第7話 友人キャラ、おっぱいが恋しい
「はあ、疲れたあ」
「お疲れさん。お、このクッキー美味しい」
「……僕が偉そうな人たちに囲まれてる間、ルカンはここでずっとお菓子と紅茶を楽しんでたんだ?」
「俺は勇者のおまけだからな」
別室で待っていると、ゲッソリした様子のアレンが入ってきた。
それはもう多くの貴族たちが話しかけてきて、執拗に娘を紹介してきたらしい。
そりゃまあ、勇者の血を取り込みたいと思うのは貴族なら当たり前だろうからな。
俺としてはアレンにまともな恋愛をしてほしい。
寝取られマゾ性癖がこれ以上悪化するのを止める意味でも。
……いや、かといってハーレム性癖に目覚められても困るんだがな。
クロエにまで手を出したら親友とて命の保証はできぬ。
「っ、な、なんか一瞬すごい寒かったような……」
「気のせいだろ。で、お貴族様が紹介してきた娘の中に可愛い子はいたのか?」
「うーん、なんか、微妙? ビビッとくる子はいなかったかな。まあ、好きな子ができたらまた寝取ってもらいたいし、その時に言うよ」
「そういう意味で聞いたんじゃねーよ!!」
くっ、アレンがこのままじゃただの恋バナすら満足にできないぞ。
「はあ、この話はやめよう。で、国王陛下には問題なく謁見できたのか?」
「あ、うん。そっちは大丈夫。やたらとお姫様、メルジーヌのボディータッチが多かったのは気になるかな。あの子、絶対に僕に惚れてる」
「そ、そうか。いや、絶対に抱かないぞ!? その期待したような目はやめろ!!」
勇者でも何でもない平民がお姫様を抱くとかあってはならない。
というかゲームでも思ったけど、会ってすぐのお姫様をいきなり呼び捨てにするとか勇気があるなあ。
と、俺がアレンの言動に感心していた時。
部屋の扉がコンコンとノックされて、中に誰かが入ってきた。
アレンを迎えにきた領主、レイモンドだった。
「待たせたな、アレン。それとルカンも」
「別に待ってないよ」
「は、はい、お気になさらず」
アレンめ、誰に対しても馴れ馴れしいな。
「……フフフ」
「「?」」
「いや、すまんな。アレンは誰を前にしても平然としているが、ルカンは相応に緊張するのだなと」
「そ、そりゃあ、まあ、はい」
どうやら俺が緊張しているのを見て笑ってしまったらしい。
レイモンドが軽く咳払いをした。
「コホン、そう緊張しなくていい。ルカン、君の扱いについてだが、勇者パーティーでの雑用に決まった」
「雑用、ですか」
「うむ。勇者パーティーはアレンの最良でメンバーを交代することができる。ただし、君は固定だ」
「……なるほど。メンバーの入れ替わりが激しいと、必ずしも書類仕事が得意な人が入るとは限らないですもんね。なら雑用係として一人固定した方がいいと」
当然ながらゲームに雑用係はいなかった。
アレンが俺と一緒に行きたいと言って生じた役割なのだろう。
ゲームのルカンはアレンの知らない間に冒険者として活躍してたし、各地にいるヒロインの情報を持ってくるだけの存在。
勇者パーティーの雑用係になったことを喜ぶべきか否か……。
と、そこでレイモンドが感心したように頷いた。
「ほう、こちらの意図を汲むか。聡明だな、ルカンは。儂の末娘を嫁にどうだ?」
「ご、ご冗談を!! そんな滅相もないことです!!」
「ははは、頼まれようと誰にもやらんよ」
このジジイ、心臓に悪いこと言いやがる。
「えーと、つまりはルカンとずっと一緒にいられるってこと?」
「そういうことらしい」
「無論、勇者パーティーに相応しいだけの実力を付けてもらう必要はある。君は字や算術を覚える分、負担を強いるかもしれん。だが、必要なことだ。この通り、頼む」
そう言ってレイモンドは俺に頭を下げた。
貴族が平民に頭を下げるなど、普通はあってはならない。
「わ、分かりましたから!! 頭を下げないでください!!」
「ははは、ありがとう。アレンにはいい友人がいるのだな」
「はい!! 趣味にも付き合ってくれますし――」
「お前は黙ってろ、アレン」
アレンが余計なことを言いそうになったので、俺は慌てて黙らせる。
仮にも世界を救う勇者様が寝取られマゾのド変態だと知られたら一大事だ。
どうにか秘密にしないと……。
もしバレたらティファナのように理不尽に俺が原因だと攻撃してくるヒロインが出てくるかもしれない。
かもしれない、というか確実に何人か攻撃してくると思う。
そういうヒロインに心当たりがある。
「さて、というわけで君たちの師匠となる者たちを紹介しよう。――入りなさい」
レイモンドが手を叩くと、部屋に二人の女性が入ってきた。
おお、彼女たちは!!
「……貴殿らに剣を教えることになった。アメリ王国騎士団、騎士団長のユリーシアだ」
深紅色の髪と青い瞳の、二十歳前後と思わしき絶世の美女だった。
長い髪をポニーテールに束ねており、鎧に身を包んでいる。
顔立ちが非常に整っており、凛々しい雰囲気を漂わせていた。
ユリーシアはアメリ王国の騎士団長であり、アレンの剣の師匠となる人物でもある。
物理攻撃に弱い魔物が多く出る序盤から中盤に掛けて活躍するため、終盤はパーティーを外されることが多いが、人気キャラの一人である。
「……私はローリエ。貴方たちに魔法を教える。これでも筆頭宮廷魔法使い。崇めて」
そして、もう一人はジト目の少女だった。
年齢はユリーシアよりも幼く、十五、六歳くらいだろうか。
青い髪と翡翠色の瞳が特徴的な美少女だった。
とんがり帽子にローブという古典的な魔女っぽい格好をしており、その手には身の丈よりも大きな両手杖を持っている。
ローリエ、彼女もまたヒロインだ。
ローリエはアメリ王国一の魔法使いであり、ユリーシアとは逆に中盤から終盤にかけて活躍する。
一部紳士たち、主に合法ロリにヒャッハーしてしまう人々から絶大な人気を獲得したヒロインである。
こうして俺とアレンの、訓練に勤しむ毎日が始まったのだ。
一つ納得できないのは、アレンにかかっている主人公補正だろう。
アレンは教えてもらったことをたった数分でマスターしてしまった。
自分が改めて友人キャラなのだと思い知らされてしまう。
ああ、クロエ。クローディア。
彼女のおっぱいが恋しい。
疲れた身体をあの艶かしい身体で癒してほしいものである。
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あとがき
ちょっとした小話
作者「哺乳類はおっぱいを飲んで育つ。即ちおっぱいが恋しいのは生物として当然のことなり」
ル「思想が強い」
「ジト目魔女っ子は必須」「ヒロイン追加だー」「思想が強い」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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