関谷教授の日記より抜粋(本人による加筆がある)
1993年3月14日
娘が産まれた。
妻の地元に家を建てて2人で幸せに暮らしていた。これからは3人きっともっと幸せに過ごせる。
(この頃妻は何かを恐れるような仕草を見せるようになった。
何を恐れていたのか僕には分からなかった。)
1994年1月6日
娘が喋った。
「りえ」
妻の名前だ、てっきり「まま」「ぱぱ」と言うものだと思っていたのに驚いた。
(娘を抱き泣き崩れる妻を横目に僕はそんな事を考えていた。)
1994年2月4日
僕の職業柄、この地域の文化や信仰を調べる事にした。
昔から伝わる祇園祭。
他の地域と異なる文化がこの地域の祇園祭には混ぜ込まれているようだった。
飢饉の際の姥捨山のような文化がそのまま祭事の形に取り入れられている。
疫病退散の祭りに生者を殺すのは祭事でもなんとも悪趣味だ。
何百年と続いていたらしいがここ数十年の間に起きた何かによってこの文化は失われつつあるらしい。
その何かを聞こうとしても住民は詳しく話してくれない。
2004年4月18日
妻に離婚を切り出された。
突然の出来事に頭が回らない。
仕事に熱中して家庭を疎かにした報いだろうか
(僕はついに理由を尋ねる事は出来なかった。
理由を知る事が恐ろしかった。
思い返せば人では無い何かの気配を背筋に感じた気がした。
長く一緒に過ごしたんだ。
涙が止まらなかった。)
2007年 6月8日
家族で暮らした土地から遠く離れても尚あの地域に執着しているのは何故だろう。
まだ解明できていない文化への探究心からだろうか、それとも家庭への未練か、僕には分からない。
(結局今もそこへ訪れている。)
2011年7月15日
今日、妻が死んだ事を知った。
行方不明時の服装がおかしい。
何か土地ぐるみで妻の死に関係があるのでは?
(あの日感じた何者かの気配は妻に、私や娘に絡み付いている)
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