第3話 友人キャラ、主人公に見せつける
推しのクロエ改めクローディアとお付き合いをスタートした、その翌日。
「ルカン、随分と機嫌が良いわね。何か嬉しいことでもあったのかしら?」
「え、分かる?」
「そりゃあ、貴方の母親だもん」
俺は自宅で母さんと朝食を摂っていた。
父親はいない。数年前に借金を残して蒸発し、俺はこの村で母さんと二人で育った。
一つ言っておこう。母さんは美人だ。
俺は地味な黒髪で瞳の色は真っ赤だが、これは父親に似てしまった結果。
母さんは金髪碧眼の美女で、めちゃくちゃおっぱいがデカイ。
前世の記憶を思い出す前はちっとも気にしていなかったが、改めて見ると青少年の教育に良くない身体付きをしていると思う。
俺が母さんのエッロい身体をおかずに朝食を済ませた、ちょうどその時。
『おーい、ルカーン!!』
家の外からアレンの声がした。
どうやら俺と遊ぶためにわざわざ家までやってきたらしい。
「ごちそうさま!! 母さん、俺アレンと遊んでくるね!!」
「気を付けてね。村外れの森には――」
「分かってる分かってる、森には行かないよ」
俺が家から出ると、アレンが待っていた。
「おはよう、ルカン」
「おう、アレン。今日は何をする?」
「……遊びに来たのは僕の方だけど、病み上がりなのに大丈夫?」
「平気平気」
たしかに俺はエロゲーをこよなく愛する紳士だった記憶を思い出した。
しかし、同時にルカンでもある。
ルカンとしての精神はまだ十二歳なので、友達と遊びたい年頃に変わりはない。
まあ、少しでもエロの波動を感じたら紳士だった精神が出てくるみたいだが、今は紛れもないルカンである。
友人のアレンと遊べるなら遊びたいというのもまた俺の本音なのだ。
「……ルカン。ちょっと聞きたいことがあってさ」
「なんだ? 急に改まって」
「こっち来て」
俺はアレンに腕を引かれ、誰も住んでいない家屋の裏手に連れて行かれる。
え、何? カツアゲされる?
「ルカン。実は昨日、僕見ちゃったんだ」
「見たって、何を?」
「……ルカンが沢山のシスタークロエや女神様とエッチなことしてるの……」
「……」
み、見られてたあ!?
いやまあ、たしかにあの部屋はクローディアの魔法で大きくなってただけのもの。
別に隔離されているわけでもないし、扉はしっかり外に繋がっている。
水を汲みに行ったアレンが戻ってきて部屋を覗いたのだろう。
油断していた。
ど、どうしよう!? クロエが実は女神クローディアとか、どう言い訳しよう!?
「いや、あの、それは、その」
「まあ、そこは別にいいんだ」
「え!? い、いいのか!?」
言い訳を必死に考えようとした矢先、アレンはそれは別にいいと言った。
ど、どゆこと?
「僕は、シスタークロエのことが好きだったんだ」
「お、おう」
「でもシスタークロエがルカンとエッチなことしてて、その、なんていうか、下品なんだけど。興奮しちゃって」
「うん。……うん? 興奮、したのか?」
「うん」
え? ごめん、ちょっと意味が分からない。
「大好きだったシスタークロエが、ルカンに取られちゃったのはショックなんだ。でも、それ以上に目が離せなくて、胸が苦しくて、興奮しちゃって」
「……」
アレンは本来のシナリオだと、旅の冒険者がパーティーの女の子たちとハーレムエッチしてる場面を目撃して性に目覚めてしまう。
だったら、もし仮に。
もし仮にまだ目覚めていないアレンが好きだった初恋の女性を友人に奪われたら……。
それは目覚める切っ掛けになるのではないか。
あれ? もしかしなくても、俺やっちゃいけないことやっちゃった?
「家に帰って、ベッドで横になっても、ルカンとエッチなことしてるシスタークロエの姿が忘れられなくて……」
というか俺は何を聞かされているのだろうか。
性癖暴露? いやまあ、仲のいい男友達なら猥談くらいするだろうけどさ。
普通、初恋の女の子を奪った男にするか?
「それでね、思ったんだ」
「な、何を?」
「きっと僕は、好きな人が他の人とエッチなことしてることに興奮するんじゃないかって!!」
「お、おお、そうか」
やばい。
俺のせいでハーレム系主人公が『寝取られ性癖』に目覚めてしまった!?
「ま、待て待て、アレン。一旦落ち着こう」
「僕は落ち着いてるよ。でも忘れられないんだ。だから、だからね、ルカン」
「?」
アレンは俺の肩をガシッと掴み、顔をずいっと近づけてきた。
ちらっと下を見たら、アレンはズボンをパンパンに膨らませているではないか。
こ、こいつ、まじですかい!?
