第14話


「つまり先ほど説明された宣伝動画に出てほしいと」

「そうです!」

鼻息荒いな。



加藤さんが言うには、生産組合に所属している店の商品をまとめてアピールするため、ビジュの良い役者を探してたんだとか。



「私は一目見てあなた達に惚れました。外見の良さもそうですけど、きれいな姿勢の立ち姿・高貴さを感じさせる雰囲気…まさに今回の撮影テーマ『お茶会』に相応しい!!」


すごいハイテンションだな~と俺は現実逃避をする。



ん?隣に座っている雪花が初心服の裾を引っ張ってきた。


俺は何か小言で話したいことでもあるのか?と思い雪花に顔を近づかせる。



こそっ

「お姉様帰りましょう」


雪花はこの話に興味がないのかめんどくさそうにそう言うが、俺もその意見に賛成だ。


なぜって?

それは学校紹介のパンフレットの撮影の時に学校のいろんなところを歩き回らされて疲れたからだよ。頼まれたとしても、もうやりたくない。



「そうだな」


そんな俺たちの心境をすばやく察した加藤さんは桁違いの出演料の額を紙に書いて提示する。


「これでどうでしょうか?」


うっ 


この金額…意見を変えて飛びつきたくなるが「これは桁を一つか二つ間違えていないか?」と一応の確認のため聞いとく。



…一応だぞ。


「ふふっ間違えてませんよ。私こう見えてもここの店主で店持ちですからね」


加藤さんは不敵な笑みを浮かべて言うので信じそうになってしまうな。




じゅるり(涎)

だがこの提示されたお金があれば結構のものを買えるんじゃないんだろうか?



「お姉様揺れてませんか?」


ギクッ


そんな邪な考えはマイシスターにはお見通しのようで、先ほどより強く俺の裾を引っ張り早くこの場から去りたいことを俺にアピールする。


だが加藤さんも負けてない。


「今ならなんと!この出演料+この店で気に入られた服をただでプレゼントします!」


的確に俺が欲しいものを提示してきたのだ。



そ、そんなもの…

「ぜひ出演させてほしい」


服とお金が欲しかった俺とモデルが欲しかった加藤さんの利害は一致した。



「お姉様…」

俺は隣で頭が痛そうに頭痛をこらえている妹にすまんと思いながら、加藤さんと話を進めていったのだ。








「宣伝動画はこの世界のカメラを使って発信させていただきます。そのカメラで撮った画像や動画は現実世界には持ち込み不可となっていますからね」



なるほど…現実世界のマネーが絡まないようにこの世界だけで済ませるためか。



「ちなみに加藤さんは宣伝動画を広めるためのパイプはあるのですか?」



パイプ…この世界で動画を発信するのには何か必要なのか?



「もちろん。メガロニカテレビ局には何度か生産組合名義で動画を出させてもらっています」



なんでもこの世界、運営が運営するテレビ局があるため遺跡調査の実況動画や料理番組、音楽番組などがNPCの店やスクリーンなんかで放送されているらしい。



そして生産組合で定期的に上げるお買い得番組もとても人気なんだとか。



俺は純粋に面白そうだなと感じ、今度妹と緑の芝生スクリーンを見に行くかと思った。



「この番組に生産組合が出るのはもう8回目。その間、私の作った服は組合が決めた順番が来るまで出演すらできなかった」


ガクリと項垂れる加藤さんの声は悲痛だ。



「だから!順番が回ってきた今こそ主役になるチャンス!!うおおお」

この人、おとなしそうな見た目に対して感情豊かで貪欲だな。



「まぁ番組撮影まで時間がないので衣装は店にある既存のものですけど…ちょうどお茶会をイメージして作った新作の服がこちらに」



いつの間に用意した?見えないとこから出てきたように…あっそうか。アイテムボックスから取り出したのか。



「ご試着はあちらのカーテンでよろしくお願いしますね~」


俺たちは衣装を強引にアイテムボックスに渡され、背中を押され試着室に案内された。



俺は衣装を確認する間もなく試着室に入れられたので、今持っている服がどんなのか分からなかったが、ちらっと見えた衣装の色と形状で俺が着たかった服などではないかと予想する。



(;゜д゜)ゴクリ…



俺はアイテムボックスから衣装を取り出…よっしゃー!



「これは先ほどのおしゃれな騎士の服ではないか」

俺は喜んで衣装に着替えたのだった。


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