Day2②:聞き込み調査
そして、昼休みになると俺は自身の不安が的中していたことを悟った。
「キャー、カワイイー!」
黄色い金切り声が教室に響く。ヒヨコをサッカー部の部室に連れて行こうとしたが、よほど息苦しかったのか途中でバッグの中から飛び出して来たところをこのクラスへ遊びに来てた文系女子どもが捕まえたのだ。
「ピョピョウ……?」
こちらの事情などお構いなしに群がり、声をかけても気づかないふり。挙句、陰口を叩くような奴らだ。ヒヨコは完全に警戒度を上げている。いや、そんな愚痴を言っている場合ではない。俺の目的はヒヨコの飼い主に繋がる情報を得ることだ。まずはこのクラスから調べよう。とりあえず近くにいた亮太へ声をかける。
「亮太はあのヒヨコ見たことあるか?」
「いや、ないな。ヒヨコ自体初めて見た!」
残念ながら亮太はヒヨコに関する手がかりを持ってなさそうだ。それだけだと、ヒヨコの飼い主には何も繋がらないので別の質問を投げかけることにした。
「だよなあ……じゃあさ、周りに何か異変はないか?お前、よくいろんなところをぶらついてるだろ」
「ああーそうだな……駅前の路地裏は最近じゃどこも物騒だよ。ガス爆発やら暴力沙汰やら……。しばらくは寄り付かないことだな、ありゃ」
「なるほど……暴力事件まで起きてたのか」
亮太はヤンキー気質だからかそこらへんの事情は俺のような一般人より詳しい。とりあえず、心のメモ帳に書き記しておく。他にもクラスに残っていた何人かに聞いて回ったが、外で活動する部活ではないからか有力な情報は得られなかった。そして、そろそろ……。
「敬介、ヒヨコくーん何やってるの?早く行かないと昼休み終わっちゃうよ!」
ナイスタイミングゆうこ!これで口実はできたし、クラスの中は一通り聞けた。
「今行く!おーい、そろそろ行くぞ!」
「ピョーン!」
やっと解放されたとばかりに力強い返事がヒヨコから返ってくる。こちらに向かって走ってくるヒヨコを何とかバッグに入れてグラウンドにある部室へ急ぐ。
「何か分かった?」
「ヒヨコに直接繋がるような情報はまだだな」
「そっか。私もそんな感じ」
ゆうこは俺よりも交友関係が広いので何か掴んでいるかと期待したが、そう全てが上手くいくわけではないようだ。
「時間がないから二手に分かれよう。俺はサッカー部を聞きに行くからゆうこは陸上部で聞き込みをしてくれ」
「オッケー、陸上部の友達がいるから聞いてみる」
そこから15分近くそれぞれの部活を聞き込みしてからまた合流し、今は俺のクラスで弁当を食べている。昼休みはあと20分程度しか残されていない。
「陸上部は学校の外を走る時に裏山近くで動物っぽいのを見たらしいんだよねえ」
「こっちは動物じゃなくて老人を見たって聞いたけどな」
動物っぽいのを見たというのはヒヨコを目撃してたかもしれないということだろうか。あとはこの老人がヒヨコと関係があるかもしれない。
「その老人がヒヨコの飼い主っていう説はあるんじゃないかな。学校近くをうろついているおじいさんなんて話は聞いたことないしな」
今までに出た話から今後の動きを考える。いつもはマイペースなゆうことここまで真剣に話し合うのは初めてだと思われる。それだけ、目の前にいるヒヨコを思いやっているという事だろうか。
「うーん……そのおじいさんがヒヨコ君の飼い主かもしれないからヒヨコ君のと一緒にそれぞれの情報を集めるといいのかな?」
「だな。俺は今日バイトあるから夕飯の時にまた話し合おう」
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