社畜のオッサンがモブ悪役(奴隷商人)に転生したら、ゲーム知識を利用して、ヒロインたちを最強に育成するわ、無自覚にヤンデレ化させるわで、いつのまにかストーリーをへし折りまくっていた件。
第46話 アリスとミレーヌの瞳が妖しく光っているのだが……
第46話 アリスとミレーヌの瞳が妖しく光っているのだが……
「い、いや……別に……」
「そうですが……では、先程話したように、まずはわたしが、街に来た帝国兵の様子を見てまいりますので——」
「ま、待て! アリス! それは俺がいくから!」
と、俺は声を上ずりさせながら言う。
「ご主人様が……ですか。しかし、わざわざご主人様自ら出向く必要はないかと……」
「い、いや……一度自分のこの目で確かめておきたい」
「それならばわたしも一緒に——」
「だ、大丈夫だ。俺一人で」
「しかし……相手はこちらの意図に気づいていないとはいえ、武装した帝国兵が複数名おりますし、一人という訳には……」
「お、俺一人で十分だ。いざとなったら、帝国兵数十人くらいなんとでもなるさ。はは……」
俺は自分で言っておきながらも嘘くさい乾いた笑いをする。
「確かに……ご主人様のお力ならば雑兵が何百人いても問題ないかと思いますが……しかし万が一ということもありますし」
アリスは俺の冗談をスルーし、真顔であからさまな世辞を並べ立てると、不自然なくらいに食い下がる。
やはり……俺の予想通りアリスは俺を捨て駒にして帝国とことを起こそうとしているのだろう。
そんなことになってたまるか。
「と、とにかく俺一人で行くから、二人はここで待っていてくれ!」
と、俺は無理やり話を切り上げて、さっさと部屋から出ていく。
しかし、二人はあれだけしつこかったのだ。
てっきりアリスとミレーヌは無理やりにでも追ってくるだろうと思ったのだが……。
俺はチラリと後ろを見るが、二人は無言のまま大人しくその場にとどまっていた。
俺はほっと胸をなでおろすが、すぐに自分がとんでもない過ちを起こしていたことに気づく。
というのも、その段になって、俺は自分が無自覚にも奴隷紋を発動していたことに気づいたからだ。
「ああ……これで何度目かしら……フフ……聖紋を発動されるのは……ずっと使ってくださらなかったのに……やはり……ご主人様は本気のようですね、ミレーヌ……本気で帝国と——」
「優しいライナス様もわたしはお好きだけれど……滅多に見せないこういう顔もわたしは好きなんだよね……ああ……それにこの感覚……やっぱり聖紋を使ってくれると……ライナス様と繋がっているこのあたたかい感覚が全身に……フフ……やみつきになっちゃう……」
遠目から見る二人はブツブツと何かを言いながら、あさっての方向を見つめている。
俺は思わず目をそらす。
が……その瞬間、アリスとミレーヌと目があってしまう。
二人はともに何故か笑っていた。
絶世の美少女といってもよい二人の華麗な少女の微笑み……。
だがしかし、その笑顔を見て、俺は寒気しか感じなかった。
二人の美少女が醸し出している何とも言えない暗いジメジメとしたオーラ……。
俺を見つめる青い目と黄金色の目……その2つのとても綺麗な瞳は、しかし同時に妖しく輝いて見える。
俺はもうこれ以上耐えられなくなり、慌てて屋敷の扉を開け放つ。
そして、大急ぎで俺はその場から逃げるように道を駆け出すのであった。
アリスとミレーヌから逃げ出し、街の中心部へと続く道を足早に歩きながら、
俺は打開策を必死に考えていた。
帝国兵がこのまま街にいると、非常にマズイことになる。
アリスとミレーヌが帝国兵と接触したら最後……。
避けがたい戦端が開かれてしまう。
むちろん、彼女たちの今の実力ならば、帝国兵の小隊など即時に殲滅してしまうだろう。
が……問題はその後だ。
俺は帝国から第一級のお尋ね者になる。
彼女たちが争う相手が個人ならばまだマシなのかもしれない。
相手が組織ではなく、単なる個人ならばいくら実力がずば抜けていてもなんとでもなる。
その一人の人間を排除してしまえば、基本的には問題は解決する。
そして、恐らくアリスはこの世界の人間の中では……いや生物の中ではもはや世界最強なのかもしれない。
だが……相手は——帝国は——組織であり、この大陸で最大規模の国家だ。
彼らは無数に……数千万人……下手をすれば帝国傘下の領域の人口規模は一億を超えるだろう……いる。
そんな彼らと争っていたらキリがないし、俺はアリスやミレーヌと違って、強者ではない。
要するにこの大陸の支配者である帝国から狙われるということは、もはやこの世界に俺の安住の地はなくなってしまう。
FIREをして、悠々自適の田舎暮らしどころではない。
いつも後ろを気にして、ビクビクと生きていかなければならない。
それだけはなんとしても避けなければならない。
つまるところ、俺は可及的速やかに帝国兵たちを説得して、この街からお引き取り願わなければならない。
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