第8話 高橋英二への対決

麗華の書斎に集まった夏川警部と加藤健、そして村上志穂。ホワイトボードにはこれまでの調査で得た情報と証拠が整理されていた。麗華は冷静な眼差しで全員を見渡し、話を始めた。


「皆さん、これまでの調査で得た証拠をもとに、今日高橋英二を追い詰めるための最終準備をします。」麗華の言葉に全員が頷いた。


「まず、氷のナイフのトリックです。現場に残された水滴がその証拠です。鈴木陽一の書斎の暖房が高温に設定されていたことから、氷が短時間で溶けるように計画されていたと考えられます。」


夏川警部が付け加える。「そして、オフィスの映像が編集されていたことも確認できました。これにより、高橋のアリバイが偽装されたものであることが証明されます。」


「さらに、高橋の車が事件当日に鈴木陽一の邸宅付近で目撃されたという証言も得られました。」村上志穂が続けた。


麗華は頷き、ホワイトボードに書かれた情報を指差しながら説明を続けた。「これらの証拠を基に、高橋が犯行を行ったと断定できます。次は、この証拠を高橋に突きつけ、彼の反応を確認する必要があります。」


加藤健が立ち上がり、「高橋英二に直接対峙するんですね。準備はできています。」


麗華は深呼吸をしてから、全員に目を向けた。「そうです。今から高橋英二のオフィスに向かい、彼を追い詰めます。皆さん、準備はいいですか?」


全員が頷き、麗華を先頭にして高橋英二のオフィスへと向かった。オフィスに到着したのは午後3時。高橋は穏やかな表情で迎え入れたが、その目には警戒の色が見て取れた。


「麗華さん、警部、加藤さん、村上さん。今日は何のご用でしょうか?」高橋の声には微かな緊張が含まれていた。


麗華は冷静な声で答えた。「高橋さん、鈴木陽一さんの事件についてお話があります。こちらに座っていただけますか?」


高橋は少し戸惑いながらも、デスクの前に座った。麗華はホワイトボードに書かれた証拠の写真やメモを広げ、説明を始めた。


「まず、現場に残された水滴についてです。これは氷のナイフが使用された証拠です。氷が溶けて水滴となり、暖房によって早く溶けるように計画されていました。」


高橋の表情が硬くなったが、麗華は続けた。「次に、あなたのオフィスの映像が編集されていたことが確認されました。これはアリバイを偽装するためのものです。」


夏川警部が証拠の映像を見せながら言った。「映像の編集痕跡が見つかりました。これにより、あなたがその時間帯にオフィスにいなかったことが明らかになります。」


高橋は口を開いたが、言葉が出なかった。村上志穂が更に追い打ちをかけた。「そして、あなたの車が事件当日に鈴木陽一の邸宅付近で目撃されています。これで、あなたが現場にいたことが確実です。」


高橋の顔が蒼白になった。麗華は冷静に最後の一手を打った。「高橋さん、これらの証拠を基に、あなたが鈴木陽一さんを殺害したと断定します。すべてのピースが揃いました。あなたはもう逃げられません。」


高橋はしばらく沈黙していたが、やがて重い口を開いた。「…確かに、私がやりました。鈴木が新作で私の過去を暴露しようとしていたのを知り、どうしても止めたかったのです。」


麗華は静かに頷いた。「動機も、手口も、すべてが明らかになりました。あなたは自身の秘密を守るために、友人を手にかけたのですね。」


高橋は深く息をつき、頭を垂れた。「もう言い逃れはできません。すべてを認めます。」


その時、オフィスのドアが突然開き、見知らぬ男性が入ってきた。時計は午後3時45分を指していた。彼は急ぎ足で麗華たちの前に立ち、焦った様子で言った。「待ってください!まだ終わっていません。この事件には、もう一つの秘密があります。」


麗華と彼女の仲間たちは驚きの表情を浮かべ、見知らぬ男性に視線を向けた。何が起こるのか、一同は息を呑んで次の展開を待ち構えた。

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