社畜のオッサンがモブ悪役(奴隷商人)に転生したら、ゲーム知識を利用して、ヒロインたちを最強に育成するわ、無自覚にヤンデレ化させるわで、いつのまにかストーリーをへし折りまくっていた件。
第42話 主人公からヒロインを闇落ちさせたと詰められる
第42話 主人公からヒロインを闇落ちさせたと詰められる
どうやらミレーヌが屋敷にやってきたらしい。
だいぶ慌ただしい感があるが……。
アリスは大きなため息をついて、
「またあの子……ミレーヌなの。こないだどちらがご主人様の正妻にふさわしいかはっきりと示したはずなのに、まだ懲りないのかしら……」
と聞こえないくらいの小言をつぶやく。
「ご主人様、大変申し訳ございません。ミレーヌと少し戦闘を……いえ話し合いをしてきますので、少々お待ちください」
アリスはそういうと、玄関の方に行ってしまう。
アリスとミレーヌは最近いつもこんな調子だ。
昔はいつも一緒にいて本当に仲の良い親友同士だったはずなのだが、今ではかなりの隔たりがある。
やはり種族の違いというのは大きいのか……と少しさみしくなってしまう。
子供の内は、そういうことは気にならないが、大人になるとどうしても意識するようになる。
アリスが亜人種に対して差別意識をもっているとは思えないが、無意識の壁みたいなものはあるかもしれない。
現実は小説や漫画と違ってうまくはいかない。
俺も転生先でチート能力で、美女たちに囲まれてハーレムライフを送るどころか、この有様だしな……。
今も俺の目の前には、苦い現実が立ちはだかっている。
そう美しい少女が心底俺を嫌悪しているといった目つきで俺をジトーっと見ているのだ。
俺はルシウス……いやルシアと二人っきりになり、なんとも気まずい雰囲気になっていた。
「え、えっと……名前はルシウスではなくて、ルシアというのか?」
しばしの沈黙の後で、
「ルシア……というのがわたし……ごほん……僕の本当の名前……ルシウスは仮名。その方が色々と都合がよかったから」
と、ルシアがぼそりと言う。
「そ、そっか……」
ルシアの表情は相変わらず暗く、重々しい。
ゲームでは田舎出身の世間知らずの天然キャラではあるが基本的に快活……といういかにも主人公らしい性格であったが、今はまったくそういう素振りはない。
こちらの方がルシアの素なのかもしれない。
こうして女性の姿でいるのもだいぶ様になっているしな。
と、俺がルシアのメイド姿をしげしげと見ていると、
「あ、あなたは……僕にこんな格好をさせて……何をさせるつもりだ。アリス姫にもこんな卑猥な姿をさせて……げ、下劣な行為をさせていたのか」
ルシアは、顔を朱色に染めて、両手で体をかばう。
その体もわずかに震えていた。
どうやら俺は完全に誤解されているようだ。
まあそれも無理もない。
ルシアが身につけているメイド服は、アリスがいつも着ているものと同じである。
つまり、かなり扇情的なデザインなものとなっている。
が……言い訳をさせてもらうと、このメイド服を作ったのはもともとは俺ではない。
いや俺ではあるのだが……まあ要するに俺が転生する前のライナスが作ったものである。
女性用の服がこれ以外に何もなかったから、しかたなく俺はアリスにこのメイド服をあつらえていたのだが……。
当初は嫌がっていたアリスも今ではなぜかこのメイド服をえらく気に入ったらしい。
俺は再三アリスに普通の格好をするように何度かそれとなく促しているのだが……。
アリスは今でも頑なにこのメイド服を着ている。
成長してサイズが合わなくなってからも、このデザインで出入りの業者に何着も仕立ててもらっているくらいだ。
それにしても、このメイド服は、そもそも今のアリスの身体に合わせたものだから、ルシアにはサイズが合わないはずだが……。
意外とルシアにもだいぶフィットしているな……。
先ほどはそれどころではなかったからよく見ていなかったが……。
ルシアはだいぶ着痩せするタイプ……いやかなり女性らしい身体つきをしているな。
と、俺は思わず目線がメイド服から覗くルシアの胸元にいってしまい——。
「や、やっぱり……あなたはそういう目的で……アリス姫を……そして、ぼ、僕を……」
と、ルシアは、ますます俺を警戒する。
「こ、これ以上近づかないで……た、たとえ奴隷紋が縛ろうとも僕はあなたのいいようにはされない。アリス姫を下劣な行為で闇に染めたあなたなんかに——」
ルシアは目を潤ませながらも、毅然と俺を見る。
「いや……別に俺はアリスには何も——」
「何もしていない訳がない! アリス姫は慈愛に満ちた美しく可憐な女性だったんだ! それなのにあんなにも闇に堕ちてしまうなんて……いや何よりもあの力は——」
と、ルシアはそこで何かを思い出したかのように、体をブルブルとすくませる。
どうやらルシアはアリスの力に対してよほどの恐怖を感じているらしい。
まあ……初期レベルの序盤でいきなりラスボス……いやラスボス以上か……と遭遇したら、トラウマものになるのは当然か。
俺はしばらくルシアのことを黙って見ていた。
と、ルシアは俺の方をきっと睨んで、
「いったいあなたはアリス姫に何をしたんだ……」
と、言う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます