地元住民インタビュー記録2
やっぱりねえ、知らない方がいい事ってあるじゃないですか。
別にお兄さんに調べるなって言ってる訳じゃないですし、私も同じような事をしましたから何か言えるような立場ではないんですけど。
いつまでも病室の前に立っててもあれだからこっち来て座りません?
私の知り合いが県内の大学でオカルトサークルに所属してたんですね。まあ本格的に何かの儀式をするとかそんな感じではなくて、どこかの適当な曰く付きの山とか廃墟を選んで肝試しついでに呑みに行くってタイプの緩い小規模なサークルだったんですけどね。
その日は先輩が話してた地元にあるって言う廃屋にメンバーの何人かで行くことになって、彼女は免許持ってないのでお酒と食べ物買ってその先輩の車に乗せてもらったんです。
車の中には先輩の他に2人乗ってて、目的地に着くまで雰囲気を出そうって事で全員で1つずつ怖い話をしていったんですね。それで先輩の順番になって、その話ってのが今車で向かってる廃墟の話なんですけど、そこには昔父親と母親と娘さんの3人で暮らしてて父親が寺か神社かの人だったみたいで、地元の人からも慕われてたようなんですけど、ある日から全くご飯を食べなくなったらしくて、無理矢理に食べさせてもその場でゲーゲー吐いちゃう。当然どんどん痩せて、見た目も骨と皮だけで、それなのにお腹だけ異様に膨らんだ醜い姿になって、それでその旦那さん、奥さんと娘さんを残して失踪したらしいんですね。
数日経って近所の人が旦那さんが家から近い山の中で倒れてるのを見つけたんですけど、その死体が変で、片腕と片脚に沢山の小さい手形みたいな痣が付いてて、山奥まで引きずられて半身がボロボロに削れていた。ってとこで終わりなんですけど
まあ、よくある怖い話ですよね。
やけに詳しく家族の、特に旦那さんの話が出るのに、残った奥さんと娘さんのその後とかは全く出てこない。でも今向かってる場所だってこともあって大分雰囲気あったでしょうね。
それからしばらく車は街灯も少ない山道を進んで、ある程度登ったとこで車を停めて先輩がここからは歩こうと言うんですね。
細い山道の横、知らない人なら日中でも見つける事は難しいだろう獣道みたいなのがあるんですよ。懐中電灯で足元を照らしながら登っていくと先の方が開けていて、そこにちゃんとあったんですね、廃墟。
ただ、放置されてるとはいえ造りが結構新しくて、せいぜい築20年とか先輩の話で古い家だと思っていたから拍子抜けしちゃって、とりあえず2人が外で見張りをして、先輩と彼女の2人は家の中を見て回ることにしたんですね。玄関は鍵がかかってるから窓割って入ろうとしたみたいなんですけど、内側から段ボールか何かが貼られててガラスが割れても入るまでは行けなかったみたいなんですよ。見張りの2人も呼んで押したり叩いたり色々やってみて結局中に入ったらしいんですね。
家の中は埃だらけだけど、家具なんかはそっくりそのまま残されてて、まあ要は丁度よく雰囲気出てたって事なんですけどね。そこで持ってきた酒を居間のテーブルに置いて皆それ囲んで適当な怖い話したり記念写真撮ったりめちゃくちゃしてたんですね。
そろそろ1本終わるかって時に1人がトイレに行くって立ち上がったんだけど、立った瞬間カクンって膝が折れてそのまま倒れちゃったんですね、酔ったのかと思って立たせようとするんだけど右足だけバタつかせて左が全く動かない。というか左半身が麻痺したみたいに力が抜けちゃってて、脳梗塞にでもなっちゃったんじゃないかって心配になって不法侵入した事なんか忘れて救急に電話したんですね、ただ距離があるから10分待っても来ない、どうしようと半ばパニックになってると急に四方八方の窓がバンバン叩かれ出したんですね。それが救急隊じゃないことぐらいわかるから恐怖は半端なものじゃないと思いますよ。
そこで彼女思い出したんですね、窓の1つは自分たちで割った事、その窓の方を見ようとすると先輩が言うんですね。
「入ってきた」
何が、誰がと聞いても真っ青な顔してそれ以上教えてくれない。
バンバン音が聞こえる中4人でガタガタ震えてると遠くの方からサイレンの音が聞こえて来て安堵したのも束の間、彼女の左耳に息がかかる距離で
「へずれる?」
男の声がしたんですって。
まあこれで話は終わりなんだけど、お兄さんどうせ調べるでしょう?この話は色んなとこに嘘が混ざってますから全てを鵜呑みにしない方が宜しいんですけどね、これ、お兄さんに差し上げますよ。
破かれてたりはしますけどね、一応は読めますから。
お兄さんの探してる関谷って人、あれは関わらない方がいい類のものですよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます