第13話


【お兄様の女性の理想姿は、金髪碧眼の筋肉質の美女であっていますか?】


昼休みに小雪から俺宛でメッセージが来ていたので【もちろん】と返しといた.。




「この服買いたい…」

俺はショーケースに飾ってある服を眺めながら反動で衝動買いしたくなるのを抑える。



なぜ今日に限って英語の小テストや地域貢献についての発表なんかが立て続けにあるんだ...精神的に疲れすぎて余計、欲望が抑えられなくなるだろ。



それに加え、放課後になっても「メガロニカやりたい!」と遥斗が騒ぐのをなだめるために高校から遠い駅前のクレープ屋にライと暑い日差しが照り上げている中、立ち寄ったのが今になって効いてきている。




それにタイミングが悪かったんだろうな。


昨日、ログアウトした時はショーケースの中身は俺の感性を揺さぶる服はなかったはずだ。それに値段の張り紙には新作コーデと追加で明記されているから出来立てほやほや服だと分かる。



…思ったより高い。


「ん~」


普段ならこんなに悩まないが、機体をカスタマイズしようと貯めていた俺には痛い出費となるだろう。



「むむっ」

だが!諦めきれない。


貴族を思わせる高貴な色合いの騎士服。ジャケットに金のチャーンが肩から胸にかけて付属して、カッコよすぎる。何よりスカートはチュールスカウトでふんわり感があり、上の堅苦しさを絶妙に緩和しているのが…



「お姉様…店の前で突っ立っていると店にご迷惑をかけますよ」


「え?」



この声は…小雪?


反射的に声がしたと思われる場所を振り返るとそこには銀髪碧眼の少し大人っぽくなった小雪の姿があった。



「ど、どうしてここに?小雪」

俺は動揺して言葉遣いが乱れてしまった。



「ここでは小雪ではありませんよ。お・姉・様・」

「あぁ悪い。雪花」


俺は事前に聞かされていたニックネームを確認するため名前を言い直した。




「次から気を付けてくださいね」と注意されたが本当に気を付けなければならないと思ってしまった。


VRの世界はなにかと拡散力が高いので現実の名前なんて直ぐに広まってしまうからな。



「で、お姉様を見つけられた理由でしたっけ?」

「そうだな」


雪花はため息をつき


「初心者服を着たその性癖丸出しなアバターで一目見て分かりましたけど」と言われてしまった。



ムカッ。

なんか馬鹿にしたような態度だったので俺もそれに答えてやろう。




「それにしてもお前もずいぶん…」胸盛ったな



あ、危ない。


うっかり心の声が出そうになったのでぎりぎり俺の心の中に留めたが、俺が小雪最大のコンプレックスの胸の大きさを確認した不自然な視線に雪花は気づき目つきが変わる。



「…数年後はもう少し成長してこのようになっています」


ギラッ(#°Д°)





そんな風に服屋の前で雪花と戯れている中、チリン♪チリンと店の扉が開く音が響く。



そのドアベルの音に釣られ視線を移動すると緑エプロンを付けた丸眼鏡の険しい顔した女性が店から出てきた。


「あなた達!」



『うっ店の前に長居しすぎたか?』と思ったんだが次の瞬間、その考えは間違えだと気づかさせる。


こちらに向かってくる店の関係者らしき人は俺達の前に来て、一呼吸を取り「うちのモデルになりませんか!!」と叫んだのだ。



「は?」


俺たちは突然のことで言葉が出なかったが店から出てきた女性のマシンガントークが始まったためどうにも通行人の視線が俺たちに集まる。


「と、とりあえず店に入るか」


「…そうですね」






女性の名前は加藤さんと言い、俺達を服屋の休憩室に招き入れた。その休憩室は服や布が置かれて俺には少し居心地が悪いが。



「急にすみません。これ粗茶ですけど」

「…どうもご丁寧に」


雪花も普段このようなスペースに入らないため緊張しているのか少し硬いな。



シーン



おい…誰か喋ってくれ。この狭い空間にいるのが苦痛に感じてしまうだろう。


「ゴホン!それで貴殿は何用で私たちに話しかけたのだ?」


俺はこの場の空気を変えるために喋りだしたら…


「きゃあー(◍>◡<◍)✧♡」

ロールプレイの喋り方が気に入ったのか加藤さんは突如として奇声を上げた。



「そうですよね!やっぱり高身長の筋肉質の体育会系の女性って高圧的なしゃべりが似合いますよね!」


なんかうんうんと納得した様子で頷いている。



「それでもってズボンや男物の服はもちろん似合いますけど、休日に白いふんわりロングのワンピースを着る姿なんて想像したら」


想像したら?



「ご飯3杯はいけます」

真顔で言うことなのか?俺は困惑しつつ加藤さんが落ち着くのを待った。




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