社畜のオッサンがモブ悪役(奴隷商人)に転生したら、ゲーム知識を利用して、ヒロインたちを最強に育成するわ、無自覚にヤンデレ化させるわで、いつのまにかストーリーをへし折りまくっていた件。
第41話 ルシウス……あらためルシアから睨まれる
第41話 ルシウス……あらためルシアから睨まれる
せいぜい一時間ほど寝る予定だったが、予想以上に疲れていたのか、たっぷりと寝てしまったらしい。
俺は、大きな伸びをして、窓の外を見ると、外は既に明るくなりはじめていた。
どうやらほとんど丸一日寝ていたらしい。
やはりいろいろと俺は疲れ切っていたのだろう。
寝ぼけ眼で、部屋を出て、1階へと降りる。
おそらくアリスは1階の書斎にいるのだろう。
アリスはそこでいつも一人書物を読んでいる。
それにしてもこの屋敷は広すぎるなとあらためて思う。
この屋敷に住んでいるのは今や俺とアリスだけなのだ。
というかつい最近まではミレーヌも居住していたのだが、先日アリスが、ミレーヌを追い出してしまったのだ。
それ以来、アリスとミレーヌの関係はだいぶ険悪なものになっている。
アリスの言い分としては、ミレーヌがいると屋敷の人口密度が高くなりすぎるというものだったが……。
実際、確かにミレーヌは、仲間のケモノ娘たちを屋敷に呼ぶことも多かったし、そのまま屋敷に泊まることも多かった。
彼女たちも成長してもはや子供という訳ではない。
はたから見れば明らかに一人の女性なのだ。
だから、もう今までどおりに俺の部屋で雑魚寝をする訳にはいかなくなっていた。
そういう訳で、ミレーヌは屋敷近くの今のエリアに引っ越しをしてもらったという訳だ。
が……いなくなったら、いなくなったで、今度はこのがらんどうな空気もどうかと想ってしまう。
特にアリスと屋敷で二人っきりかと思うと色々と緊張を強いられる。
なにせアリスは普段は無口だし、俺は嫌われているから、あまり話しかけることもできない。
時折どこからか姿を見せては、無表情で俺のことを見ている……という感じなのである。
それを考えると、今日……いや昨日のアリスは妙に饒舌だった……いつもああいう感じならば俺も楽なのだが……。
俺がそんなことを思いながら、書斎の扉を開けると、予想通りアリスがいた。
俺も本が嫌いという訳ではないが、アリスは俺以上に本好きだ。
まあ……もともと王族であったから、知的好奇心が強いのだろう。
気がついたら、この書斎にはありとあらゆる書物があふれかえることになった。
一応俺の書斎ということになっているが、実質はアリスの書斎といった方がよいだろう。
メイド服を着て、本を読んでいる姿は一見すると違和感を覚えるはずだが、アリスの知的な雰囲気がそれを相殺しているのか、むしろ場に非常に馴染んでいるように見えた。
「ご主人様……目覚められたのですね」
そう小首をかしげて、俺の方を見て、微笑する。
やはり……なぜか不明だが、アリスは明らかに機嫌がよい。
俺はアリスの美しい顔を見ながら、そんなことを思っていた。
これなら……先ほど有耶無耶になった俺の逃亡……いやアリスたちの解放の話もうまくいくかもしれない。
と……そこに本棚の影からひょこりと少女が現れる。
少し茶色のショートヘアで、アリスと同じくメイド服を着ている。
アリスより少し幼いが、美貌のレベルはアリスに匹敵する。
俺の顔を見て、気まずそうに顔をそらしてしまう。
おや……と俺は当然のように疑問に思う。
この屋敷にはアリス以外のメイドはいない。
そもそもアリスは自分以外の人間がこの屋敷にいることを基本的に嫌う傾向にある。
「えっと……彼女はいったい?」
「ああ……この者は先程の——」
そう言うとアリスは、少女の方を向く。
ショートヘアの少女は、無言のまま俺のことを睨んでいる。
俺がその視線に戸惑ってると、アリスが少女の方を見て、咳払いをする。
と、少女は体をビクリと震わせて、
「も、申し訳ございません……あ、アリス様……」
と、大仰に顔を下げる。
「謝る相手はわたしではないです。さあ……寛大なるご主人様にまずは命を助けて頂いた礼をしなさい。それともまだ躾がたりないのかしら……ルシウス……いえルシアだったかしら?」
「ひ!! も、申し訳ありません!」
少女は心底アリスのことを恐れている様子で、いちいちアリスの一挙手一投足にお
びえているように見えた。
うん!? って……この少女はルシウスなのか!?
いや……でもルシアって——。
「……先ほどは大変なご無礼を働いたにもかかわらず……その……助けて頂いてありがとうございます」
と、少女は言う。
どうやら目の前の少女はやはり、ルシウス……いやルシア……とにかく先程の主人公らしい。
名前もそうだが、だいぶ印象が変わったな。
こうして普通に女性の服を……いやメイド姿になると、どこからかどう見ても女性……とても可愛らしい少女にしか見えない。
が、ルシアのその言葉は棒読みであり、どう見てもアリスに無理やり言わされているといった様子だ。
まあ……全裸にして奴隷にしているのだから、恨まれるのも当然か。
どうしたものかと反応に困っていると、外から大きな声が聞こえる。
「アリス! いるんでしょ! ミレーヌよ。重要な話があるから出てきなさい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます