社畜のオッサンがモブ悪役(奴隷商人)に転生したら、ゲーム知識を利用して、ヒロインたちを最強に育成するわ、無自覚にヤンデレ化させるわで、いつのまにかストーリーをへし折りまくっていた件。
第28話 ケモノ娘たちを奴隷にして稼いできたから恨まれるのは当然か……
第28話 ケモノ娘たちを奴隷にして稼いできたから恨まれるのは当然か……
本来であれば、戦争で得た奴隷は帝国内で利用するのが通常ではあるが……ここには帝国特有の事情がある。
帝国はその成り立ちからいって、亜人種を迫害……いや嫌悪している。
そのため、亜人種については、帝国内では奴隷としても需要がない。
もっとも、それは表向きの話で、実際にはあまり言葉にしたくない様々な需要があるのだが……。
人間というやつは、見下したり、蔑む対象にたいしても容易に欲望を抱くことができる。
そう……実に矛盾した生き物なのである。
そうした人間の特徴はここでも何ら変わりはない。
それはさておき、そういう訳で帝国内では戦争で捕らえた亜人たちを公式なルートでは売る手段がない。
だから、リスクを抑えるならば、帝国外で亜人奴隷を売る必要がある。
その買い手が帝国と国境を面するこの辺境の街に住む奴隷商人こと俺という訳だ。
要するに、帝国軍があちらこちらの街で略奪をした際に捕らえてきた亜人たちを俺に売っているのだ。
奴隷のほとんどが女性なのも、それが理由である。
男は略奪の際に、子供であっても容赦なく殺されてしまう。
本来であれば、亜人については女性であっても、奴隷として捕らえることすら帝国では禁止されているらしい。
前世で言えば悪名高きサーチ&デストロイ(索敵殲滅)作戦を帝国軍は取っているのだ。
が……上がどんなに声高に命令を下しても、得てして末端までは徹底されない。
帝国兵が博愛主義者……という訳ではもちろんない。
彼らとしては、殺すより捕らえて売った方がよいという単純な損得計算なのだろう。
下っ端の現地兵の給金など帝国であろうとも、すずめの涙程度だ。
他方で、他国であれば亜人であろうとも、若い女性の奴隷は高く売れる。
彼らが余程の亜人嫌いでなければ、どちらを選ぶかはおのずと明らかである。
さて、俺の商いも仕入れまでは他の奴隷業と同じである。
が……そこからが少しばかり異なる。
俺は仕入れた奴隷を客に売らない。
奴隷は俺の手元に残す。
商売でいえば、商品の在庫を抱えたままどう儲けるのか。
答えは単純で、奴隷たちに働いてもらうのである。
だが、何ら秀でた能力がない若い女性が簡単に金を稼げるほどこの世界は甘くない。
だからこそ通常、女性の奴隷に対する需要はご想像のとおり一点に限られているのだ。
が……俺は別にここで娼館を運営している訳ではない。
ここ以外の住民にはそのような誤解を招いてしまっているが……。
言うまでもなく俺もまた別に博愛主義者や良い人ではない。
俺はいたって普通の人間……つまり帝国兵と同じである。
正しいことをしたいと思ってはいる。
思ってはいるが……大抵は損得勘定で行動する。
要するに彼女たちを娼婦として働かせなかったのは別に罪悪感や善意が理由ではない。
単純にそれより良い……稼げる方法があったということだ。
俺にはこの世界——ゲーム——の知識がある。
アリスのレベリングにも利用した知識が……。
俺はこの知識を利用して、彼女たちのレベリングにも勤しんだ。
奴隷として高く売ろうとした帝国兵の目利きのおかげか、彼女たちは若くて美しいという特徴はある。
が、戦闘面においてさしたる才能はない。
しかも、彼女たちはかなり乱暴に扱われていたのか、はたまた環境が劣悪だったのか、俺の前に現れる時には瀕死の状態だった。
だが、奴隷紋を刻めば、怪我は治る。
それに天性の才能がなくとも、レベルを最大限まで上げれば戦闘能力は向上する。
数年もしないうちに彼女たちは見違えるように変貌した。
そうここでも俺の悪癖……レベリングのやり過ぎ……が出てしまったのだ。
今俺の周りにいるケモノ娘たちは一見すればとても愛らしい少女たちだ。
だけど、実際の彼女たちはそこらに出現する魔獣などよりもはるかに強い。
そして、より一層問題なのは……彼女たちはアリス同様に、俺に対して並々ならぬ感情を抱いているのだ。
「フフ……いつも側にいるアリス様もいない……。ライナス様一人だけ……絶好のチャンス到来……」
「ああ……ライナス様……今日こそは逃がしませんよ。わたしがどれだけこの時を待っていたか……」
その可愛らしい出で立ちとは正反対にケモノ娘たちの目はまるで極上の獲物を見つけたかのように爛々と光っていた。
俺は思わず身の危険を感じて、後ずさりしてしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます