサルさんですよね?」
「ん? 何だいおねえさん?」
「わたしのこと助けてくれて、ありがとうございます」
「いやいや、大したことじゃないよ(おっ、これはチャンス到来か)」
「もしよかったら、この後お食事でもどうでしょうか? お礼がしたくて」
「そう? じゃ、お言葉に甘えちゃおっかなぁ(そしてムフフだろ、おっ、いい形してる)」
ロサルは助けた女性の一人に声をかけられていた。話が盛り上がっているみたいなので、僕はミムとテレーザと共にロサルを置いて宿屋へ帰ることにした。
◇◇◇◇
(ここは)
「おっ、随分と早い御帰宅だ」
紫色のフードを被ったご老人とまた会う。
「はい。訊きたいことがありまして」
「ほうほう、なるほどな。それでここに来たのか」
「魔女の棲む森について知っていますか?」
「もちろん知っているぞ」
「えっ」
「森の中に泉があるんじゃ。そこがそうじゃよ」
「そうですか! ありがとうございます。具体的には――」
「そうじゃな、場所は――」
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