第4話 友人キャラ、お願いを聞く



 クロエとのエッチをアレンに見せつけた翌日。


 俺はアレンと村の近くにある川まで釣りをしにやってきた。


 若干気まずい。


 最初はアレンが見ているだけで、俺もあまり気にしないようにしていた。

 しかし、途中で興が乗って色々とやらかしてしまった。


 クロエにアレンの悪口を言わせたりして、優越感に浸るエッチだった。


 終わった後の罪悪感が凄いのよ。


 やってる途中はクロエを抱いている俺とそれを見ているしかできないアレンの差に愉悦を感じていたのは間違いない。


 だからこそ、翌日になって冷静になり、アレンに対して申し訳なく思ってしまうのだ。


 でも、アレンは違うらしい。



「ルカン、僕は分かったよ」


「な、なんだよ、急に」



 アレンが何かを悟ったような顔で言った。



「僕はやっぱり、好きな人を奪われることに興奮するみたいだ。それも奪われてしまった相手に酷い扱いを受けると更に興奮する。妹に確認したら、そういう性癖を持った人をマゾヒストと言うらしい」


「妹に何を訊いてんだ……」



 アレンは『寝取られ好き』から『寝取られマゾ』に進化してしまったらしい。


 いや、進化じゃなくて悪化か。


 ど、どうしよう。

 原作のアレンとは全く違う特殊な性癖になってしまっている。



「な、なあ、アレン。もう昨日みたいなことは――」


「でね!! お願いがあるんだ、ルカン!!」


「……今度はなんだ?」


「僕の姉さんとエッチなことしてくれない?」


「本当に何言ってんだお前!?」



 こいつ、頭イカれてんのか? いや、イカれさせちまったのは俺か?



「一旦まじで落ち着こう? な? お前、多分疲れてんだよ。絶対そうだって」


「たしかに昨日は心臓がバクバクして眠れなかったけど、身体は絶好調だよ!! 特に下半身がね!!」


「くそっ、こいつどうすりゃいいんだ!?」



 ゲーム通りのぐいぐい行く性格と寝取られマゾ性癖が噛み合わさり、よりヤバくなっている。


 昨日は押されまくって流されてしまったが、今日という今日は断らなくては!!



「だ、駄目だ!! 俺にはクロエがいるんだ!! 他の女の子と浮気はしない!!」


「そう言うと思って、シスタークロエからは許可をもらってる」


「!? い、いや、出任せを言っても無駄だぞ。俺は騙されないからな!!」


『――その者の言うことは事実である』



 !?



「あ、頭の中に直接クロエの、いや、これはクローディア? の、声が聞こえてきた!? っていうかアレンの話ホントなの!?」


『うむ。汝が我に操を立てる必要はない』



 まさかクローディア本人から浮気の許可をもらうとは思わなかった。



『ルカン、我は汝を愛している。しかし、汝を縛るつもりはない。汝の血を受け継ぐ者は多いほど良い。多くの女とまぐわい、子を為せ。我は汝の恋人として、妻として汝の子らを等しく愛そう』


「え、ええと、つまり……?」


『ハーレムでも作るがよい。ちょうどそこにいるアレンは、多くの美しき女たちと知り合う運命にある。其奴に群がる女たちを奪ってやれ。本人もそれを望んでおるしな』



 要するにアレンを活き餌にしてヒロインたちを集めて抱きまくれってことか?

 俺はクロエだけで、クローディアだけで良いんだが!?