「お願いがあるんだ。その、僕が何に興奮してるのか確かめるために、もう一度だけシスタークロエがルカンとエッチしてるところが見たいんだ!!」
そのアレンの目はどこまでも真っ直ぐだった。
内容が内容じゃなかったら、きっと純粋な少年だと勘違いしたかもしれない。
俺はアレンに迫られて、断れず――
「なるほど、それで今日はアレンくんを連れてきたんですね」
「……はい」
「今日はよろしくお願いします、シスタークロエ!!」
夜。
俺はこっそり家を抜け出してクロエが待っている教会までやってきた。
朝までクロエとエッチするためだ。
しかし、今日はお邪魔虫とまでは言わないが、本来の予定になかった人物までいる。
アレンである。
「私は構いませんが……。ルカンは納得していないようですね」
「そりゃあ、クロエはもう俺の女だし」
エッチを見せつけること自体は何とも思わない。
いや、想像したら思ったより優越感があって興奮してしまった部分もある。
でももし、何かの弾みにクロエ、というかクローディアの好意がアレンの奴に向いてしまったら俺はもう立ち直れない。
だから絶対にアレンには見せたくないのだ。
「クロエのエロい身体も表情も、誰にも見せたくない。全部独り占めしたい。いくら親友のアレンでも嫌だ」
「あら……。ふふふ、ルカンくんったら。それならこうしましょう」
「んん?」
俺が首を傾げると、クロエは不意にアレンの額を人差し指でコツンと突いた。
何をしたんだ?
「女神の力を使ってちょっとした祝福を授けました。それではルカンくん」
「ちょ!?」
「今日も沢山、気持ちいいことしましょうね?」
俺が自分以外には見せたくないと言った矢先の出来事だった。
クロエはアレンがいるにも関わらず、服を脱いで裸になってしまった。
すると、アレンが「え!?」と声を漏らした。
「み、見えない!?」
「ん? どういうことだよ、アレン」
「な、なんか、変な光でシスタークロエの裸が見えないんだ!!」
「……え?」
話を聞いてみると、アレンはクロエの大事な部分に謎の光が差し込んで見えないらしい。
「もしかして、祝福の効果?」
「正解です、流石はルカンくん。アレンくんには今後、女の子のエッチな部分を見ることができなくなってもらいました。ついでに女の子に触ることもできなくしておいたので、ルカンくんの知らない場所で手を出される心配もありませんよ」
「え、何それ凄っ!? ……ん? 今後? ずっとなのか?」
「はい、ずーっとです。ルカンくんの不満を取り除いてあげるのも、恋人であり、妻の務めですから」
「う、うん。あ、ありがとう」
それはもう祝福ではなく呪いなのでは?
いやまあ、クロエの恥ずかしいところを全て独り占めできるなら文句はないが……。
アレンはいいのだろうか。
「はあ、はあ、な、なんだろう? 見えないことで妄想が捗るような、それでいて『お前には見る資格すらない』と言われているようで、堪らなく惨めな感じが――うっ」
アレンの方を見ると、ズボンをよりいっそうパンパンにしていた。
あ、大丈夫そうだ。
「あら、もしかしてまだ不満ですか?」
「い、いや、不満っていうか、上手く言えないんだけど、想像はできるわけじゃん? その、ね?」
「……ふむ。アレンくんの頭の中の想像であっても、私がルカンくん以外に恥ずかしい姿を見せているのは嫌、と」
言語化するの上手いな、クロエ。流石は女神といったところか。
ちょっと独占欲が強くて引かれるかな。
「ふふふ、ルカンくんったら♡ そんなに私のことを独り占めしたかったんですねぇ♡ ではこれならどうですか?」
クロエが指をパチンと鳴らす。
すると、その瞬間にアレンの身体は妖しい光に包まれてしまった。
え、今度は何!?
「その祝福の効果は――」
クロエから説明を受けた俺は、思わず絶句してしまった。
彼女がアレンに施した二つ目の祝福は、俺かクロエの許可無しで頂きに至れないという恐ろしいものだったのだ。
それを教えられた瞬間、俺の中で何かが疼いた。
本来はアレンの女になるはずだったクロエを奪い、そのクロエによってアレンは原作とは駆け離れた状態になっている……。
初めて知る感覚に首を傾げながら、俺はクロエとのエッチをアレンに見せつけるのであった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
ちょっとしたいい小話
作者「謎の光、お触り禁止、射◯禁止……。作者だったら発狂する」
ル「デバフが鬼畜すぎる」
「原作主人公がやばい」「クロエもやばい」「でも一番やばいのは作者」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます