第9話 友人キャラ、王女に相談される
「走るスピードが落ちているぞ!! もっと脚を上げて腕を振れノロマ!!」
「ひぃ!!」
談話室でのユリーシアとローリエの会話を盗み聞きした数日後。
俺はユリーシアと訓練をしていた。
アレンはいない。メルジーヌ王女とお茶会しているらしい。
いや、あいつはもうユリーシアから剣の技術を盗みきってしまったし、やることは身体作りくらいだから問題ないのだろう。
でもそれはそれ、これはこれ。
人が汗水垂らして走らされている最中に美少女とお茶会とか、帰ってきたらぶん殴ろうと思う。
「脇を締めろ!! 大振りに剣を振るうな!! 隙を作れば死に直結するぞ!! もっと踏み込め!!」
「はい!!」
最近は真剣での打ち合いも増えた。
木剣で叩かれても痛みに慣れてきて平気だったから安心してたら、ユリーシアが緊張感を出すために真剣を使うと言い始めたのだ。
流石に本当にぶった斬られることはないが、多少の切り傷はできる。
痛い。超痛い。
「今日の訓練はここまでとする」
「ぜはあ、ぜはあ、あ、ありがとうございました」
「……しっかり休むように」
それだけ言い残して訓練所から去っていくユリーシア。
はあ、ちくしょう。
「エロいことしてぇ」
訓練に不満はない。
ユリーシアは俺のためを思って訓練を厳しくしているのは分かるし、日に日に強くなっているような気もする。
でも、でもだ。
十二歳と言えど中身は立派な大人な俺にとってはどうしても悩ましい問題があった。
それは、少し動く度に激しく揺れるユリーシアの大きなおっぱいである。
エロすぎるのだ。流石はヒロインである。
村では毎日のようにクロエ、クローディアとエッチしまくっていた俺には訓練より見ることしかできないおっぱいの方が辛かった。
男性騎士たちはムラッとしたら城下にある色街に行くそうだが……。
俺はクロエとエッチがしたい。
早く村に帰ってクロエとエッチがしたくて堪らないのだ。
どうにかして会えないか、テレパシーで交信を試みるが、こちらからの呼びかけることはできず、応答はできない。
「……どさくさに紛れてユリーシアのおっぱい揉んでみようかな……」
やったら殺されるだろうか。
と、我ながら最低なことを考えていると、見覚えのある人物が訓練所にやってきた。
「……こちらにいたのですね」
「え? メルジーヌ王女殿下!?」
「畏まらずとも結構ですわ、ルカン様」
俺は思わず緊張で硬直してしまった。
訓練所に姿を現したのは、アレンとお茶会をしているはずのメルジーヌだったからだ。
「お、俺、いや、私に何か御用でしょうか?」
「……少し相談がありまして」
「そ、相談? 私なんかが王女殿下の知りたいことを知っているとは思えませんが……」
「いいえ、貴方にしか分からないことです」
王女の相談。
もし答えられなかったら、処刑すら有り得るのではないか。
俺はぶるぶる震えてしまう。
「……そこまで緊張なさらずとも結構ですわ。別に知らなくてもそれで構わないですし」
「ほ、本当ですか? 答えられなかったら処刑、とか」
「貴方は私を何だと思っているんですか!? その方が不敬ですよ!?」
「ひえっ、す、すみません!!」
ゲームだと腹黒王女だったし、警戒してしまうのも許してほしい。
「……コホン。相談というのは、アレン様のことですわ」
「アレン? えっと、あいつが何か……?」
「アレン様は不全、もしくは男色家なのですか?」
「!?」
「ここ一ヶ月、我々は私を含めたあらゆる美少女美女をアレン様に差し向けましたわ」
自分で美少女とか言っちゃうのか。
いやまあ、実際にマジモンの美少女ではあるのだが。
「ですが、その尽くが誘惑に失敗する始末。きっと何か理由があると思い、アレン様のご友人であるルカン様ならば知っているかと思ったのですが……」
本来のアレンは、美少女美女から誘惑されたら相手が誰であっても応える男だった。
しかし、今のアレンは違うらしい。
「報告によれば、たしかに異性の身体に興奮している様子ではあるので、男色ではないと思うのです。チン◯ンも大きくなってますし。ですが、いざ手を出そうとすると無反応になるというか……」
「あー、えっと」
「お願いします、アレン様のチ◯チンを大きくする方法をご存知ありませんか!?」
このお姫様なんてこと叫んでんだ!!
