第14話 この男やりおるな
王都のギルドを出て、僕らは隣接する国、ザビンツ帝国を目指すことにした。元々の目的はミムの呪いを解くことだが、僕とテレーザが指名手配されたとなれば、いち早くこの国を出る必要があると思ったからだ。
「ザビンツですか、旦那」
「そう。ちょっとね、この国に滞在するのは都合が悪くてね」
「ふーん、そうですか。あっしはよく分かりませんけれど、何かあるんですね」
旅は問題なく進む。そんな中、とある町で女の子が男三人に囲まれているところを見つけた。
「いいじゃん。俺達と遊ぼうぜ」
「そんな困ります」
「一緒に楽しんで、気持ちよくなろう。ね?」
「やめてください!」
男が女の子の手首を掴む。
「旦那。あっし、ちょっと行ってきます。カッコいいところを見せつけてやりますぜ」
そう言って、ロサルは男達の所へ。
「おう、てめぇら」
「何だ?」
「その子嫌がっているだろ、手を離せ!」
「はあ? てめぇには関係ないだろ」
「お前らみたいのがムカつくんだよ」
ロサルは女の子を掴んでいた男を殴る。
「てめぇ! やりやがったな!」
男三人とロサルが喧嘩をし始めた。
「お嬢さん。今のうちに逃げな(ふっ、決まったぜ。これで心をバッチリ掴んだぜ)」
「ありがとうございます。これから彼氏とデートなんで失礼します」
ロサルは喧嘩している際中、顔を殴られてもいないのに泣いていた。
(どんまい。ロサル)
「レイユ君、行かなくていいの?」
「下手に揉め事を起こして目立ったら、いろいろマズいでしょ、テレトワ」
「あっ、そうだね」
「まあ、あとでアクアヒールをかけるよ」
喧嘩については、男三人相手にロサルが勝った。王都ギルドで四対一で喧嘩したと聞いたときにも思ったが、複数人相手でも平気なのだろう。
「終わりました、旦那」
「こっち来て。アクアヒールをかけるから」
「すみません旦那。あいつらの拳思いのほか痛くて、涙が出ましたよ」
(違うよね? 女の子の方だよね?)
◇
その後の旅も順調で、僕らはようやくザビンツ帝国と隣接する町に入った。
「うーん」
「どうしたの? レイユ君」
「国境の検問をどう抜けようか――どうしよう」
「ん?」
「ミムとロサルは指名手配されていないだろうから大丈夫だと思うけど」
「えっ、指名手配って何なの?」
「ああ、テレトワには言っていなかったね。王都を出るときに僕とテレトワは指名手配されていたんだよ」
「はい? うち達、国賊として指名手配されたの?」
「あっし、初めてそのこと聞きましたぜ。どうするんですか?」
「うーん」
「それなら旦那、あっしにいい考えがありますぜ」
◇
僕らはこのあとの旅にも必要なものを買い足し、そして国境の検問所の前まで来た。
「レイユ様。男性に見えますかね?」
「見える見える。カッコいいよ」
「レイユ君、うちはどうかな?」
「可愛い少年に見えるよ」
ミムとテレーザには男装をしてもらっている。男装をする際に「レイユ様、胸のさらしを巻くのを手伝ってください」とミムが言い、「あっしがやりますぜ」とロサルが口を挟むと、ミムはロサルに思いっきりビンタをした。「あたしはレイユ様にお願いしたんです!」という場面を見て、僕は思わず苦笑いをした。
◇
「次」
「はい」
「ギョク、キョウ、ケイ、フ。誰がギョクだ?」
「僕です」
「キョウは?」
「あ――オレです」
「ケイとやらは?」
「う――ボクです」
「問題ないな。じゃあ、お前ら行っていいぞ」
(ロサルはいいんかい?)
検問所で身分証として渡したギルドカードは、ロサルのことを囮にした男達のギルドカードだ。ロサルが彼らと喧嘩したあと、お金の入ったギルドカードを彼らから奪ってきたみたいだ。
「お兄さん、すんまそん。あっしがフなんですが」
「おお、悪かった悪かった、行っていいぞ」
「お疲れのようですね。お兄さん頑張ってください」
ロサル
「上手くいきましたね、旦那」
「そうだね。でもこのギルドカードどうするの?」
「男物の服も買って、もう金が入っていないんで、そこら辺に捨てましょうや」
「そうだね。そうしよう」
こうして僕らは故郷である王国をあとにし、ザビンツ帝国に入国した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます