第2話 友人キャラ、推しと付き合う




 俺は当たって砕けろの精神で告白した。



「ええと、ルカンくんは私のことが好きだったんですか?」


「っ、はい!! 大好きです!! 俺と結婚を前提に付き合ってください!!」


「……そう、そこまで……」



 普通なら十二歳の子供の告白を、二十歳のお姉さんが真に受けるはずもない。


 しかし、クロエは俺の告白を笑わなかった。


 それどころか頬に手を当てて考え込み、返事を迷っているようだった。


 まさかワンチャンあったりするか!?


 と、淡い期待を胸に抱きながらクロエの返事を待っていると、彼女は俺を真剣な眼差しで見つめながら問いかけてきた。



「私のどこを好きになってくれたのですか?」


「っ、そ、それは!!」



 俺は思わず動揺してしまう。


 その問いはゲームの主人公アレンがクロエに告白した時、彼女に問われるものだったからだ。

 もし、ここで主人公と同じ台詞を言ったらどうなるのだろうか。


 俺は少しでも告白成功の確率を上げるため、ゲームのアレンの告白をそのまま使わせてもらうことにした。



「全部です!! 優しいところも、面倒見のいいところも、めちゃくちゃ顔がいいところも、声が綺麗なところも、おっぱいが大きいところも、腰が細くてお尻が大きいことも、太ももがムチムチで脚が長いところも!! 全部全部大好きです!!」

 


 半分以上は容姿のことだが、ゲーム通りの台詞なので俺を非難しないでね。


 これを言ったのはアレンなのだ。


 俺も本心から思っていることだが、決して俺が悪いわけではない。


 果たして結果は――



「……そう、ね。そこまで熱心に好きって思いをぶつけられたら、断れませんね」


「な、なら!!」


「はい、お付き合いしてもいいですよ。ただし、一つだけ条件があります」


「じょ、条件、ですか?」


「私の秘密を知ってもらいたいんです。それを承知の上でまた私を好きと言ってくれるなら、この身も心も、魂ですら貴方に捧げましょう」



 俺は心の中でニヤリと笑った。


 この先の展開を、俺は知っているのだ。忘れるわけがない。



「――」



 クロエが呪文のようなものを唱える。


 すると、突如として目を覆いたくなるほど強い光がクロエを包み込んだ。


 ゲームの演出と全く同じだ。



「――我が名はクローディア。創造の女神である」



 創造の女神、その名はクローディア。


 アレンに勇者の力を与え、魔王を倒すよう命令する女神本人である。


 顔立ちはクロエと変わらない。


 一目見て大きく変わったと分かるのは、そのサイズ感だろう。


 クロエは170センチ程度と女性にしては少し高めの身長だった。

 しかし、対するクローディアは3メートル近くあるのではなかろうか。


 教会の天井が高くてよかったと思う。

 

 普通の民家だったら天井を突き破っていたかもしれない身長だ。


 しかも元々大きかったおっぱいが更に大きくなっていた。

 正体を隠しているクロエの時すら大玉スイカ並みだったおっぱいが、バランスボールくらいある。


 艶のある黒髪は純白となり、黄金の瞳はいっそう光り輝いている。


 身にまとっていたシスター服は露出度が高めながら神々しい衣へと変化し、屋内なのに後光が差していた。


 そう。


 主人公が生まれ育った始まりの村の教会のシスターの正体こそ、主人公に魔王を倒す力を与える女神だったのだ。


 クロエ改めクローディアは、いわゆる隠しヒロイン。

 初見の場合ではまず攻略できない特殊イベントヒロインである。


 その特殊イベントは、ゲームが始まるや否や、チュートリアルもクリアしないで教会にいるクロエに告白することで発生する。


 当たって砕ける覚悟だったが、これは本当にイケるのでは!?


 正体を現したクローディアが俺に問う。



「――汝、ルカンよ。我が女神と知って尚、我を欲するか?」



 この問いに対し、主人公以外の人は「女神様とお付き合いなんて滅相もない!!」となるらしい。


 そう答えると、クローディアは相手の記憶を消して正体を隠し、クロエとして断るのだ。


 きっと前世の記憶を取り戻す前だったら、俺もルカンとして恐れ多いと思って平伏していたかもしれない。


 でも!! 今の俺には関係ない!!


 目の前に推しがいて、推しと付き合えるチャンスが転がってるなら全力で拾う!!


 え? 推しに手は出すな、だって?


 悪いな。俺はお行儀のいい男じゃない。俺だって推しとエロいことがしたいのだ!!



