第13話 ハウティネス(haughtiness)
「親父、急に呼び出して何なんだ――って、兄貴もいるじゃん」
「遅かったなカイン、そこに座れ」
俺は親父に呼び出され、親父の部屋を訪れる。部屋に入るとバカ兄貴もいて、「一体、何があったんだ」と思いながら、椅子に座った。
「ここに来てもらってのは、お前らに大事な話をしようと思ってな」
「大事な話?」
ガリ勉に指名手配をかけたことが親父にバレたのか? いや、命令をしたヤツらはそんなヘマをするアホじゃないから大丈夫だろう。
「ザビンツの帝王から第二
「父上――いえ、陛下。お聞きしたいのですが、これは政略結婚というものなのでしょうか?」
「そうだな。そう思ってもらって構わん」
バカ兄貴の質問に親父はそう答えた。
「親父、それなら俺の方がいい。魔法も使えない中途半端な兄貴に任せるのは荷が重いと思うぜ」
バカ兄貴は言い返すこともしないだろう思っていたが、口を開いた。
「カイン。お前、これは外交的な問題も絡んでいるんだぞ。わかっているのか?」
「そんなの当たり前だろ」
「そんな
「はあ? 外交を上手くやるには力が必要だろ? 兄貴の方こそ無理なんじゃね?」
確か第二皇女は姉妹の中でも飛び切りの美人だと聞いたことがある。そんなオイシイ話をバカ兄貴に譲る気はない。
「まあよい。どちらにせよ
「相応の者ね――兄貴じゃないことは言えるな」
「そうかのぉ? 冒険者活動をしながら努力して成長しようしているのも面白いと思うがね」
「はあ? 兄貴、冒険者になったの?」
俺が兄貴を見ると、兄貴は真っ直ぐ力強い目で俺を見ていた。
「はっはっはっ! 平民と同じことをするんだ、兄貴は。俺がふざけて言ったことを真に受けるとは」
バカ兄貴は黙って、俺のことを見ている。
「兄貴、何か言ったらどうなんだ? 今ここで俺の方が強いことを証明してやってもいいんだぜ」
「カイン、まあよせ。今日はお前らにこのことを伝えるために集まってもらっただけだ。下がってよいぞ」
◇
俺は自室に戻り、椅子に腰かける。魔導書を読みながら椅子を傾けていると、扉をノックする音が聞こえた。
「殿下、失礼します。ご報告に参りました」
「おう、ご苦労。それで?」
「指名手配の件は国内のギルドすべてに伝え、また国境に検問所を設けて捕まえるよう手筈を整えました」
「そうか――もうガリ勉は捕まえたのか?」
「いえ。まだそのような報告は上がっておりません」
なるほど。これでガリ勉を捕まえて幽閉できる。時間の問題だろうな。
ん? 待てよ。もうすでに国外に逃げていたらどうするんだ。それじゃ捕まえられんし、国外の魔法学園にでも入られたら、意味が無いじゃないか。
「わかった。下がってよいぞ」
「はっ」
ガリ勉に逃げられたかもしれん。どうしようかと思案していると、魔導書が机から落ち、ページが開いた。俺は思わずそれを見る。
「ん? これは」
ページを読むとそこには大変興味深い記述があった。
「封魔の刻印――呪いの一種か……。そうか」
仮にガリ勉が国外へ出国したとしても、魔法を封じて活躍する術を奪ってしまえばいい。となればやることは明白だ。
「呪いを飛ばす為には――」
俺はガリ勉の人生をどん底に落とすため、魔導書に書かれてある続きを読むことにした。
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