第5話
「紹介された家は確かここらだと思うのだが…」
俺は路地やら階段やら通ってやっとたどり着いた日陰にあるギルドに紹介してもらった家の前にいる。
あの後、Cランクになるまで時間がかかると思ったため俺は買い取ってもらった。ダンゴムシ型の素材はハンターギルドの入会金ぐらいだった。
俺は申し訳ない程度に扉をノックする。
するとキーと扉が開く。そこから出てきたのはひげや髪がぼさぼさな寝ぼけた男だった。
「誰だ?」
「ハンターギルドからここにルーファス殿がいると聞」「はぁーーーー」
喋っている途中に俺は溜息によって言葉をそれ以上続けられなかった。
「またかよ…どうせ前の奴みたいに ブツブツ」
前にここに来た何人ものプレイヤーが訓練を放棄したらしくプレイヤーを信用度が下がっているらしい。
「俺はお前たちのことを信用してない」そうはっきり言われてしまった。
俺の目指す騎士はこういう時…
「!?なにを」
「すまなかった」
俺は頭を下げた。
「貴殿の気持ちは収まらないと思うが同胞が迷惑をかけた」
俺の目指す騎士は、他人事のように俺は関係ないからいいやと問題を見て見ぬふりはしない。
15秒ほど経つと動揺していたルーファスは冷静さを取り戻したのか、頭を上げろと言った。
「職業につきたい奴は皆等しく訓練をつけている。今までそうだったのに今更つけないのは不公平だ」
おっと、俺の真摯な思いが通じたのか。
「ただし!訓練前に少し雑用を頼もうじゃないか」
そう言いルーファスは家に引っ込んで出てきたと思ったら、ほうきとちりとりを俺に差し出してくる。
「お前たちは指導者への感謝が足りてねぇ」
☆
俺は今、精神的に消耗している。
この2日間、ログインしてはゴミ屋敷だったルーファスの家をきれいにしていたが、中庭もあったらしく俺は小さい鎌を使って草を根っこから抜いていく。
「ふぅー」
俺は額の汗が目に入りそうだったので、腕で汗を拭う。
「あらかた終わったみてぇーだな]
俺が住み込みで綺麗にしたんだから当たり前だ。ゴミを何度もゴミ捨て場に持っていく労働がいちばん疲れた。なぜって?人に何だあれっていう顔で見られたからね。
それにしても清掃が終わるまで自分の家を貸し出してくれたのは助かるが、買出しや料理の腕まで要求されると思わなかった。
「取れ」
俺は木剣を投げられたので柄の部分をキャッチする。
「お前の動き、あらかた見せてもらったが武術をかじっているな」
なんか視線を感じるなと思ったが、変態おやじではなかったか…。
「素手の体術を習っている」
「そうか」
ルーファスはなにやら目をつぶって顎に手をあてて考えている。
「お前、得物は何を使っている?」
「大盾一つだ」
「…。」
ピコン♪
【セイはルーファスの眉間にしわを寄せることに成功した】
俺の心のナレーション、今は真剣な時だ。茶化すなぁあ!!
「騎士の技能は身体能力の向上だ」
へぇー。騎士ならではの能力だな
「身体能力が向上することで、機体のGにも何倍も耐えることが出来るようになる」
ふむふむ。強いのではないのか?
「だが狩人のように殺気を感知することも銃士のように銃の照準補正も騎士にはねぇが銃士はお前には関係ない能力だな」
「あぁ銃は使わない」
「そう言うが銃はハンドガン~スナイパーライフルまで幅が広い。弾丸のコストは高いが威力が高いときた…剣や盾の時代は終わったのかもしれないな」
ルーファスはなにか諦めたように呟くので、俺はつい
「必要だ」
「?」
「大切なものを守るには盾が必要じゃないか?」
俺は冗談のように微笑むがその瞳はルーファスをはっきりと見る。
「…そうだな」
俺の言葉は届いたのかどうか分からないが、ルーファスは俺に背を向けて中庭の真ん中に向かって「稽古をつけてやる」と言った。
ルーファスの最初の訓練は木剣の素振りだ。ルーファスが「素振り50回!」と言うと、木剣を振り落とす際に薄い緑色軌道が見えるようになる。
その軌道通りに振らないとすぐに叱責が飛んでくるので気を付けないといけない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます