#93 ハロウィンパーティー、ケモロリ巨乳吸血鬼っ娘

 翌日。


 朝起きた僕は、みまちゃんの支度を手伝ってから、黒い方に変身して服を消しました。

 実はこの衣服、消したり出したりができるみたいで、かなり便利なんです。

 下着を着けて、お姉ちゃんに貰ったゴスロリの服を身に付ける。


「んー……うん! ばっちり、かな? でもこれ……なんだろう、この……厨二病っぽい感じ……」


 黒髪に赤いメッシュが入ってて、目は紅くて、ゴスロリで……あれ? なんだろう、本当に厨二病っぽくない……?

 ……これ、イタイって思われないかな!? 大丈夫だよね!?


「うぅ~~……どうなんだろう……?」


 とりあえず、お姉ちゃんに感想を訊けばいいかな……?

 うん、それがいいよね。

 というわけで、お部屋を出てリビングへ。


「お、お姉ちゃん、これ、似合うかな……?」

「はいはい、どしたのー……って、ごふぁぁぁぁっっっ!?」

「お姉ちゃん!?」


 リビングに入ってお姉ちゃんに声をかけると、僕を見たお姉ちゃんが突然血を吐いて倒れました。


「わぁ……おかーさん、かわいー」


 と、すぐ傍にいたみまちゃんがとてとてと近づいてきて、きゅっと抱き着きながら可愛いと言ってくれました。


「そ、そうかな?」

「うん、かわいーよ?」

「ふふ、ありがとう、みまちゃん」

「えへぇ~」


 お礼を言いながら頭を撫でると、いつものように嬉しそうに目を細めました。

 こういうところ、本当に小動物っぽくて可愛いよね。

 実際狐さんの姿になれるから間違ってないとは思うけど。


「って、お姉ちゃんのことだよ! お姉ちゃん、大丈夫!?」

「ごふっ……へ、へへっ……やはり、し、椎菜ちゃんは、最高、だぜ……あと、ケモっ娘ゴスロリ、最高です……ガクッ」

「お姉ちゃん!? あの、この後お仕事なんだよね?! 起きて! 起きてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 この後、何とかしてお姉ちゃんを起こして、なぜか一緒に吐血して倒れていたお母さんとお父さんを介抱してから、僕はみまちゃんと一緒にお家を出ました。

 朝から大変だよぉ……。



 みまちゃんと一緒に登校して、小学校前で別れてから学園へ。

 ちょこちょこ僕と同じように仮装している人が目に入る。

 狼男さんとか、死神さんみたいな人とか、あとはカボチャの被り物をした人やミイラみたいな人……あれって全身ぐるぐる巻きにされてるけど、動きにくくないのかな?


 それにしても……今日もやっぱり視線が……やっぱり変? 変かな!?

 相変わらず耳と尻尾が隠せなかったので、尻尾穴を空けたし……。

 で、でも、今は神薙みたまじゃなくて、神薙みたまオルタだから……!

 だから騒ぎにはならないはず!


 ……それはそれとして、やっぱり視線がいっぱい……気になる。

 厨二病とか思われちゃってるかな!? だとしたら嫌だなぁ……。

 でも、本当に特別な力、みたいなものはあるわけだし……う、うーん。


「はぁ……ちょっと憂鬱になって来たぁ……」


 厨二病って言われることだけは避けたいけど……でも、これはコスプレ……コスプレだからセーフ……!

 うん、最悪厨二病をコンセプトにしたものって言い張れば大丈夫……。

 なんてことを考えてるうちに学園に到着。


 学園の中では、楽しそうに写真を撮ったり、お互いの仮装を褒め合ったりする人がたくさんいました。

 僕も上履きに履き替えて、クラスの前へ。

 なんだか入るのに勇気がいる……。


 で、でも、大丈夫、大丈夫……よしっ!


「お、おはよーっ!」


 ガラッ、と教室のドアを開けて中に入ると……。


「「「( ゚д゚)」」」


 なぜか、その、ぽかーんとされました。

 あ、あれ? どうしたんだろう……?


「あ、あの……?」

「「「ケモっ娘ゴスロリキターーーーーーーー!」」」

「ふあぁぁ!?」


 突然叫んだかと思うと、女の子が集まって来てもみくちゃにされました。


「わぷっ」

「待って待って!? コスプレしてこないかなーって思ったけど、なにこれ可愛い! 可愛すぎぃ!」

「やばっ! 耳と尻尾が付いてるゴスロリっ娘とか何その属性過多!? 可愛いいいぃぃぃ!」

「ってか、メッシュと紅い目も最高過ぎじゃん!? ふわぁぁ~~~~!」

「ひやぁぁっ!」


 あぅぅっ、こ、こんなに近づかれるとは、恥ずかしいよぉ~~~~っ!

 というか、その、す、すごく甘い匂いがっ……あと、ちょっと露出がある人もいるから、その、は、肌が直接……。


「すげぇなー。見られた瞬間襲われてるよ、桜木の奴」

「あれはしゃーない」

「ゴスロリケモっ娘とか、強すぎだろ」

「つーか、うちのクラスの女子、全員桜木をああするのが好きすぎじゃね?」

「まあ、可愛いし……」

「それはそう」

「ってか、あれは可愛すぎて無理。鼻血出るわ」

「お前……気持ちはわかるけど」


 あ、あのっ、何をお話しているのかは分からないけど、男子のみんなは助けてくれてもいいと思うんです!

 と、というか、本当に恥ずかしいよぉっ!


「おっはよー!」

「おはよう……って、なんだ!?」


 ハッ! こ、この声は麗奈ちゃんと柊君!?


「あっ! 椎菜ちゃんがもみくちゃに!?」

「なるほど……概ね、可愛すぎた椎菜をクラスの女子がもみくちゃにしてるってところだろう」

「さすが高宮君!」

「なんかもう、高宮のアレ、もうなんかの能力じゃね?」

「察し力高スギィ!」


 本当にね!


「あー、とりあえず、椎菜の顔が面白いくらいに100面相してそうなんで、離してやってくれると助かる」

「あっと、ごめんね! 椎菜ちゃん!」

「可愛すぎてつい」

「う、ううん、恥ずかしかったけど、まあ、うん……」


 はふぅ~~~……柊君のおかげで助かったぁ……。


「へぇ~、椎菜ちゃんそれで来たんだね! でも、それってカラコン?」

「あ、え、えーっと……自前です」

「え、自前……? でも椎菜ちゃん、いつもなら、銀髪蒼眼じゃなかった?」

「確かにそうだな……どうしたんだ? それ」

「まあ、その……昨日からこの状態になれまして……」

「なるほどな。まあ、聞かないでおくよ」

「あたしもー」


 と、麗奈ちゃんに目のことを聞かれたので、変身先であることを伝えると、二人はすぐに納得したようです。

 そんな僕たち三人の会話を聞いていたクラスメートのみんなはどういうことだろう、と首をかしげていました。


「ねぇ、麗奈ちー、銀髪碧眼って……?」

「椎菜さんって黒髪黒目よね? もしかして、椎菜さんってコスプレ趣味が?」

「あー、それなんだけどねぇ……ねぇ、椎菜ちゃん。本当に言うんだよね?」

「ま、まあ……その、VTuberのことも知られちゃってるし……え、えーっとね、その……この姿……というか、髪色と目、あと耳と尻尾なんだけど……これ、本物なんです」

