第6話
「今日は外壁周りでも走ってこい」
おいおい。遺跡都市ファーストの大きさはどれだけあるのか分かっているのか?
「3日後には帰って来いよ」
ポイッ!
俺はルーファスに襟首を掴まれ、家から追い出された。
地図は埋まってないが灰色の部分に赤い線が引かれた。この線を辿っていけばいいのか。
俺は、右上に表示されたカウントダウンをしり目に走り出す。
==( -`ω-)/
「はぁはぁ」
1時間くらい、ぶっ通しで走り続けたが精神的に疲れた。
てか...道悪すぎないか。俺は今、大通りの道から外れて路地裏のような日陰の道を歩いている。なんかお酒を飲んだ食った人がそこら辺に倒れているが、朝だから酒場から追い出されたのかな?
治安悪いな。
「ひっひ」
「...。」
「そこの嬢ちゃん」
俺は見ないように通り過ぎようとしたのに呼び止められてしまった。
「何か用か?」
俺は振り返ってローブで顔まで隠した老婆を見る。老婆は露店でも開いているのか、古そうなアンティークなど風呂敷の上に置かれていた。
絶対に都市から許可をもらって露店を開いていないだろう。そう思わせる出で立ちをしている。
「ひひっ。ここで会ったのも何かの縁、占いでもやっていかないかい?」
俺は一瞬、ローブから見え隠れしていた婆さんの黒い窪みの眼が俺に向けられたことに背筋がぞわっとした。
「…。」
その瞳に気圧され、俺は無意識に身構えてしまう。
「そんな取って食ったりしないよ」
そんな俺の心情を知ってか婆さんは笑う。
「初回だ。只にしとくよ」
只より怖いものはない。
「いや遠慮する」
俺は今度こそ振り返らないず走り去った。
そんな俺の背中を見ながら婆さんがカードをめくる。
「別れと新たな出会い…死神の正位置かい」
☆
「遅い!そろそろ朝日が昇るところだったぞ」
俺は地面にぐったりと倒れながらも謝っとく。
そもそもこいつが変な道を指定しなかったら、もっと早くここにたどり着けていたと思う。俺が通る道にはどうしてか、物乞いやら乱闘騒ぎなど見過ごせないものがあった。
なにより殺人未遂現場に遭遇するとは思わなかった。7股した男が女たちに詰め寄られて殺されそうになっていたのは自業自得だが…そのハーレムの一員の一人が男の借金肩代わりしていて、本気で男を殺そうとしていたんだよな。
まぁ結局のところ、男は女たちに所有物と自身を売られたという何とも言えない結末だったけど。
「次だ。次の訓練は~」
とルーファスは行きつく暇も与えずに俺を[Cain]のいる森に置いていきやがった。
「…何がデバイスの使用は禁止だ」
人をどうやって感知しているかわからないが、人に群がってくる巨体の[Cain]相手に
どうやり過ごせと?
俺はいら立ちを覚えながら木を登る。ここで一週間やり過ごすか。
俺はボーと木の上でこれまでの訓練について考える。訓練の影響で体が作り替わってきていることに何となくだけど感じている。
外壁を走っていった時、最初のころは持久力が足りずに直ぐに息切れを起こしていたのに2日目の夜あたりになると、息切れが起こりにくく走るスピードが上がっていた。
だから訓練の重要性は身に染みているが何か引っかかる。ルーファスは「少し早いがこれもやってみろ」という口癖が多い。
身体的能力に合っていない段階の訓練をやらされた際にはちっともできずに理不尽を感じていたが、時々ボソッと「時間が足りない」と呟いているルーファスが少し気になるな。
だが、そんな俺の考えを遮るようにズーズーと何か巨体が地面を引きずる音が近くで聞こえた。
やばいな。考えることに集中して近寄って来ていたことに気づかなかった。
「よし」
逃げるか。俺は木を降りて木々を縫って走る。
おっと、相手も俺を追いかけるように先ほどより大きな音を響かせて迫ってくる。
だが俺は相手の巨体が通りずらい木々の隙間を通っているので時々、ドン!という音が聞こえる。相手が勢い余って木に突進している証拠だ。
俺はそれから一週間、何体もの[Cain]をやり過ごすことに成功した。
[Cain]に怯えながら暮らす森の生活は俺の五感を鍛えてくれて、[Cain]が通った痕跡を見つける洞察力も身につけられたのではないのかと思ってしまう。
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