第12話 後始末と新たな依頼

麗華たちが邸宅の爆発現場から離れ、警察の封鎖線を越えたのは午後6時半だった。周囲には警察官や消防士が集まり、消火活動と捜査が続いていた。


夏川警部は麗華に近づき、「本当にすごい推理でした。あの爆弾を見つけたおかげで、全員無事に避難できました。」と感謝の言葉を述べた。


麗華は微笑みながら、「ありがとうございます。皆さんの迅速な対応があったからこそです。」と答えた。


その時、村上志穂が携帯電話を取り出し、新たなメッセージを確認した。「麗華さん、見てください。新しい依頼が届いています。」


麗華はメッセージを読みながら、「依頼人は…中村陽翔さん。彼の家族が失踪したとのことです。詳しい話を聞くために、今すぐ会いに行く必要があります。」と答えた。


加藤健が頷き、「了解です。すぐに準備を整えて出発しましょう。」と言った。


麗華たちはすぐに現場を離れ、中村陽翔の住所に向かった。道中、麗華は手帳を開き、失踪事件に関するメモを取り始めた。「家族の失踪…これは単なる事件ではなさそうね。背後に何か大きな陰謀があるかもしれない。」


午後7時過ぎ、中村陽翔の家に到着すると、彼は深刻な表情で出迎えた。「来てくださってありがとうございます。妻と娘が突然姿を消したんです。警察にも連絡しましたが、まだ手がかりが見つかっていません。」


麗華は冷静に質問を始めた。「最後に彼らを見たのはいつですか?何か不審な出来事はありませんでしたか?」


中村は苦しそうに思い出しながら答えた。「最後に見たのは昨日の夕方です。何も変わったことはなかったと思います。ただ、最近妻が誰かに尾行されていると言っていたんです。」


麗華はメモを取りながら、「それは重要な情報です。彼女が尾行されていた理由について、心当たりはありますか?」


中村は首を振り、「いいえ、全く分かりません。ただ、彼女は最近、何か重要な書類を持っているようでした。それが関係しているのかもしれません。」


麗華は中村に感謝し、「分かりました。まずは家の中を調べさせてください。何か手がかりが見つかるかもしれません。」と言った。


加藤健と村上志穂は家の中を丹念に調べ始め、麗華は中村と共に居間に残った。麗華は中村に、「奥様が持っていたという書類について、詳しく教えてください。」と尋ねた。


中村は記憶をたどりながら、「その書類は銀行の金庫に保管していると言っていました。内容については教えてもらえませんでしたが、非常に重要だと言っていました。」と答えた。


その時、加藤健が書斎から戻ってきた。「麗華さん、これを見てください。奥様のデスクの引き出しから見つけたメモです。『金庫の番号:5842』と書かれています。」


麗華はメモを見つめ、「この金庫の番号が重要な手がかりになるかもしれません。まずはその金庫を確認する必要があります。」と言った。


中村は深く息をつき、「銀行は明日の朝しか開いていません。今夜はここで待つしかありません。」と不安げに言った。


麗華は優しく微笑み、「大丈夫です。私たちが一緒にいます。明日の朝、金庫を確認し、全てを明らかにしましょう。」と励ました。


午後8時を過ぎ、麗華たちは中村の家で一夜を過ごすことに決めた。緊張が漂う中、新たな謎が浮かび上がり、麗華の推理力が再び試されることになる。


夜の静けさの中、麗華は窓の外を見つめながら、新たな事件の全貌を解き明かす決意を固めていた。翌朝、全てが明らかになることを信じて。

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【完結】鍵のかかった密室、溶けた氷の謎。名探偵・青木麗華が挑む、究極のミステリー! 湊 マチ @minatomachi

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