 しかもアレンの姉って言ったら――



「てかそもそも、お前の姉ちゃんってマリエッタさんのことだよな? 無理だろ、あの人ブラコンじゃん」



 マリエッタ。


 アレンとは血が繋がっていない、いわば義理の姉である。

 意外と複雑な家庭事情で、義理の母と義理の妹もいたりする。


 そして、いずれも攻略可能なヒロインだ。


 マリエッタはその中でも特に主人公を好いているブラコンヒロインで、何をしても好感度が上がるお手頃さからチョロインと言われる。


 村で唯一の薬師であり、アレンの初恋の相手であるクロエをライバル視している。


 まあ、クロエは治癒魔法の使い手だし、そういう意味でもライバルというのは間違いないではないだろう。


 何はともあれ、アレンにマリエッタとエッチしてほしいと言われても無理だ。



「だから今からお願いしに行くのさ!!」


「え、ちょ!? 力強っ!?」



 俺はアレンに腕を引かれ、そのままマリエッタが店主を務めるポーション屋までやってきた。

 中に入ると、小さな小瓶が収まった商品棚がずらりと並んでいる。


 お店のドアが開いたことで鳴ったベルに気付き、カウンターの奥から女性が出てきた。


 胸元が大きく開いた服を着ており、一見するとただの村娘に見えなくもない。

 しかし、その銀色の長い髪はお姫様のように艶やかでふわっとした甘い匂いが漂ってくる。


 まるで聖女のような笑みを常に浮かべている絶世の美女だった。


 その美女はアレンを見た瞬間――



「んはあっ!! 私のアレンきゅん!!」



 聖女のような笑みから一転、獰猛な肉食獣の目になり、シュバッとアレンに抱きついてきた。

 その目にも留まらぬ速さは凄まじく、残像すら見えてしまう。


 マリエッタはアレンに頬擦りし、くんかくんかと匂いを嗅ぎ始めた。



「スンスンスンっ!! あぁ、ちょっぴり汗を書いたアレンきゅんの匂いたまんねぇ!! あー、やっば、子宮が疼くっ!! 今日は急にどうしたの? お姉ちゃんに会いたくなっちゃったの? それともお姉ちゃんのおっぱいを揉み揉みしたくなっちゃったの? いいよっ、アレンきゅんなら揉み揉みどころかちゅぱちゅぱでもじゅぽじゅぽでも叶えて、あ・げ・る♪」


「うわあー」


「んはは、やめてよマリエッタ姉さん」



 前世では所詮エロゲーのヒロインだから気にしなかったが、目の当たりにするとヤバイ人物だな。


 と、そこでマリエッタが俺に気付いた。



「あら、ルカン君。いらっしゃい、いつもアレンきゅんと遊んでくれてありがとうね?」


「い、いえ、まあ、友達ですから」


「うふふ。ちょっと待っててね、今お菓子とお茶を淹れてくるから」



 アレン以外に対してはまともなのだ。アレン以外に対しては。

 アレン自身はマリエッタをどう思っているのだろうか。


 気になる。気になるが、今は黙っておこう。


 マリエッタはお店の看板に『休憩中』の札をぶら下げて、俺たちは店の奥に通された。


 出された焼き菓子とお茶は上等なもので、とても美味しい。

 マリエッタはアレンにべったりとくっついており、その目はやはり変態のそれだった。


 しかし、今のアレンは彼女以上の変態だ。



「マリエッタ姉さん、実は折り入って頼みがあるんだ」


「何かしら!? アレンきゅんのお願いなら何でも聞いてあげちゃう!!」


「ありがとう!! じゃあ早速、ルカンとエッチなことして欲しいんだ!!」



 これには流石のブラコンヒロイン、マリエッタも難しい顔を――



「もちろん!! それがアレンきゅんのお願いなら!!」


「やった!! ありがとう、姉さん!!」



 ん? え、ちょ、承諾した!?


 いや、たしかにゲームでもアレンのお願いなら何でも叶えようとする暴走ブラコン姉キャラではあったけどさ!!


 少し躊躇が無さすぎじゃないか!? 秒で返事してたぞ!?



「でも見られるのはちょっと恥ずかしいから、アレンきゅんは別の部屋で待っててくれる?」


「分かったよ、姉さん!! そっちの方が仲間外れにされてる感じがするし、後から報告されるのも興奮する!!」



 アレンがスキップで部屋を出て行った。


 アレンの奴、まさかマリエッタから俺に抱かれた報告でも聞くつもりなのだろうか。


 拗らせすぎにも程がある。


 俺は今後のアレンのことを案じつつも、マリエッタと二人きりになり、ベッドがある仮眠室まで案内される。


 薬師は泊まりがけでポーションを作成することが多いらしく、お店に仮眠室があるらしい。



「それじゃあ、エッチしましょうか」


「あ、あの、マリエッタさんはいいんですか?」


「ええ、だってアレンきゅんのお願いだもの。あの子の望むことは何でもしてあげたいから」


「……」



 俺は胸の内で何かが燻っているのを感じた。


 どういうわけか、マリエッタの言葉にムッとしてしまったのだ。


 いや、分かっている。



「じゃあマリエッタさん、本当に抱きますよ?」


「ひゃっ!? も、もう、ルカン君って意外と大胆なのね?」



 マリエッタをベッドに押し倒し、その服の上から大きなおっぱいを揉みしだいた。


 ああ、柔らかい。絶対に気持ちいいやつだわ。


 俺は期待すると同時に、苛々していた。

 その理由はきっとマリエッタの眼中に俺がいないからだろう。


 マリエッタは常にアレンの見ている。


 気に入らない。今からエッチするのは俺なのに、俺を見向きもしないのが許せない。



「ルカン君? どうしたの?」


「マリエッタ、絶対にお前を堕とす」


「え? んあっ♡」



 俺はその日、マリエッタを堕とした。








―――――――――――――――――――――

あとがき

ちょっとした小話


作者「一番非常識なことしてるルカンが一番まともというバグ」


ル「それを書いてるお前が元凶」



「主人公が狂ってる……」「お姉ちゃんとんでもキャラで草」「作者がだいたい悪い」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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