3 梅田竜太郎II Side智花

  ※※※



あーびっくりしたー。


会議室のドアを閉めて、早歩きで営業室に向かって廊下を歩く。



会社で竜太郎に会うなんて思ってもみなかった。

最後に会ったのは4年?いや5年前?


興奮したせいか、喉が渇いたな。

営業室に戻る前になんか飲みたいな。

と、自販機でミルクティーを買うために休憩室に立ち寄ることにした。


  ※※※



梅田竜太郎。


私の大学時代の友人の一人だ。

当時の彼の見た目は『チャラいイケメン』。

実際仲良く成れば、竜太郎は全くチャラくなかったんだけど。


竜太郎とサク、万里子と私。

ゼミが同じで気が合った。

男2人に女2人の私たちは、次第にいつも一緒にいるようになっていた。





そして、私は竜太郎にサクを盗られた。





「あ、これ」



自販機に、大学のころにハマっていた微炭酸のオレンジジュースを見つけた。


これ、サクによく奢ってもらってたな。


サクはジャンケンがものすごく強かった。

だからサクは『男気ジャンケン』に高い頻度で勝っちゃう。

で、毎回のようにみんなのジュースを奢る羽目になってたんだよねー。

私はいつもこの微炭酸オレンジジュースだったから、そのうち「どれがいい?」って聞かれることもなくこれを買ってもらうようになったんだよ。




何となく懐かしさに駆られて、ミルクティーではなく、それのボタンを押した。




オレンジジュースの微炭酸が喉をくすぐる。

そして大好きだったサクを思い出した。



サクは優しくてかっこよくて面白くて、しょっちゅう女の子たちに告白されて、その度に「好きな人がいるから」って断ってて。

仲がいいのは万里子か私だったから、ちょっと意識してた。

一緒に過ごしてたら、サクの良いところがたくさん見えて、実際好きになっちゃったんだよね。




そうそう、この二人には『サク派』『竜派』とかいうファンがついていたんだよ。



まあ、一人ずついたならここまでの人気にならなかったのだろうが、二人は仲が良かったから一緒にいることが多くて、目立ってたんだよね。

そしたらBL好きの女子からはいろんな妄想が出てきてちょっとした騒ぎになったんだった。




まあ、妄想だけじゃなくて、二人は本当に付き合うようになったんだけどね。




ああ、忘れもしない。


二人が付き合うようになって、私は竜太郎にものすごーーーく謝られたんだ。


竜太郎は私がサクを好きだったのを知ってたから。


まさか同性の竜太郎にサクを盗られるとは思ってもみなかった。

まあ、私の完全なる片想いだから盗られるっていう言い方は間違ってるんだけど。


当時は随分怒って、喧嘩したんだよね。

『何で言わなかったんだー!』って。『友達でしょー!』って。


今思えば、竜太郎が男の子が好きだなんてなかなかいいだせなかったのがわかるんたけど、当時は教えてもらえなかったことに怒ってたんだっけ。



フフフ。

夜中に大喧嘩してさ。


「ずっと言えなかったけど、智花と好みが似てるんだよ!好きな芸能人とか一緒だし!」

って竜太郎が言ってさ。


二人で好きな芸能人の話で盛り上がってさ。


フフフ。


竜太郎と好みが丸被りなのは笑ったなあ。


フフフ。




・・・懐かしいな。




ジュースのキャップをして、営業室に戻る。・・・戻ろうとして、足を止めた。




・・・・・・・・・。


・・・あれ?


・・・なんか。


・・・やばくない?




竜太郎の好みは私と丸被りってことは・・・・。



晴久が危ないいいいい!!!!!!!!!







          <side智花 おわり>

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