第6話 高橋英二のアリバイ崩し
夏川遼警部は、麗華の指示を受けて高橋英二の行動を調査するために、彼のオフィスに向かった。ビルのエントランスを通り抜けると、受付で身分を証明し、エレベーターで高層階にある高橋のオフィスへと向かう。オフィスのドアをノックすると、秘書が現れた。
「警部、何かご用でしょうか?」
「高橋英二さんにお会いしたい。重要な話がある。」
秘書は一瞬ためらったが、すぐに高橋に連絡を取った。「高橋さん、警部がお見えです。」
数分後、高橋英二がオフィスの奥から現れた。彼は一見穏やかな表情を浮かべていたが、その目には緊張の色が見て取れた。「警部、お忙しい中、何かご用ですか?」
「鈴木陽一さんの事件について、いくつか質問があります。あなたの協力が必要です。」夏川は真剣な眼差しで高橋を見つめた。
高橋は一瞬戸惑ったようだったが、すぐに笑顔を取り戻した。「もちろん、お答えできることは何でも。どうぞ中へ。」
夏川は高橋のオフィスに入り、座った。デスクの上には数々のビジネス書類が広がっていたが、その中に一冊の古びたノートがあった。夏川はそれに目を留めたが、すぐに話を切り出した。「事件当日のあなたの行動について、お聞かせいただけますか?」
高橋は冷静に答えた。「その日は一日中オフィスにいました。ビジネスミーティングがいくつかありましたし、午後には重要な電話会議もありました。」
「そのミーティングや電話会議の具体的な時間を教えていただけますか?」夏川はメモを取りながら尋ねた。
高橋は少し考えた後、秘書に向かって指示した。「スケジュールを確認してくれ。」
秘書がスケジュールを確認する間、夏川はデスクの上のノートに再び目を向けた。「そのノートは何ですか?」
高橋は一瞬ためらったが、「これは私の個人的なメモ帳です。ビジネスのアイデアや日々の気づきを書き留めているだけです。」
夏川は軽く頷きながら、ノートに何か手がかりがあるのではないかと考えた。その時、秘書がスケジュールを持って戻ってきた。「こちらが当日のスケジュールです。」
夏川はスケジュールを確認し、いくつかの矛盾点を見つけた。「ここに記載されている時間帯に、あなたのオフィスの外で目撃されたという証言があります。これはどう説明しますか?」
高橋の表情が一瞬硬くなったが、すぐに平静を取り戻した。「それは何かの間違いでしょう。私はその時間、確かにオフィスにいました。」
夏川はその言葉に疑念を抱き、さらに質問を続けた。「では、その時のビデオカメラの映像や他の証拠はありますか?」
高橋は冷静に答えた。「ビデオカメラは常に稼働しています。映像を確認していただければ、私がオフィスにいたことが分かるでしょう。」
夏川は秘書に向かって「その映像を確認させてもらえますか?」と依頼した。秘書は映像を準備し、夏川に見せた。
映像には確かに高橋がオフィス内にいる様子が映っていたが、夏川は映像の一部に不自然な点を見つけた。「この映像、何か編集されているように見えますが…」
高橋は顔色を変えずに答えた。「編集?そんなことはありません。すべてオリジナルの映像です。」
夏川は映像の分析を依頼するために、専門家に連絡を取ることを決意した。「高橋さん、念のため映像の分析を行います。その結果が出るまで、しばらくお待ちください。」
高橋は微笑みながら「もちろんです。どうぞご自由に。」と答えたが、その目には明らかに焦りの色が浮かんでいた。
夏川はオフィスを後にし、麗華に報告するために連絡を取った。「麗華さん、高橋のアリバイに不自然な点が見つかりました。映像の分析を進めます。」
麗華の冷静な声が返ってきた。「分かりました。次に必要なのは、その映像の矛盾点を突き止めることですね。」
夏川は深呼吸をしてから「そうです。映像の分析が完了すれば、真相が見えてくるはずです。」と言いながら、事件の真相に一歩近づいたことを実感していた。
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