「「「……はい?」」」


 僕の暴露に、クラスのみんなは再びぽかーんとした表情になりました。


「まあ、そう言う反応になるよなぁ……」

「わかる。あたしも初めて見た時は茫然としたし!」


 そんな様子を見た柊君と麗奈ちゃんの二人は苦笑い交じりにそう呟いていました。

 なかなか信じられないよね。


「え、えーっと、やっぱり信じるのは難しいよね……じゃあ、ちょっと見せるけど……『転神』」


 と、僕は合言葉を唱えて、髪色などを銀髪碧眼に変更する。

 この時、巫女服姿にならないように、変身した直後に消すことでゴスロリだけに。


「え、えーっと、実はこんな感じでその、変身が出来まして……」

「「「( ゚д゚)」」」

「だよねぇ。あ、ちなみにこの状態の椎菜ちゃんは、こう、魔法が使えます」

「「「( ゚д゚)」」」

「朝霧、余計な爆弾を投下してどうする……。全員の顔が顔文字みたいになってるぞ」

「いやぁ、どうせならまとめての方がいいかなって!」

「良くないだろう……」

「……あ、あのー、椎菜ちー」

「あ、うん、どうしたの? 美咲ちゃん」

「今、魔法って聞こえたんだけど……本当に?」

「あ、あははは……実はその、こんな感じでして……」


 そう言いながら、僕は手の平の上に野球ボール程の水球を出して、みんなに見せる。


「「「!!!???」」」

「あとはこんな風に動かしたり……」


 出した水球をみんなの前に動かしたりぐるぐると回転させたり、最後は手の平に戻してぎゅっと握って消して終わり。


「こ、こんな感じです……」


 どこかぎこちない笑みを浮かべながらそう言うと……


「「「す、すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」」」


 みんなが一斉のそう言って来て、思わずびくっとしました。


「ふひゃぁ!?」

「え、なに今の!? ま、魔法少女! 魔法少女じゃん!」

「マジかよ! あんなファンタジーがリアルにあったのか!」

「っていうか、椎菜ちゃんファンタジー世界の住人過ぎじゃない……?」

「TSしてて、変身能力付きの魔法少女……あれ? 最高なのでは?」

「たしかに」

「つまり……椎菜ちゃんは可愛くて最強ということかッ……!」

「どういうこと!?」

「「「そういうこと!」」」

「そ、そですか……」


 色々とこう、言いたいことはあるけど……なんだろうね、すんなり信じてもらえた上に、変な目で見られなくて安堵しました……。

 まあでも、色々と知ってもらえたところで、黒髪の方に戻して……。


「「「おー……!」」」

「え、えっと?」

「いやぁ、目の前でぽんぽんと服が変わるのが面白いなぁって。というかそれ、どういう仕組みなの?」

「あ、あははは、そこは企業秘密で……」


 神様関連のことだけは言わないようにしているので……。

 らいばーほーむの人たちには言ってるけど、さすがにクラスのみんなにそこまでのことは……。


「いやー、ハロウィンパーティーの日に、とんでもないことを教えた貰っちゃったなー」

「そうね。でもまあ、可愛いからヨシ。次のネタに……」

「瑠璃ちゃん、なんか今変な単語が聴こえなかった?」

「気のせいよ」

「リアル魔法少女は強すぎる……」

「マジで桜木ってこう、可愛いを体現するために生まれてきた存在なんじゃね? って思えて来たわ」

「え? そうじゃないの?」

「椎菜ちゃんは天使で魔法少女。はっきりわかんだね」


 ……とりあえず、好意的に見られてるってことでいい、のかな?

 うん、多分いいということで……。


「ちなみに、椎菜ちゃんのコンセプトって何?」

「え、えーっと……とりあえず、ゴスロリを着ただけなので……」

「まあ、ケモっ娘の時点で仮装は完璧だよね、これ」

「「「それな」」」

「そうだといいなぁ……」

「あ、ねね、椎菜ちゃん」


 少なくとも仮装だと思われてるようで何よりと思っていると、麗奈ちゃんがちょんちょんと肩を突いて来たので、なんだろうと思って麗奈ちゃんの所へ。


「えっとね……ごにょごにょ」

「……あ、うん、それを言えばいいの? でも、普通だよ? ……あ、可愛く? えーっと、うん、じゃあ……」


 麗奈ちゃんに耳打ちされたことを実践するために、みんなの前の所に行って軽く前かがみになって上目遣いにして……。


「と、トリックオアトリートっ! お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃう……よ?」


 そう言いました。

 ……なんだろう、ちょっと恥ずかしい……顔が熱いよぉ……。

 というか、高校二年生がこれをやるのって……ちょっとその、イタイような……?


「「「ごぶはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」」」


 って、なんで吐血!?


「ふわぁああぁぁぁ!? だ、大丈夫!? え、どうしたの!?」

「……あ、あかん……それはあかん……上目遣い、前かがみ、からの、トリックオアトリートは、あかん……ぐふっ」

「ごふっ……や、やはり、椎菜ちゃんは、か、核兵器だった、か……あぁっ、これで死ねるなら本望……あ、お菓子、上げるね……あとで……」

「へ、へへっ……魔法少女、は最高、だぜ……がく」

「俺、このクラスでよかった……可愛いで死ぬなら、本望オブ、本望……だぜ……ごぶっ」「すごい血だよ!? 大丈夫!? ねぇ、大丈夫なの!?」

「これは酷い……」

「……これじゃあ、椎菜のコンセプトは吸血鬼だな」

「あ、あははは……あたしもちょっと鼻血が……」

「おーし、お前ら席に着け……って、何事だ!? なぜ高宮と朝霧、桜木以外の奴らが吐血と鼻血を出しながら血の海に沈んでるんだ!?」


 どうしようと思っていたら、先生が入って来て教室内の惨状を見てびっくりしていました。


「あ、あの、先生、これ、どうすれば……」

「……あっ、なるほど、桜木が原因か……お前、吸血鬼かよ……」

「違いますよ!?」

「だが、どう見てもお前が何かやらかして、こうなったんだろう? というか、お前くらいだろう、一瞬で血の海を作れる奴なんて」

「はぅっ!」

「まあ、すぐに復活するだろうし……お前らー、起きたらちゃんとその血は拭いておけよー」

「「「は、はーい……」」」

「……先生も大概だと思うんだが」

「わかるよ、高宮君。田﨑先生、いろんな意味ですごいよね……」

「僕、吸血鬼じゃないもん……」


 この後、十分くらいでみんなが復活して、十分ほどで教室は綺麗になりました。


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 話が進むにつれて、椎菜の属性が過多になっていく……すごいなぁー(遠い目)。

 実際、黒髪赤メッシュ、紅目、ケモっ娘、ゴスロリ、巨乳、魔法少女……やっぱり属性過多では? まあ、ここに母性とか母親とか、色々はいるんですが読者さん。

 尚、椎菜はすっかり失念しておりますが……この椎菜、普通の服はどうしたんでしょうね!

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