××月間記者 山本 慎也氏のカセットテープ
あー 、撮れてるかなこれ。
えっと、僕は山本と言います。雑誌の記者をやらせてもらってます。
なんでこんな音声を撮ってるかと言いますと、僕多分自殺するからですね。
もうね、耐えられないんですよ。
音ってのがこんなに怖いとは思いませんでした。
先日、ある事故で亡くなった女性の娘さんに取材をしたんです。
娘さんからは色々な話を聞きました。家族の思い出や生前のお母様の様子。
ただ、そういう話の所々にかなり突飛で非現実的な、いわばオカルトな話が混ざってるんです。
お母様の作った人形が話しかけてくるとか、夜になると戸が叩かれるとか。
なかでも異質だったのは話しをする時、ずっと耳を塞いだり、急に変な声を出してみたり。
僕は彼女の家で取材させてもらったんですけど、
「声が聞こえる」と。
捨てられた人の声が聞こえると生前の彼女のお母様も言っていたそうです。
初めは彼女も相手にしていなかったそうですが、お母様が亡くなられてからその声が聞こえると言ってました。
なんでもお母様の遺体が見つかった山は、大昔に口減らしで子供が捨てられてた場所のようで、当時まだ村だったこの場所では夜中に子供たちの声や視線を感じたり、行方不明になったりの事件まで起きていたらしいんです。
それで村では子供たちを鎮めるために元からあった祭りに鎮魂の儀式を織り交ぜるようになったと。
僕はオカルトとかそういうのを信じないタチなんですけど、土着信仰とかそういうものは好きな訳で、もっと知りたい。調べたいって思ったんです。
それで個人的に地元の方にインタビューして回って、もう一度彼女にも話を聞きに行ったらお父様が地域の研究されてた方ってことが分かったんです。
で、お父様の痕跡を辿ってた訳なんですけどね。
聞こえちゃったんですよ。すぐ耳元で囁くように、何か言ってる声や、部屋に居る時には扉や窓を叩く音、壁を引っ掻く音とかが。
もうずっとずっと聞こえてくるんですよ。
娘さんの言ってたのはこれかぁ、
毎日毎日、ずぅっと、寝れたもんじゃない。
まぁそんな訳でもう耐えられないんです。
僕が取材した記録とか、お父様のノートとか残しとくんで出来たら後を継いで欲しいな、なんて。
あ、ちょっと宅配来たっぽいんで、
ピンポン付いてんだから扉叩くなよ、、、。
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