第12話


キシャーーー!!


俺は蜘蛛型の[Cain]の攻撃を盾で受け止める。


「イノシシ型の[Cain]より質量はないな」

虫型だから軽いのか?



そう余裕ぶっこいていると…俺が立っている地面に影が差す。



「セイさん!上です」


異変を感じた俺は声を頼りに上を見ると、木の枝から蜘蛛の糸を垂らして敵が降って来ようとしているのを発見した。



「そこか」

俺は敵の着地点に先回りをしてタゲを取る。



バァァン!


そうすることで、俺が盾で横っ面を殴り吹き飛ばした敵を撃ち倒してくれるレオナルドに敵が襲いかかる心配もない。




…今ので最後か。


俺は後方を見て小型機が無事なのを確認する。


俺は今、レオナルドとパーティーを組んで絹の森に来ている。



なぜレオナルドとパーティーを組んでいるかと言うとお互いにソロでは強い[Cain]を討伐することが難しいと言う話が話題に上がって「一度試しにパーティーを組んで見るませんか」と誘われたのだ。



だから試しに森の浅瀬で狩りをして見ると、思ったより俺たちの相性がいいのか余裕を持って[Cain]を討伐することに成功した。



なので、時間が合う日は今日みたいに一緒に討伐依頼をこなしお互いお金稼ぎをしている。



「レオ、今日はここらで解散しよう」

キリもいいし、何より明日学校があるのでこれ以上遅くなるとまずい。



「はい!今日はありがとうございました(❁´◡`❁)」







「ふわぁ~」

眠い。昨晩も夜更かししてしまったからな。



「おはよーー!」

「!?」

ドンっと後ろからすごい衝撃が俺に伝わってくる。



「遥斗、暑苦しい…」

今年の雨期直前は、体感30°以上あるのではないのかと錯覚してしまうほど暑いのに遥斗がくっつくことによってより一層そう感じてしまう。



「えへへ。正志と登下校中に会うのが久しぶりだったから!うれしくなっちゃって」

俺は男子高校生にしては小柄な遥斗を引きはがす。



「今日はライと一緒じゃないのか?」

「ライなら…あっ」


俺達は炎天下の中、遥斗が置き去りにしたライを待つことにした。




「ライ!こっちだよ~!」


遥斗はぴょんぴょんと飛び跳ね自分のいる場所をライにアピールする。ライは暑さの影響か、いつにも増して険しい表情をしている。



「遥斗、俺の名前を公共の場で叫ぶな!」

「…おめぇも俺の耳元で叫ぶな」


ライは遥斗が走ってどこかに行ったため、いつもよりペースを乱して早歩きでこちらに来たらく苛立っていた。



ライことライザーは日本人とアメリカ人のハーフで、顔の彫りが深く黒髪碧眼の特徴を持ったわが校のスター的存在だ。



「あぁ。悪いな正志」

「まぁいいけど」



俺たちはそれから久しぶりに3人そろって登校した。



「涼しい~♪」

俺は教室がエアコンが効いていることに遥斗が小躍りしている姿を見ながら愚痴る。



「この暑さで学校に来る意味わからない。VRでいいだろう」

「VRの個別授業は、家の外に出ることも少なくなって体に悪いと思うぞ」



俺はライの正論を返せるほど元気がないので「そうだなー」と適当に返しとく。



そんな俺の様子を見た遥斗は心配したように「正志元気ない?」と聞いてくる。




「…ゲームのやりすぎで寝不足気味」

「なんだそれ」「なに!なに!なんのタイトルのゲーム?」



一人は呆れ、一人は興味津々の様子だ。



小躍りをしていた遥斗は興奮しているのか人目をはばからず俺の顔にぐいっとキスができそうなぐらい近づいてきた。現状、俺は自分の席に座っているから立っている遥斗は俺の顔に近づくのは簡単だろう。



俺はいつものことなが距離感が近いなとボーとしていたら顔を真っ赤にしたライが遥斗の頭を鷲掴みにして俺から遥斗を引きはがす。



「お前は!そんなんだから攻めとか受けとか言われて勘違いされるんだ!」

「痛った!ライ掴まないで~」



ライは今のように周りの女子達から「ライ様はやっぱり攻めよ!」とか「何言ってるの?これから押し倒されて「お、おまえなんか好きじゃない」の赤面ツンデレ受けでしょ!!」という言葉を言われ続けた結果、意味を薄々理解してしまった哀れな男子高校生だ。



うん?俺は理解しているのかという疑問は「もちろん」と言わせてもらおう。ファンタジー小説を読むうちにそう言う単語はでてくるからな。



「遥斗、別にゲームのタイトルを教えるのはいいけど今はできないと思うぞ」

「えっ」



俺は第二陣の抽選が終わってメガロニカのソフトが今は手に入らないことを遥斗に説明すると、遥斗はガーンと項垂れた。



だが…ここで終わらないのが遥斗だ。


遥斗はポケットからスマホを取り出し、誰かに通話を繋げる。



「あれ絶対に通話相手、父親だよな」

「そうだな」



俺は遥斗が手ぶりを使ってどれだけそのゲームがやりたいのかを通話相手に説得しているのを横目に小雪に見せてもらったゲームのPVのURLをメールに貼り付け、ライに送り付ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る