社畜のオッサンがモブ悪役(奴隷商人)に転生したら、ゲーム知識を利用して、ヒロインたちを最強に育成するわ、無自覚にヤンデレ化させるわで、いつのまにかストーリーをへし折りまくっていた件。
第18話 アリスサイド01——光属性のアリス姫が闇落ちした理由——
第18話 アリスサイド01——光属性のアリス姫が闇落ちした理由——
王都が帝国によって陥落し、自分の生まれ育った街と民が蹂躙されている時……
わたしはただ黙ってその惨禍を見ていることしかできなかった。
母上と父上が王都の広場で帝国の下賤な輩に辱められ、殺されている時ですらわたしは……。
わたしは地下水路から地上を仰ぎみて、ただ涙を流して、見ていることしかできなかった。
わたしは生きのびるために……ルーンホールド王国を再興するために、泥水をすすってでもこの命を繋ぎ止めると誓ったのだ。
わたしの命はわたしのためにあるのではない。
王族として、王家の血を引くものとして、わたしの命は王国に帰属する。
だから、勝手に命を絶つことなどできない。
でも……わたしの本心は違っていた。
わたしのために、民が……生まれた時から一緒にいた仕えの者が……近衛の者が無惨に死ぬところなどもう見たくなかった。
そして、同時にわたしの心のどこかでは諦めていたのだ。
帝国に抗い王国を再興するなど、とても不可能なことだと……。
同時に自分に負わされていたその重みと責任に押しつぶされそうになっていた。
わたしの命にそこまでの……みなを犠牲にしてまで生き残る価値があるのだろうかと。
だから、わたしはあの時……森の中で、野盗に襲われたあの時……。
野盗の短剣が自分の脇腹をえぐり、鋭い痛みが走った時……恐怖とともに、どこかで安堵もしていた。
これで……わたしは父上と母上のところに……城のみんなのもとにいけるのだと。
けれども、女神はまたもわたしの望みを叶えてはくれなかった。
わたしは、目覚めてしまった……死ねなかったのだ。
目覚めた時、不思議なことにあれほどの重症を負ったにも関わらず、体の痛みはなく、傷跡すら治っていた。
周りの景色も様変わりしていた。
大きなベッドに、石材で出来た豪奢な調度品の数々……。
王族とはいかないまでも、どこかの貴族の邸宅の一室のようであった。
わたしは安堵と後悔が入り混じった感情を抱いた。
だけど、それも一瞬のことであった。
自分の体をあらためた時に、奇妙な紋章を見つけてしまったからだ。
それは一目瞭然だった。
忌まわしき奴隷紋がわたしの体に刻まれている。
わたしはその時、生まれてはじめて女神を呪った。
おそらくわたしはあの後で、野党に捕まったのだろう。
そして、奴隷商人に売られた。
致命傷に見えた傷をどうやって治したのかはわからないけれど……。
いずれにせよわたしは死ぬことができなかった。
そして、今後奴隷として生きていかなければならない。
王族の……女のわたしが奴隷の身分になる……それがどういう結末になるのか……。
帝国に侵略され、滅んだ王国の王族たちの末路を見て、よくわかっていた。
これも父上も母上も民も近衛の者も見捨てて生き延びようとしたわたしに対する女神の罰なのだろうか……。
わたしはひとしきり一人泣いたあとで、少しばかり冷静になった。
そして、ある決意を固めた。
わたしを奴隷にした忌まわしき男……その男がわたしの視界に現れた瞬間……。
わたしはその男を殺す。
そして、わたしも命を落とす。
自死することは奴隷紋の影響でできない。
だが、主人が死ねば、奴隷も死ぬ。
それに、失敗しても、どうせわたしは命を落とすことになる。
主人に対する攻撃……ましてや命を奪うような行動は、奴隷紋の効果により厳しく罰せられる。
わたしは自分が身につけている衣服を確認する。
幸いにもわたしの装備はそのままだった。
短剣もあった。
わたしはその事実に少しばかり首をかしげた。
普通、武器の類はまず没収するはずなのに……。
相手はよほどの間抜けか、あるいは、わたしが女……しかもまだ幼いゆえに油断しているのだろう。
好都合だ。
わたしは女だが、剣の嗜みがある。
王族の女が剣の稽古をすることをお父様もお母様も呆れ顔であったが、
結局わたしのワガママを許してくれた。
それがまさかこんなところで——わたしの人生の最後に——役に立つことになろうとは……。
お父様……お母様……近衛のみんな……お許しください。
わたしは帝国の皇帝に復讐の刃を突き立てることは出来ませんでした。
ですが……ルーンホールドの王族として恥辱に塗れ、生きながらえることはしません。
わたしはここではてます。
ーーーーーーーーーー
アリスの過去編(アリスとライナスの出会い編)を数話投稿します。
ヤンデレ化前のアリスをお楽しみください。
その後、ライナスサイド(現在)に戻ります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます