社畜のオッサンがモブ悪役(奴隷商人)に転生したら、ゲーム知識を利用して、ヒロインたちを最強に育成するわ、無自覚にヤンデレ化させるわで、いつのまにかストーリーをへし折りまくっていた件。
第27話 貧民街でケモノ娘たちに取り囲まれる
第27話 貧民街でケモノ娘たちに取り囲まれる
たしかに俺の笑顔は偽りだ。
だが、話したことは嘘偽りはない。
俺には獣人に対する偏見はない。
それは真実である。
だが、得てして人は言葉ではなく、その人物の態度や表情で真贋を判断する。
だから、俺はコミュニケーションが苦手なのだ。
そうだ……思い出した。
俺がこれらの属性の者たちを苦手とする理由がもう一つあった。
それは、相手の事情に関わらず常に俺が悪者になることだ。
今でいうと、俺は傍目から見ると、猫耳の幼女を泣かしている目つきの悪いオッサンということになる。
となると、当然——。
「なになに……どうしたの?」
と、周りにいる者たちが怪訝な顔を浮かべて近寄ってくる。
……そう……こうなるから苦手なんだ。
前世でも俺は休日に公園で一人でベンチに座っていたりすると、まわりの家族連れから警戒がちな視線を受けたものだ。
そして、迷子になっている幼女を意を決して助けようとしたら、即事案発生である。
……今のように——。
ただこの場所ではまた別のより厄介な問題が発生してしまうのだが……。
「おい……お前この子に何のようだ? いや……そもそもお前まさか……人族か?」
と、俺は後ろから肩に手をかけられる。
見ると、背丈が俺より10センチほど……いやフサフサのうさ耳をいれると20センチほど……高い女性が仁王立ちしていた。
うさ耳女性は鋭い目つきで俺を睨む。
うん……完全に不審者扱いだな……これ。
しかもまた……苦手な属性てんこ盛りか……。
まあ……目つきは別として顔はやはりここの住民だけあって、かなりの綺麗な部類ではあるが……。
いやそれより……どうするか。
こうなるともう彼女たちに見つからずに屋敷に戻るのは無理だな。
俺が心の中でため息をついていると、
うさ耳美女の顔がどんどんと険しくなり……いや顔が青くなっている。
はあ……気づかれてしまったか……。
「……ら、ライナス様……こ、これは……し、失礼いたしました!」
平身低頭に頭……プラスうさ耳をピョコピョコと下げる。
それを猫耳幼女が横目に見て、顔をぷるぷるとさせて、ますます泣き声を上げる。
「うあぁぁん……ごめんなさいぃぃ……」
……なにかカオスな状態になってきた。
その様子を見て、周りの耳目がますます俺に注がれる。
「え……あれって……ライナス様じゃないの?」
「あ! ライナス様だわ!」
気がつけば、周りにいる人々が続々と俺の周りに集まってくる。
俺はすっかりと周りを人々に……いや女性たちに取り囲まれてしまった。
といっても人族の女性ではなく、亜人種の獣娘たちだが……。
うさ耳、猫耳、狐耳といった多種多様な亜人種の人々がいる。
が……そのすべては女性である。
そう……こうなるのが嫌で俺は人目を忍んでいたのだ。
幸か不幸かこの貧民街では俺は人々から嫌われてはいない……表面上だがな……。
まあ……逆にそのせいで、街の権力者たちからの評判はすこぶる悪いのだが……。
彼らからすれば、ここにいる人々は善良な市民ではなく、流民……さらに亜人なのだからな。
さて……本来ならば忌み嫌われる奴隷商人である俺が何故ここでは慕われている……ように見えるのか。
そして、ここの住民たちはなぜ獣娘たちばかりなのか。
もちろんそれらには理由がある。
俺が嫌われていないのは、単純な話で、俺が彼女たちの生活の面倒を見ているからである。
もっとも、面倒といっても俺は最低限の衣食住しか与えていない。
しかも、別に無償の施しをしているわけでもなく、それ相応……いやかなりの代価を彼女たちに払ってもらっている。
俺を取り囲む女性たちの身体には馴染のある紋様が例外なく刻まれている。
そう……この貧民街にいる女性たちはみな俺の奴隷だ。
では、奴隷たちがなぜこの貧民街で生活をしているのか。
それを説明するのは少しこの世界の奴隷業というものがどんな商売なのかについての補足がいるだろう。
通常、この世界の奴隷業は、扱う対象が人というだけで、それ以外は他の商品と同じような流れを経る。
つまり、商品——奴隷——を仕入れて、客に売買する。
その仕入れ値と客への販売価格の差が奴隷商人の利益になる。
仕入先は商人によって千差万別だが、俺の場合は戦争奴隷が大半であった。
これはこの街が位置する場所が主な要因である。
俺が拠点としているこの街は帝国の国境近くにある。
そして、帝国は目下領土拡大の野心を抱き、近隣諸国への侵攻を繰り返している。
ちなみに俺が所属する小王国は既に帝国への恭順を示しており、一応は独立の体裁を保っているが、実質的には属国に近い。
そういう訳で、最大の仕入れ先は、ここ最近、他国への侵略を繰り返している帝国軍である。
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