「メルジーヌ王女殿下。まず一つ、女の子が大声で◯ンチンとか言わないでください。周りの大人たちに怒られますよ」
「それは、失礼しましたわ。ですが、このままでは私は……。ですのでどうか、何か知っていることがあれば教えてほしいのです」
「……んー」
ここでアレンの性癖を話したらどうなるのか分からない。
どうにかしてあいつの寝取られ性癖を緩和してやりたいところだが、どうしたものか……。
……でも良い方向に転がる可能性もあるよな。よし。
「メルジーヌ王女殿下。ここだけの秘密ですが、誰にも他言しないと誓えますか?」
「っ、ち、誓います!! 女神クローディア様に誓います!!」
「分かりました。なら、アレンの性癖についてお話します」
俺はアレンが重度の『寝取られ好き』であり、『マゾヒスト』であることを告げた。
すると、メルジーヌは難しい顔をする。
正確には性癖に対し、理解に苦しむといった表情のようだった。
メルジーヌが首を傾げながら問いかけてくる。
「アレン様は、なぜ女の子を取られて興奮するようになったのですか?」
「あー、えっと、それはですね。アレンが好きだった女の人を俺が奪っちゃって、それを切っ掛けに目覚めたというか、はい。すみません」
俺はその場で頭を下げた。
不可抗力とは言え、メルジーヌが苦労している原因は俺にある。謝罪はしておくべきだろう。
すると、メルジーヌは困った様子を見せた。
「べ、別に謝ることは……。貴方は好きな人に思いを告げて結ばれただけではありませんか。それ自体は悪いことではありません」
あれ? 思ったより腹黒じゃない?
……冷静に考えてみれば、メルジーヌがアレンのためにヒロインたちの好意を操作するような腹黒っぷりを見せるのは、アレンのハーレム願望を知ってからだった。
ちょっと待て。
ということはアレンの寝取られマゾ性癖を知った今、彼女が取るであろう行動は――
「でも、困りましたわ。アレン様にそのような性的嗜好がおありだとは。何か良い案はありませんか?」
後から気付く、圧倒的選択ミス!!
これは、この少女はアレンを満足させるために、下手したらアレンの性癖をより悪化させてしまうのではないか!?
具体的にはアレンに好意を寄せてきたヒロインたちが奪われるよう、画策するのではないか。
ど、どうする!? どうすればいい!?
もしそうなったらアレンは今よりも更に深い寝取られの沼に陥るぞ!?
「ハッ!! そ、そうだ!!」
「あら、何か名案が?」
「えっと、名案という程ではありませんが。こういうのはどうですか?」
せめて被害を少なくするための必殺を、俺はメルジーヌに吹き込んだ。
それは、嘘の寝取られ報告。
実際に寝取られるわけではなく、あくまでも本人の想像力の範疇で収まるプレイだ。
女の子を寝取られる気分が味わえるだけで、本当に寝取られるわけではない。
これならきっと、アレンの性癖も今以上に悪化することはない。
……そう、思っていたのだ。
一つ間違っていたとすれば、俺は寝取られの沼に嵌まった者の深淵を見くびっていたこと。
そして、そんなアレンを見てサディストに目覚める王女殿下がいるなんてことを、知らなかったことだった。
―――――――――――――――――――――
あとがに
ちょっとした小話
作者「寝取られは奥が深い。女の子が自分にまだ好意を抱いているか否かで、心へのダメージが変わる。それを感じ取れるようになってからが本番だ」
ル「上級者やん」
「ユリーシアに厳しくされたい」「墓穴掘ってて草」「作者がやばい」も思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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