2話 楽しい監禁放任生活

異世界に来て5年が経った。

僕が転生したのはよく分からん貴族の補佐?を家業としている家だった。


親は非常に堅物のようだが、僕にはすごく放任的だ。現に今まで数えるほどしか会話をしたことがない。


あとなぜか僕のことを図書室に閉じ込めて外に出さないようにしている。

つまり放任されてはいるのだがそれは監禁された上でのことなのだ。これを僕は監禁放任主義と呼んでいる。恐ろしいね。


まあ本もあるし僕はインドアなので下手に外に出されるより全然良いのだが。


なので、親が仕えている貴族には会ったことがない。


貴族側は俺と同い年の女の子がいるそうで会わせたがっていたらしいのだが親は僕が失礼なことを言って首がとぶのを恐れたのか普通に監禁がバレるとやばいのか今になるまで会ったことはない。


ちなみに言葉はなぜか分かる。女神様が脳をなんかしてくれたのだろう。これのお陰で本が読めるので感謝感謝のハッピースマイルだ。


そんなことよりも一つ気になることがある。


二年前から僕の親は家の前に落ちていた女の赤ちゃんを拾って育てているらしくて、異世界の治安が気になるところだがそこじゃない。


僕との扱いに明らかに差があるのだ。


僕がこんな扱いを受けているからには義妹にも同じ事をするのかと思いきや、僕は部屋の外にすら出たことないのに義妹はしっかり外でも遊ばせている。

まるで僕の存在を世に隠しているようなのだ。


何か親の特大地雷でも踏んでしまったのだろうか。


そんな事を考えていると鍵を開ける音が聞こえて扉が開いた。


母だ。


「オト。ご飯ですわよ」


どうやらご飯のようだ。

「ありがとうございます。母様」

反応はない。

無視されている。


母親はご飯をのせたお盆をテーブルに置くと去っていった。

相変わらず冷たい。が、別にずっと冷たい訳ではなく拾ってきた娘に対してはデレまくってる。なんなんだよ。


そういえば僕は前世と名前が同じ名前なのだが、これには理由がある。

親は最初、僕の名前をタンポンにしようとしていたのだが僕が「ちょっと待ってください、オトがいいです」と言ったことで名前がオトになった。

もしかしたらこれが親に監禁されている原因かもしれない。まあやってしまった事は仕方ないのだが。


...さっき家族のことを話していた時、監禁されているはずの僕がなんでそんなことを知っているのか疑問に思わなかっただろうか。


これは図書室に監禁されている僕を可哀想と思った親が僕に自分たちの話をしている...訳ではない。

というかそんなこと思うなら監禁なんてしない。


僕が魔力を使って耳を強化し自分で外の様子を盗み聞きしているのだ。


この世界には魔力がある。魔力はすごい。魔法を使うのに使ったり、身体を強化したり、まあ色々使える。


ちなみに女神さまがくれたスキルは魔力関係なしに発動できる。

もともとそういう能力を身体が持っていて、それに魔力の使用は関係ないというふうに僕は解釈している。


現に僕はピンク女神様に例のスキルを貰ったお陰で羽が生えているのだが、それを強化することも可能だ。これはスキルが身体の元々の能力として備わっていることの裏付けになるのではなかろうか。


ちなみに一回強化した状態で羽ばたいてみたら本の埃が舞まくって地獄を見たのは今でも忘れられない。異世界に来て何が1番辛かったかと聞かれたら絶対にこれを答える。それくらい地獄だった。


___________________


この家の図書室には魔導書がたくさんある。僕はいつもこれらを読んで生きている。


魔導書を読むと魔法が使えるようになる。使えると言っても最初は微々たるもので使えば使うほど上達していく。ある程度の応用も可能で魔法同士を組み合わせることも出来る。原理は知らん。


魔法には火とか水とか色々系統がある。

無論氷属性もあるわけでエターナルフォースブリザードもやろうと思えば多分できる。が、

単純に難しい魔法使うにはそれだけ魔法の練度を高めなければいけないため、僕にはまだ使えない。

早くてもあと5年はかかるだろう。魔法って面倒臭いね。


それと図書室なんかでは魔法の練習はできないので床に穴を掘ってそこで訓練している。


一応本棚を動かさないと訓練場への入り口は出てこないのでよっぽどのことがない限り見つかることはないだろう。


訓練場では風とか氷の魔法の練習をしている。

氷魔法は寒いので春と夏以外はやっていないが。


まあ今の所こんな感じである。

可もなく不可もなく僕は異世界(というか魔法)を楽しんでいる。


そして明日、異世界は日本で言う元旦なのだ。

つまり今日は大晦日。一年で何をやったか振り返る重要な日なのだ。

異世界に大晦日の文化は無いが、記念に今年練習を頑張った魔法をぶっ放してみよう。


水魔法の応用で作ったウォーターボール

今僕がだせる最大の大きさだ

これを家族への恨みをこめて最高速度で訓練場の的にぶつけよう。


それ。


あ。方向ミスった。

ウォーターボールは家がある真上の方へ行ってしまった。どんなミスだよ。


その後、急いで風魔法で速度と向きを調節するもあんまし意味はなく、家の床にぶつかって一部は崩壊した。


親に締め殺される可能性を予期して溜め息を着いたオトだった。

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