第3話 ミムの胸に
馬車に揺られ、帰宅中。疲れていたのか、ミムは僕の肩に頭を乗せ眠っていた。僕は家族に説明するかずっと悩み続け、気がつくと家に着いていた。
「ミム、ミム」
「う、うーん」
「着いたよ」
「あっ!」
ミムは自分の頭が僕の肩の上にあったことに気づき驚いて、謝った。
「レイユ様、ごめんなさい! 重かったですよね?」
「大丈夫、重くなかったよ。それよりも家に入ろう」
「はい」
僕は馬車を降りミムを連れて、玄関へ行く。家の中に入ると兄が僕達に気がついて、声をかけてきた。
「お帰り、レイユ。ん? その女の子は?」
「えーっと、事情を話すと長くなるから、落ち着いてからでいい?」
「ちょっと待て。お前、この子奴隷だろ? レイユ、何してるんだよ」
「ははは、ちょっと訳があって」
「ほぅ。後で親父達と一緒に詳しく聴こうじゃないか。あっ、そうだ、君。お風呂があるからまず入りなさい。汚れがひどいから」
兄がそう言うと、その言葉を聞いた使用人がミムを風呂場へ連れていく。僕は部屋に戻り部屋着に着替えた後、リビングで待っている家族のところに行った。
「レイユ。パーティーは楽しめたか?」
「それが……」
父からパーティーの様子を聞かれ、少し戸惑う。
「何だ。何かあったのか?」
息を吸い込み、覚悟を決めて話す。
「あのね、第二王子が婚約した」
「それはめでたいな」
「それで、パーティーの中で王子と一緒にいたのがテレーザで、テレーザが王子の婚約者になるって」
「ん? どういうことだ? 何も聞いておらんぞ」
「僕も知らなかった。パーティーに行って、テレーザを待っていたら、まさかそんな事態になっていたなんて」
「それはおかしな話だな。トワール子爵を呼び出して事情を聴かねば納得できん」
「そう思うよね。婚約って家と家の問題でもあるから、事前に何も無いって有り得ないよね」
父との会話に兄も混ざる。
「レイユ、第二王子って言ったな?」
「うん。第二王子の婚約者がテレーザになる」
「あまりいい噂を聞かんのよ、第二王子。欲しいものは手段を選ばず手に入れ、飽きたら放りっぱなし。我儘で学園での成績も優秀とは言えないだろ?」
学園の話も出たので、退学処分になったことも伝えることにした。
「そうだね――父さん、兄さん、あとで姉さん達にも伝えてほしいのですが、実は今日学園の理事長から退学処分を言い渡された」
「「はあ?」」
父と兄は今日一番の驚愕した顔を見せる。
「何があったんだ? レイユ、退学になることをしてしまったのか?」
「うん。校長室で理事長に学園の施設を一部破壊したことが理由だって」
「ああ。前に言っていた、魔力の調整ミスの話だな。そんなことは誰だってするだろ。過去にも失敗して、施設を破壊したヤツがいるはずだぞ」
「親父、これ、理事長が出てきているってことは、国からの何かしらの圧力があったんじゃないか?」
兄が父にそう言う。兄は剣聖の称号を得ていて、王国騎士団にも出入りをしているから、そういう風に感じたのだろう。実際のところはわからないが。
「そうかもしれんな。レイユ、今日は大変だったな。トワール嬢のことも退学のことも、一度に来て混乱しただろう?」
「うん」
「まあ、人生いろいろあるから、自暴自棄だけにはなるなよ」
「えーっと――」
「どうした?」
「退学処分を言い渡され、婚約破棄されて、女の子の奴隷を買っちゃいました」
父はまるで目玉が飛び出るくらいの勢いの表情をする。
「よく聞こえんかった。もう一度言ってみろ」
「いろいろことが重なって、たまたま奴隷オークションの会場に入ったんだ。そこでミム・リヴェール令嬢を見かけて、思わず勢いで買ってしまった」
父は呆れていた。
「リヴェール男爵はお人好しだからな。取り壊しの話を聞いた時には驚いたよ――そうか、借金のかたに娘をか」
「うん」
僕は視線を落とした。
「とにかく今日はもう休め。冷静な判断ができなくなっているようだからな」
僕はこれからのことを話している父と兄を残し、疲れを取るため風呂場へと向かった。
◇
「どうすればいいんだろう」
これからどう行動すればよいか頭の中がいっぱいになる。風呂場にある脱衣所に入ると、風呂上がりで上半身裸のミムと会った。
「「えっ」」
ミムは咄嗟に後ろを向く。僕は一瞬見えた、ミムの胸のアザが気になってしまった。
「ミム、ごめん」
「は、は、い」
「おっぱいを見せてくれ」
「はい?」
「胸のアザを見せてくれないか?」
「き、着替えてからでもいいですか?」
「ああ」
そりゃそうだ。恥ずかしいわ。僕は脱衣所を出て、ミムが着替え終わるのを待った。
「レイユ様、もう大丈夫です」
僕は脱衣所に入り、ミムに近づく。胸のアザを見るため、胸元を凝視した。
「レイユ様?」
どこかでこの模様を見たことがある。「どこで見たっけかなぁ?」顎に手をやり考えた。
「もういいでしょうか?」
「あっ、ごめん。もう少し見せて」
もう一度アザを見て、その形を記憶する。
「ありがとう、ミム」
「は、はい。では、失礼します!」
ミムは急いで脱衣所を出る。僕は風呂に入りながらもアザのことを考え続けた。
「どこかで見たんだよなぁ」
風呂から上がり、ベッドに横たわる。アザのことを考えていたが、疲れていたのか眠りに落ちてしまった。
◇◇◇◇
「ここは――書物庫?」
広々とした空間に、木目で質の高い本棚がたくさんある。本もたくさんあり「ここならいろいろ調べて、たくさん学ぶことができる!」と興奮を覚えた。
「ほう、珍しい。お客さんかい?」
声のした方を向くと、紫色のフードを被ったご老人がいた。
「えーっと」
「ほっほっほっ。お主、知りたいことがあるんだろ?」
「はい」
僕はアザの形を思い浮かべる。
「それなら向こうの本棚にあるぞ――」
◇◇◇◇
「あっ!」
部屋に朝日が差し込む中、僕は飛び起きて思い出した。
「呪いの
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