「好きだ!! 俺と付き合ってくれ、クローディア!!」


「ふっ、ふふふ……。汝、ルカンの想いは確かに受け取った。では、我は今より汝の女。我は汝を愛し、汝のために尽くそう。我が夫、ルカンよ」



 ……やった。


 やった、やったぞ!! はは、本当に推しと付き合えるのか!?


 信じられない!!


 試しに自分の頬を引っ張ってみるが、結構な痛みがあった。

 ルカンに転生したのも、玉砕覚悟の告白が成功したのも夢ではない。


 と、俺が一人で感動していると……。



「さあ、ルカンよ。愛し合おうぞ」


「え?」


「何を驚いている。夫婦が愛し合うのは当然のこと。それとも汝は我を抱きたくないのか?」


「……ごくり。だ、抱きたい!!」 



 俺が激しく頷くと、クローディアは指をパチンと鳴らした。

 それと同時に部屋にあったものが全て消え、広くなり、中央に大きなベッドが出現する。


 空間そのものを操作し、どこでもベッドルームを作る魔法だ。


 ゲームでもクローディアが使っていた。



「はあ、はあ、クローディア……ッ!!」


「ふふふ、鼻息を荒くしてどうした? 我はもう汝のもの。好きなだけ堪能するがよい」



 俺は理性を失ってクローディアの大きな身体に抱き着いた。


 柔らかいおっぱいに顔を埋める。


 柔らかい。

 いや、柔らかいなんて安っぽい言葉で語り尽くせる柔らかさではない。


 水のようなぷるぷる感……。


 そして、鼻から入って脳をダイレクトに刺激する極上のメスの匂い。最高という言葉以外の表現が見つからない。


 クローディアは女神らしく微笑む。



「せっかくだ。汝にサービスしてやろう」



 クローディアがそう言って再び指をパチンと鳴らすと、すぐ近くにボンッと白い煙が立ち上った。


 何事かと思ってそちらを見ると、そこにはクローディアの仮の姿、シスター服を着たクロエの姿があった。


 それも一人や二人ではない。何十、何百というクロエがいたのだ。


 こ、これは!!


 『ブレイブクエスト』でも屈指のエロシーンと言われる『クローディア&分身クロエ✕無限ハーレム』じゃないか!!



「はあ、はあ、クローディア、クロエ……」


「我の仮の姿、クロエは何人でも生み出せる。そして、生み出したクロエはどれも穢れを知らぬ身体だ」



 ハッ!? 


 と、ということは、あの夢のようなプレイや幻のプレイまでできるのか!?


 心臓のバクバクが止まらない。


 緊張で鼻息が荒くなり、下半身の宝剣は馬鹿みたいに大きくなった。



「ふふ、緊張してるんですか?」


「大丈夫ですよ」


「私たちで沢山練習して、クローディアを気持ちよくしてあげてくださいね?」



 俺は無数のクロエたちを抱き、最後はクローディアと愛し合った。


 しかし、前世も含めて今回が初めてだった俺は余裕が無かったこともあり、彼が部屋を覗いていることに気付かないのであった……。













 ???視点




 僕は信じられないものを見ていた。


 水を汲んで親友のもとに届けようとしたら、部屋の中にはルカンとシスタークロエが二人きり。


 僕はシスタークロエが好きだ。


 いつも優しくて、笑顔が可愛くて、好きにならないわけがなかった。


 僕の初恋の人であるシスタークロエとルカンが二人きりという状況にモヤッとするが、それ以上は何も思わない。


 ……はずだった。


 ルカンがシスタークロエに告白したと思ったら、シスタークロエが女神様になった。


 僕は女神様に一目惚れしてしまった。


 顔立ちがシスタークロエと同じだからか、あるいはその神々しい雰囲気に惹かれたのかは分からない。


 それから部屋の中の様子が変わり、沢山のシスタークロエが現れて、代わる代わるルカンと裸で抱き合い始めた。


 僕はルカンとシスタークロエ、女神様が何をしているのか分かった。


 エッチだ。


 恋人同士がするエッチなことをルカンが無数のシスタークロエや女神様としている。

 大好きだったシスタークロエが、親友とエッチなことをしている。


 悔しい。羨ましい。妬ましい。


 親友のはずのルカンに対して真っ黒な感情が次々と湧いてくる。


 でも、それ以上に……。



(目が離せない――ッ!!)



 僕はいつの間にかズボンを膨らませていた。


 そして、無意識にそれに触れて一人惨めに寂しく慰める。


 これが僕の性の目覚めだった。







―――――――――――――――――――――

あとがき

ちょっとした小話


作者「分身ハーレムというシチュエーションに熱いものを感じる」


ル「そ・れ・な」



「女神とエッしたい」「目覚めちゃったか」「この作者と癖が一致して悔しい」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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