楽しいけど…
あやめからのリクエストしてきたポーズは、まさかの…
「傘さしたまま…わたしの肩を抱き寄せて欲しいの。」
だった。
ほら、雨に濡れちゃうぞってシーンを描きたいのだそうです。
…
オレでいいのだろうか…?
どう考えてもカズマの方がビジュがいいけど…まぁでも、そんなこと頼みづらいのだろう。
オレでお役に立てるならよしとしよう。
てなわけで、携帯を準備したあやめに合わせてオレは傘をあやめにわたして携帯を持った。
そして、あやめの肩を抱き寄せた。
「こう?」
「う、うん。」
「はーい、じゃあとるよー」
カシャっ
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ
まさかの連写。
せっかく連写ならばとオレは大サービスをしてみた。
全部同じアングルじゃつまらないので、キスするアングルも入れてみた。
もちろんフリに決まっている。
だってオレたちは幼馴染なのだから。
キスなんてしないんです。
でもね、マンガにはやっぱりキスシーンも大事ですからね。
てなわけでね。
「わりい…連写したわ」
「う、うん。それよりさっき…わたしに…」
「あー、せっかくだしキスシーンもと思ってさ」
とおまけも追加したことを伝えた。
するとあやめは、
「あー…、そ、そっか。そういうことね…」
と、なんだかよそよそしく髪を耳にかけて挙動不審気味だった。
「勝手にごめん」
と一応謝っておいた。
すると、
「あ、ううん。助かるよ!いいアイデア浮かんだし」
と言ってくれたので安心した。
「ところで、あやめの描く絵ってなんか…オレとあやめに髪型とか似てね?」
とそれとなく聞いてみた。
するとあやめは、また挙動不審気味になり…
「えっ…そりゃモデルがわたし達なんだし…そもそも妄想癖わたし強いし…なんていうか…その…」
と、めっちゃ困っていた。
「あー、確かにオレがモデルとしてポーズとかとるからそうなるか」
と納得しているとあやめは、
「う、うんうん。そう…それ‼︎」
と、なんか怪しく同意していた。
…
ほんとは…あやめ…カズマみたいなイケメンくんをモデルにしたいんだろうな…と、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ごめんなー。こんな幼馴染で」
と心からの謝罪。
「えっ⁉︎りょうやは、最高の幼馴染だよ‼︎わたしこそ…ごめんだよ」
と逆に謝られてしまった。
「あやめは、オレにとったら最高の幼馴染だわ。謝るなんてないない。」
と返すとあやめは、
「ほんと?りょうやは、こんな幼馴染でイヤじゃない?」
なんて目をまんまるくしてオレをみてくるじゃありませんか!
「イヤどころか…むしろ…」
「むしろ…?」
…
「えと…まぁ…最高ってことだよ」
と、無理矢理最高という言葉で話をおさめた。
あぶねー。
危うくあやめは、オレの大好きな幼馴染なんだからって口走りそうになったぜ。
ん?
大好きって…オレいいそうになってたよな。
…大好き⁇
あー、でもこの場合は…幼馴染としてってことなんだよね?
家族愛的なね?
と、自問自答していた。
…
「やっぱり幼馴染って幼馴染なんだよね…」
と意味不明な発言をしたあやめ。
「あやめは、幼馴染になにか不満なの?」
と心配するオレにあやめは、
「ううん、幼馴染ってやっぱり最高‼︎」
と傘を上に持ち上げた。
「冷たっ」
「あはは、ごめんー」
「ほら、傘貸して」
「えー、次はわたしが持つよ?」
「あやめは、傘の持ち方変だから没収」
とか言いながら楽しく下校したのでありました。
やっぱりこうしてあやめといると落ち着くし、楽しいなとオレは心からそう思った。
幼馴染でよかった。
だって恋人になったりしたら…別れるかもじゃん。
どんまい、カズマ!
と勝手にまだあやめと付き合ってもないのに哀れんだ。
だから次の日、あやめとカズマが話していてもまったく気にならなかった。
だってオレは、最強の幼馴染だからさ!
と、思っていたのですが…
やっぱり、なんか…なんかさ…
無理だ
…
そんな二人をみてオレは、あやめに近づいて…
「あのさ、あやめ…今日は、用事があるから一緒に帰れないんだ。ごめんな」
と咄嗟に嘘をついてしまった。
少し寂しそうなあやめは、
「うん。用事あるなら仕方ないよね」
と了承してくれた。
するとすかさずカズマが
「ならオレがあやめちゃん送ろうか?」
なんて誘っていた。
あやめは、すかさずお断りしていたけど…
あの二人は、もしかしたらそう遠くない未来…付き合うんじゃないかなってオレは感じた。
続く。
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